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多指症を防ぐモルフォゲン濃度勾配の新しい形成機構 フリーアクセス
著者: 田中庸介1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科分子細胞生物学専攻細胞構築学分野
ページ範囲:P.376 - P.381
ソニック・ヘッジホッグ(Shh)は最も著名なモルフォゲンの一つである。神経管では,腹側の脊索ならびに神経管の底板から産生され,背側に向けて濃度勾配を形成する。実際,Shhシグナルが減弱する変異マウスでは神経管が背側化する1)。異なったShh濃度の培地で培養した神経前駆細胞は,それぞれの濃度に従い,異なった背腹軸分化マーカーを発現する2)。すなわち,組織はShh濃度の減衰の様子から自らの座標を知り,発生運命を決定すると考えられる。体肢芽においては,その後部にShhのmRNAを特異的に発現するオーガナイザー領域があり,極性化活性域(ZPA)と呼ばれている(図1)。体肢芽の前部に異所的にShhを発現させたり,上流の遺伝子変異によってそれを異所的に発現したりすると,手指の発生に擾乱が生じる3,4)。Shhシグナリングの下流因子であるPtch1やGli1は体肢芽の後部に強く発現し,その抑制因子のGli3はこれと拮抗する勾配を示す。
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