文献詳細
特集 シナプス
Ⅱ.シナプス伝達
文献概要
大脳皮質は6層構造をしており,それぞれの層にあるニューロンは層内,層間,あるいは他の領域にある特定のニューロンと選択的にシナプス結合を形成している。加えて,細胞サブタイプやニューロンの機能特性に依存したシナプス結合特異性がみられる。つまり,シナプス結合は周辺のニューロンとランダムに形成されるのではなく,特定のニューロンと適切な強度でつくられる。このような特異的なシナプス結合による神経回路を基盤として,大脳皮質は機能する1,2)。機能的な神経回路は,胎生期から生後間もない時期に遺伝的プログラムにより大まかに形成され,その後,経験や学習に依存して柔軟に再構築される。その過程を経て,生まれ育った環境に適した機能が獲得される。脳機能の発達メカニズムを理解するうえで,遺伝的あるいは経験依存的に形成・調整されるシナプス結合を明らかにすることは重要である。シナプス・神経回路の機能的な解析には,大脳皮質から厚さ300μm程度のスライス標本を作製し,酸素を飽和させた人工脳脊髄液で灌流することにより,細胞の生理活性を保ったまま生体内に近い条件下で電気生理学的記録を行う手法がよく用いられている。本稿では,大脳皮質の特異的なシナプス結合の発達について,齧歯類大脳皮質のスライス標本を用いた筆者らの研究を中心に紹介する。
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