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文献詳細

雑誌文献

生体の科学74巻2号

2023年04月発行

文献概要

特集 未病の科学 Ⅲ.未病研究の将来に向けて

包括的未病データベースの基盤構築支援

著者: 込山悠介1 林正治1 山地一禎1

所属機関: 1国立情報学研究所オープンサイエンス基盤研究センター

ページ範囲:P.163 - P.169

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Ⅰ.背景

 近年,オープンサイエンスという考え方が研究手法の転換点となりつつあり,世界規模で普及し始めている1)。オープンサイエンスは,研究成果を可能な範囲で研究コミュニティに対して公開することで,研究分野全体の加速を図る考え方である2)。近年では,ジャーナル投稿時には機関リポジトリや専門分野のデータベースに実験データを登録し,その登録番号やIDを論文に付記し実験再現性を保証することが,論文の投稿規程により必須とされている。国内では内閣府から資金配分機関を通じて,研究者に先進的な研究データ管理・利活用とそのメタデータのリストの提出が求められている3)。共通メタデータの提出によるデータ管理・利活用は,2022年現在はムーンショット型研究開発制度の事業に対して先行的に義務化されているが,今後は,他の研究費助成事業にも拡大されていく見込みである4)。研究のプロジェクトマネージャー(研究主宰者を指す)は,データ管理・利活用のための情報基盤を準備し,研究プロジェクトを管理する必要がある5)。研究プロジェクトや機関ごとに研究データ基盤を整備すると,日本全体での研究データの集約が困難になるばかりではなく,研究データ基盤システムへの予算や人的コストの二重投資となるため避けるべきである。

 オープンサイエンス基盤研究センター(Research Center for Open Science and Data Platform;RCOS)は,オープンサイエンスや研究データ基盤に関する日本の学術機関での課題解決のために,2017年に国立情報学研究所(National Institute of Informatics;NII)内に立ち上げられた。ムーンショット型研究開発制度・目標2(以下,MS目標2)の合原プロジェクト(以下,AMS)において,筆者らは「数理的連携研究,データベース構築およびELSI支援体制構築」班に属しており,「MS目標2の他のプロジェクトとの数理的連携研究および包括的データベース構築」が大目標となっている。そのなかで,山地グループは包括的未病データベース(以下,未病DB)構築を行う藤原グループに対し,構築を支援するための研究データ基盤を提供し,また未病分野固有の数理的手法の研究開発を普及するための計算機環境構築の支援を行っている。複数拠点間でのデータ共有を行いながら分野融合的な未病の時系列データを収集し,目標2全体の未病研究を加速させることを目指す。MS目標2に向けた未病DBの構想と研究分担について図1に示す。

参考文献

1)UNESCO:UNESCO Recommendation on Open Science, 2021. https://en.unesco.org/science-sustainable-future/open-science/recommendation
2)日本学術会議オープンサイエンスの深化と推進に関する検討委員会:オープンサイエンスの深化と推進に向けて 令和2年(2020年)5月28日.https://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-24-t291-1.pdf
3)内閣府統合イノベーション戦略推進会議:公的資金による研究データの管理・利活用に関する基本的な考え方,2021.https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/ kokusaiopen/sanko1.pdf
4)関係府省申し合わせ:研究データの管理・利活用に関する取組状況の評価体系への導入について,26-29,2022.https://www8.cao.go.jp/cstp/kenkyudata_hyouka.pdf
5)内閣府:研究DX—科学技術・イノベーション—https://www8.cao.go.jp/cstp/kenkyudx.html
6)込山悠介,林 正治,加藤文彦ほか:学術機関に向けた研究データの管理と共有のための共通基盤の開発.vol. 2019-SPT-35, pp1-7, 2019
7)Komiyama Y, Yamaji K:Nationwide Research Data Management Service of Japan in the Open Science Era. in 2017 6th IIAI International Congress on Advanced Applied Informatics(IIAI-AAI), pp129-133(IEEE, 2017), doi:10.1109/IIAI-AAI.2017.144
8)RCOS. GitHub - RCOSDP/RDM-osf.io:Facilitating Open Science. https://github.com/RCOSDP/RDM-osf.io
9)Randles BM, Pasquetto IV, Golshan MS, Borgman CL:Using the Jupyter Notebook as a Tool for Open Science:An Empirical Study. Proceedings of the ACM/IEEE Joint Conference on Digital Libraries, 2017. doi:10.1109/JCDL.2017.7991618.
. 27:167-172, 2012
11)Suzumura T, Sugiki A, Takizawa H et al:mdx:A Cloud Platform for Supporting Data Science and Cross-Disciplinary Research Collaborations. 2022 IEEE Intl Conf on Dependable, Autonomic and Secure Computing, Intl Conf on Pervasive Intelligence and Computing, Intl Conf on Cloud and Big Data Computing, Intl Conf on Cyber Science and Technology Congress(DASC/PiCom/CBDCom/CyberSciTech), pp1-7, 2022. doi:10.1109/DASC/PICOM/CBDCOM/CY55231.2022.9927975
12)Yamaji K:WEKO:A New Repository System as a Function of Content Management System, 2009
. 103:9-15, 2016
.2:32-46, 2021
15)Caffaro J, Kaplun S:Invenio:A Modern Digital Library for Grey Literature, 2010
16)RCOS. GitHub - RCOSDP/weko:Weko3 is a repository software based on inveno3. https://github.com/RCOSDP/weko
. 38:4330-4336, 2022
18)AIHARA MOONSHOT PROJECT:AIHARA MOONSHOT PROJECT -DNB-Tool. https://www.sat.t.u-tokyo.ac.jp/moonshot/software/dnb-tool.html
19)Koranne S:Hierarchical Data Format 5:HDF5. Handbook of Open Source Tools, pp191-200. Springer, New York, 2011. doi:10.1007/978-1-4419-7719-9_10
20)Folk M, Heber G, Koziol Q et al:An overview of the HDF5 technology suite and its applications. ACM International Conference Proceeding Series, pp36-47, 2011. doi:10.1145/1966895.1966900
. 110:26-33, 2016
. 21:1224-1230, 2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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