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文献詳細

雑誌文献

生体の科学73巻6号

2022年12月発行

文献概要

特集 新組織学シリーズⅢ:血管とリンパ管 Ⅲ.血管・リンパ管と病態

リンパ管機能異常とアテローム性動脈硬化症

著者: 宮崎拓郎1

所属機関: 1昭和大学医学部生化学講座

ページ範囲:P.575 - P.579

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 リンパ管は体液バランスの調節,免疫細胞の交通ならびに食物から摂取した脂質の運搬に重要な役割を担う。近年,脂質異常症の存在下でリンパ管機能が低下し,これが冠動脈や主要な動脈において動脈硬化症の発症・進展に寄与するとの報告が相次いでいる。実際,マウスにおける血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor;VEGF)-CおよびVEGF-Dをはじめとするリンパ管新生関連因子の欠損やChy変異に伴うリンパ管機能不全は,血中のリポタンパク質コレステロールの組成に影響を及ぼし,脂質異常症を増悪化する。また,動脈硬化病変外膜には微小リンパ管が存在し(図1),これが病変内部のコレステロールの引き抜きやリンパ球の離脱に関わっている。

 一方,脂質異常症の改善によりリンパ機能も回復することが報告されており,両者は双方向の事象であることが示唆される。このように次々と新たな発見がなされているが,リンパ管異常と動脈硬化症のどちらが引き金になるか,脂質異常症によりリンパ管内皮細胞にいかなる機能的障害が引き起こされるか,など明確になっていない学術的な問いも多い。本稿では,特に高コレステロール血症により誘発されるリンパ管障害とアテローム動脈硬化症の連関を考察すると共に,本トピックに関して今後どのような検討がなされるべきか最新の知見をもとに議論したい。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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