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特集 クロマチンによる転写制御機構の最前線
特集「クロマチンによる転写制御機構の最前線」によせて
著者: 木村宏1
所属機関: 1東京工業大学科学技術創成研究院細胞制御工学研究センター
ページ範囲:P.192 - P.192
文献購入ページに移動 生物個体を構成する細胞はほぼ同一の遺伝情報(DNA配列)を持っているにもかかわらず,細胞の種類によって性質は異なる。これは,細胞種によって発現する遺伝子が異なるからであり,遺伝子発現制御の解明は発生や分化のメカニズムの理解のみならず,神経活動や免疫応答などの高次生命現象の理解に必須である。そのため,遺伝子発現の出発点である転写の制御機構の解明は生命科学の中心とも言えるものであり,多くの研究が行われてきた。生化学や遺伝学により転写因子の同定と転写制御に働く遺伝子の同定が主流だった時代から,分子生物学による遺伝子クローニングと機能解析を経て,次世代シークエンサーを用いたゲノム科学による網羅的解析と生細胞イメージングなどの時空間動態解析が主流になってきた。また,分子レベルでの理解やシミュレーションや理論研究も展開されている。
真核生物の転写の研究は,1980年代に開発された細胞核抽出液を用いたin vitro 再構成系により大きく進展し,基本転写因子や遺伝子特異的な転写因子が多く同定された。また,レポーターアッセイにより細胞内でプロモーターとして働くDNA領域も同定され,転写因子の結合配列の重要性が明らかにされた。ただし,in vitro 再構成系では鋳型として裸のDNAが用いられており,また,一過性のトランスフェクションでは必ずしも内在性の遺伝子と同じクロマチン構造をとるとは限らないことが問題であり,細胞内の転写制御の理解にはまだ遠い状態であった。
真核生物の転写の研究は,1980年代に開発された細胞核抽出液を用いた
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