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雑誌目次

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生体の科学74巻6号

2023年12月発行

雑誌目次

特集 新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨

特集「新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨」によせて

著者: 高柳広

ページ範囲:P.514 - P.514

 骨・軟骨は,身体を支え運動を可能とする運動器の一部として考えられてきた。しかし,造血幹細胞をはじめとする免疫細胞やその前駆細胞を擁する免疫系の一部でもある。これを背景に,骨と免疫系の相互作用を研究する骨免疫学と呼ばれる領域が発展した。更に,カルシウムやリンの貯蔵庫であることから内分泌系の制御を受けると同時に,他臓器を制御する因子を産生することで,脊椎動物特有の生体系に欠かせない内分泌器官の役割を果たすことが注目を集めてきた。骨・軟骨が産生する制御因子はオステオカイン,骨を中心とした生体制御ネットワークは,オステオネットワークと呼ばれ,医生物学の新たなパラダイムを提供してきた。また,運動器は,骨・軟骨だけでなくそれらを動かす筋・腱・脳・神経まで含めた運動器系(ロコモーターシステム)全体として把握する必要があると考えられるようになってきている。

 本特集では,骨・軟骨の組織学・解剖学といった基本的な情報から,骨細胞・破骨細胞・骨芽細胞・軟骨細胞などの骨格系構成細胞の分化や機能,他の生体系との相互作用,疾患との関連まで,骨・軟骨の最先端の研究を実践する先生方に執筆をいただき,最新の骨・軟骨代謝学を俯瞰できるような構成となっている。マウス遺伝学,ゲノムワイド解析,オミクス解析,シングルセル解析,イメージング技術の発展はこの領域の発展を支えており,本特集でも最新の技術的発展を取り入れた成果について紹介いただいた。

Ⅰ.骨・軟骨組織の構造と細胞分化・機能

骨・軟骨組織の構造

著者: 長谷川智香 ,   本郷裕美 ,   石砚 ,   網塚憲生

ページ範囲:P.515 - P.519

 骨組織と軟骨組織は,共に支持組織に分類され骨格系を成している。骨組織は,リン酸カルシウム結晶およびⅠ型コラーゲンを主成分とする骨基質と,骨芽細胞や破骨細胞,骨細胞などの細胞群,血管,神経から構成され,全身を支える支持組織として機能するほか,運動機能や造血,ミネラル代謝調節など様々な役割を担う。一方,軟骨組織は基質内に血管や神経を有さず,プロテオグリカンおよびⅡ型コラーゲンや弾性線維などの線維成分を主体とする軟骨基質と軟骨細胞から成る。軟骨組織の大部分は,軟骨基質の石灰化に続き,骨組織へと置換されていく。本稿では,骨および軟骨組織の肉眼的・組織学的構造を中心に述べる。

軟骨細胞の分化制御機構と関節軟骨損傷の再生治療

著者: 妻木範行

ページ範囲:P.520 - P.525

 軟骨には成長軟骨と関節軟骨があり,それぞれ骨格の成長と滑らかな関節運動を担う。軟骨細胞は発生過程において中胚葉の未分化間葉系細胞に由来し,複数のステップから成る分化過程をたどる。PTHrP-HDAC4-MEF2C経路は軟骨細胞分化を制御するメジャーな経路の一つである。この経路において,SIK3はHDAC4の細胞局在を制御して軟骨細胞肥大化を促進する。そして,生後に二次骨化中心が出現すると共に関節軟骨と成長軟骨が形成される。

 関節軟骨は損傷を受けると治癒せず,再生治療の対象となっており,自家軟骨細胞移植が実用化されている。また,人工多能性幹細胞(iPS細胞)から分化誘導した軟骨組織による再生治療の研究開発が進行している。発生過程の軟骨分化機構の知見は,iPS細胞から軟骨を分化誘導する研究に役立つ。また,損傷部に移植する軟骨を十分に供給するため,同種移植の有効性が研究されている。

骨芽細胞・骨細胞

著者: 小守壽文

ページ範囲:P.526 - P.530

 骨芽細胞は,間葉系幹細胞から骨芽細胞系列へのコミットメント,前骨芽細胞の増殖,未熟骨芽細胞への分化と骨基質タンパク質の産生,そして,それが最大化される骨芽細胞の成熟へと,分化・増殖・成熟過程を経ながら骨形成をつかさどる。成熟した骨芽細胞は多くの突起を持ち,コラーゲンの走行が均一な層板骨を形成する。その後,骨基質タンパク質産性能が低下し,骨基質内に取り込まれ,骨細胞となる。骨細胞は多くの突起と骨細管によって,骨細胞ネットワークを形成し,メカニカルストレスの感知・応答,骨芽細胞・破骨細胞の制御を行う。

破骨細胞の分化と機能

著者: 宇田川信之 ,   小出雅則 ,   中村美どり ,   小林泰浩

ページ範囲:P.531 - P.535

 破骨細胞は,高度に石灰化した骨組織を破壊・吸収する生体内における唯一の細胞である。その起源は,生体に広く分布するマクロファージ系の細胞である。破骨細胞の分化と骨吸収機能は,骨芽細胞の細胞膜上に誘導され発現するRANKL分子,RANKLのデコイ受容体であるオステオプロテゲリン(osteoprotegerin;OPG)およびマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)によって制御されている。本稿では,骨吸収能を担っている破骨細胞の分化と機能の分子メカニズムおよび破骨細胞が関与する骨代謝カップリング制御機構について概説する。

腱・靱帯組織の発生学

著者: 松島隆英 ,   淺原弘嗣

ページ範囲:P.536 - P.539

 腱・靱帯は結合組織として,それぞれ筋と骨,骨と骨を結びつけ運動器を構成する。腱・靱帯組織はスポーツで障害を受ける部位としても知られており,ときにはアキレス腱断裂や前十字靱帯断裂などをはじめとした障害は選手生命に直結するケースもある。更にこれら組織の反復性の外傷や変性は,二次的に変形性関節症をはじめとした種々の疾患を引き起こし,生活の質の低下にもつながる。腱・靱帯組織の恒常性維持,再生に対する治療法開発において,その発生学的理解が重要な意味を持つ。本稿では,腱・靱帯の組織構造と構成細胞の発生学を軸にした最新の知見を述べる。

骨組織の生体イメージング

著者: 鎗伸弥 ,   菊田順一 ,   石井優

ページ範囲:P.540 - P.543

 骨は常に新しく生まれ変わるダイナミックな臓器である。古い骨を壊す“破骨細胞”と新しい骨をつくる“骨芽細胞”が互いに協調して働くことによって,骨の構造が緻密に形づくられている。筆者らは,2光子励起顕微鏡を駆使して,動物個体を生かしたままで骨組織内部を観察する生体イメージング系を確立した。本技術を用いて,骨表面上での生きた破骨細胞の“動き”や“機能”,骨芽細胞間や骨細胞との“相互作用”を可視化することに成功し,その制御メカニズムを明らかにした。本稿では,生体イメージングで明らかになった骨組織内部の細胞ダイナミクスについて,最新のイメージング画像と共に紹介する。

Ⅱ.骨格系と他システムとの連関

骨髄で造血幹細胞と造血を維持する微小環境(ニッチ)

著者: 長澤丘司

ページ範囲:P.544 - P.549

 骨髄では,大部分の血液細胞が造血幹細胞より産生され,白血病・多発性骨髄腫などの造血器腫瘍が発生し進行することから,他の組織と異なる特別な微小環境が存在すると考えられる。造血幹細胞は,生涯にわたる自己複製能と複数の血液細胞に分化する多分化能を持つが,細胞数は,成熟血液細胞より著しく少ない。そこで,1978年,骨髄には造血幹細胞を維持する微小環境である造血幹細胞ニッチが存在すると想定されたが,その実体は不明であった1)。ニッチの語源は,壁面に設けられた小物を置くための小さな“くぼみ”のフランス語で,ある細胞のニッチとは,その細胞が接着し維持に必須の微小環境であると定義され,ニッチを提供する支持細胞は,ニッチ細胞と呼ばれる。

 造血のニッチ細胞の候補としては,1976年にWeissが電子顕微鏡を用いて観察した毛細血管の外側を取り囲む外膜細網細胞(adventitial reticular cells)2),1977年にDexterらが報告した,骨髄細胞の培養で未分化な血液細胞を3か月以上維持する培養容器の底面を覆うストローマ細胞3)が考えられたが,これらの細胞の機能や細胞種は不明であった。しかし,2000年代になり,幾つかの候補細胞が報告され,そのなかで,骨髄特異的な間葉系幹細胞であるCAR細胞4)が,造血幹細胞と造血のニッチ細胞の主体であることが明らかになった。最初に注目された骨芽細胞の造血における役割は不明である。本稿では,骨髄における造血幹細胞のニッチ細胞について,学術的な考察を加えて概説する。

骨によるミネラル代謝制御

著者: 福本誠二

ページ範囲:P.550 - P.553

 硬組織である骨には,体内のカルシウムやリンの大部分が存在している。したがって骨吸収や骨形成は,血中カルシウムやリン濃度に影響を及ぼし得る。これに加え骨は,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23;FGF23)の産生を介し,血中リン濃度維持に必須の役割を果たすことが明らかにされてきた。以下本稿では,カルシウムやリン代謝調節における骨の作用につき概説する。

骨免疫学とオステオネットワーク

著者: 岡本一男

ページ範囲:P.554 - P.559

 骨は身体を支え運動を可能にする運動器としての役割だけでなく,ミネラル代謝調節や造血の場としても重要である。骨代謝に関して内分泌系による制御の理解が進むなか,以前は免疫学的見地から骨を研究する例が少なかった。しかし,破骨細胞や関節リウマチの研究などを契機に,骨と免疫系との意外な関係性が注目され,両者の融合領域としての“骨免疫学”が発展してきた。このように,骨は内分泌系や免疫系,神経系など高次生体システムから複雑な制御を受けるわけであるが,近年逆に骨が他の臓器を能動的に制御し得るという報告がされ始め,骨を司令塔とした多臓器制御ネットワーク“オステオネットワーク”という概念が生まれた。本稿では,骨免疫学とオステオネットワークに関して,各研究分野が生まれた経緯を振り返りつつ,最新の知見を交えて概説する。

Ⅲ.骨・軟骨疾患のメカニズム

骨粗鬆症の病態と治療

著者: 小俣康徳 ,   田中栄

ページ範囲:P.560 - P.564

 厚生労働省がまとめた簡易生命表によると,2022年の男女の平均寿命はそれぞれ81.1年,87.1年であり,世界保健機関(World Health Organization;WHO)の調査では日本は最長寿国である。社会の高齢化に伴い様々な疾病を抱えた高齢者が増え,骨粗鬆症はその代表的な疾患の一つである。骨粗鬆症は骨折のリスク因子であり,生体の運動機能低下のみならず心肺機能低下にもつながる全身性代謝性疾患である。骨折は特に高齢者に多く,日常生活動作(activities of daily living;ADL)や生活の質(quality of life;QOL)の低下につながるため,その予防や適切な治療が必要である。

 わが国では1,000万人を超える骨粗鬆症患者がいると推計されており1),高齢化が著しく進む現在,社会全体における骨粗鬆症に対する包括的な医療対策が求められている。骨粗鬆症を予防し,適切に治療することは運動器障害や疼痛を改善しQOLを高めることにもつながる。本稿では骨粗鬆症の病態について説明し,最新の治療薬や知見も交えて骨粗鬆症治療を概説する。

骨転移および多発性骨髄腫

著者: 寺町順平 ,   安倍正博

ページ範囲:P.565 - P.569

 骨はがん転移の好発部位であるが,なかでも乳がん,前立腺がん,肺がんなどは骨転移をよく起こし骨病変形成する。多発性骨髄腫は骨髄内を好み増殖する形質細胞の悪性腫瘍であるが,進行と共に広範な骨破壊病変を形成する。骨転移は骨の反応から,造骨性転移,溶骨性転移,混合性転移に大きく分類される。前立腺がんは骨吸収も高まるが,結果として造骨性転移を示す。腫瘍細胞がIGF1,TGF-β,BMP4や前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)などを産生することで骨芽細胞分化を促進するほか,がん細胞自体がALP,オステオカルシン,オステオポンチン,BMP4などの骨形成関連因子を発現することで,osteomimicryと呼ばれる骨芽細胞様の形質を獲得する1)。これにより,がん細胞が骨形成を行いつつ骨組織内で同化し,免疫細胞などから逃避・増殖すると考えられている。

 乳がん・肺がんなどは溶骨性転移や混合性転移を示し,がん細胞からPTHrP・IL-6やPGE2などが産生され,これらが直接的・間接的に破骨細胞分化を促進させ,骨吸収を引き起こす。更に,骨吸収により骨基質からTGF-β,IGF1,Ca2+およびその他の成長因子が放出され,それに反応する腫瘍の増殖がいっそう促進されるという悪循環を形成する。多発性骨髄腫は破骨細胞を活性化すると同時に骨芽細胞分化を抑制し,更に骨細胞にアポトーシスを惹起し,その結果として広範な骨破壊と著明な骨喪失を起こす。

関節リウマチ・歯周病の骨破壊メカニズム

著者: 塚崎雅之

ページ範囲:P.570 - P.573

 免疫は本来,病原体から身体を守るために生まれたシステムであるが,攻撃対象を誤って暴走した場合には自己免疫疾患を引き起こす。興味深いことに,鏡像のような関係である感染症と自己免疫疾患の双方で最も頻度の高い病態,歯周病と関節リウマチにおいて,共通して骨組織が破壊される。本稿では,関節リウマチと歯周病における骨破壊メカニズムと,両疾患の深い関係性について議論する。

変形性関節症と軟骨細胞

著者: 齋藤琢

ページ範囲:P.574 - P.578

 変形性関節症は整形外科疾患のなかでも最多の患者数を有する変性疾患であるが,病態解明は道半ばであり,病態をコントロールし得る治療法はいまだ存在しない。関節軟骨の変性・摩耗が目立つ疾患ではあるが,関節は軟骨以外にも軟骨下骨や靱帯,滑膜,膝であれば半月板など,多彩な要素から構成されており,分子細胞生物学的研究だけを考えてもアプローチは容易ではない。本稿では,変形性関節症の病因の一つである“過剰な力学的負荷”を主軸に,最近の滑膜研究も含め紹介する。

iPS細胞を用いた骨軟骨分化研究

著者: 戸口田淳也 ,   川井俊介 ,   鎌倉武史 ,   金永輝

ページ範囲:P.579 - P.584

 iPS細胞とは,DNAメチル化などによって制御された分化細胞における遺伝子発現制御機構を複数の転写因子を強制発現させることで解除して,胚性幹細胞と同等の状態とすることによって作製された人工多能性幹細胞である。2007年にヒトiPS細胞の樹立が報告されてから16年が経過し,その間に様々な生命科学の領域でiPS細胞を活用した基礎研究や応用研究が進められており,骨軟骨領域においてもiPS細胞由来軟骨細胞を用いた再生治療の臨床研究が実施されている1)。筆者らはiPS細胞のもう1つの臨床応用である創薬への応用に関して,難治性の遺伝性骨軟骨疾患を対象として研究を展開し,進行性骨化性線維異形成症(fibrodysplasia ossificans progressiva;FOP)において病態解明から治療薬候補を同定して2,3),医師主導治験の実施に至った4)。これらの研究では骨軟骨細胞の分化過程をin vitroで再現し,疾患由来細胞の分化能を評価することを試みたが,その過程において,増殖能と分化能を携えたiPS細胞を用いることで,初めて観察することができた興味深い結果を得た。本稿では,膜性骨化と内軟骨性骨化という2つの骨化過程に関連する成果を紹介する。

軟骨無形成症のメカニズムと治療

著者: 大薗恵一

ページ範囲:P.585 - P.589

 軟骨無形成症は,四肢短縮型低身長を来す代表的骨系統疾患であり,頻度も比較的高く,生涯にわたって医療的支援が必要な疾患であるため,その理解が望まれる。また,2022年に本症の成長期の治療薬としてボソリチドが承認されたため,注目度が高い疾患となっている。

進行性骨化性線維異形成症

著者: 片桐岳信 ,   塚本翔 ,   倉谷麻衣

ページ範囲:P.590 - P.594

 「筋肉が骨になる」と表現されるヒトの疾患がある。手塚治虫氏の「BLACK JACK(ブラック・ジャック)」という医師が主人公の作品のなかで,「からだが石に…」というストーリーで取り上げられた疾患としても知られる1)。表現されるように,この疾患が発症・進行すると,全身で本来は存在しないはずの骨組織が形成され,関節などが癒合して自由に身体を動かすことが困難となる。本疾患は,正式には“進行性骨化性線維異形成症”(fibrodysplasia ossificans progressiva;FOP, OMIM #135100)と呼ばれ,古くは“進行性化骨性筋炎”(myositis ossificans progressiva)とも呼ばれた遺伝性疾患である。2006年に責任遺伝子としてACVR1/ALK2が同定され,FOP症例に共通のアミノ酸残基の変異を伴う遺伝子変異が発見された2)ACVR1/ALK2遺伝子がコードするタンパク質ALK2は,bone morphogenetic protein(BMP)の膜貫通型キナーゼ受容体の一つであった。これまでにFOP症例から見いだされたALK2のアミノ酸変異は,すべて細胞内領域に位置する。変異したALK2受容体は,リガンドとして異所性骨誘導活性を有するBMPだけでなく,異所性骨化を誘導しないActivin Aと結合しても骨形成シグナルを活性化することが,FOPの異所性骨化に重要と考えられる。最近,ALK2受容体の細胞内動態の解析から,FOPにおける異所性骨化の発症機序が明らかになった。

実験講座

細胞内シグナル分子を特異的に活性化する新ツール“SLIPT”

著者: 築地真也

ページ範囲:P.595 - P.601

 細胞内の狙ったシグナル分子を素早く特異的に活性化することのできるツールは,細胞内情報伝達の作用機序解明や人工操作のための強力な基盤技術となる。筆者らはそのような細胞内シグナル分子活性化のための新しいケミカルバイオロジーツール“SLIPT”を開発した。本稿では,細胞膜内葉(インナーリーフレット)を起点とする様々なシグナル分子やシグナル経路を自在に活性化することのできる“SLIPT-PMシステム”を中心に,その基本原理から,特徴,使用方法,実施例について概説する。

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目次

ページ範囲:P.513 - P.513

書評

著者: 大塚愛二

ページ範囲:P.602 - P.602

財団だより/次号予告

ページ範囲:P.603 - P.603

あとがき

著者: 栗原裕基

ページ範囲:P.604 - P.604

 新組織学シリーズの特集は,2020年に当時編集委員長を務めておられた故野々村禎昭先生の「年1回ずつ生体の各組織を取り上げ,最終的には現代的な組織学の体系を構築したい」との思いから企画され,「皮膚」,「骨格筋」,「血管・リンパ管」を経て,今回の「骨・軟骨」が4回目になります。今回ゲストエディターをお願いした高柳広先生は,整形外科医としてのバックグラウンドをもちながら,免疫学において「骨免疫学」という新しい領域を確立されたご高名な医学者です。現在はさらに骨を中心とする「オステオネットワーク」という概念を提唱され,骨格系の理解に新しい枠組みが生み出されています。「骨身に沁みる」,「骨の髄まで」という,人間が体の根底に感じる骨のイメージと重なるようにさえ思えます。本特集ではこうした先生の幅広いご見識から構想をお願いし,骨・軟骨の組織学の基礎から臨床に至るまで,多くの先生方にご執筆いただくことができました。おかげさまで,この一冊で骨・軟骨の構造・機能から病態にわたって,最先端の知見を広く俯瞰できる内容になりました。

 本特集号ではさらに実験講座として,築地真也先生からケミカルバイオロジーによる細胞内シグナルの新しい活性化ツールをご紹介いただきました。本特集のテーマである組織構築や疾患病態の研究をはじめ,幅広い応用が期待できそうです。ご執筆いただいたすべての先生方に,心より感謝申し上げます。

生体の科学 第74巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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