文献詳細
特集 クロマチンによる転写制御機構の最前線
Ⅳ.転写制御と生命現象
文献概要
細胞機能の獲得・維持に遺伝子発現の調節は欠かせない。受精直後に形成される受精卵は,たった1つの細胞から完全な個体を形成する能力である“全能性”を持つ例外的な細胞であるが,この受精卵の細胞特性はどのような遺伝子発現により支えられているのだろうか。これは,全能性の分子基盤とは何か? という疑問に直結する生物学的に重要な問いであり,“多能性”獲得の必要十分条件が明らかになった現在では,この全能性に関する問いに挑戦する研究が世界的な潮流となりつつある。
アプローチのしかたは様々であるが,多能性幹細胞などの培養細胞を材料として,どのような操作を施せば受精卵特異的に発現する遺伝子が活性化されるかを探索するといったin vitro の実験をベースとする方法もあれば,in vivo の受精卵を用いて受精卵そのものの特性を根源的に解明し,得られた知見を基に全能性の分子基盤に迫るという方法もある。本稿では,このような研究の例を取り上げつつ受精卵・初期発生における遺伝子発現・転写制御について述べる。
アプローチのしかたは様々であるが,多能性幹細胞などの培養細胞を材料として,どのような操作を施せば受精卵特異的に発現する遺伝子が活性化されるかを探索するといった
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掲載誌情報