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文献詳細

雑誌文献

生体の科学74巻6号

2023年12月発行

文献概要

特集 新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨 Ⅱ.骨格系と他システムとの連関

骨髄で造血幹細胞と造血を維持する微小環境(ニッチ)

著者: 長澤丘司12

所属機関: 1大阪大学大学院生命機能研究科 2大阪大学大学院医学系研究科

ページ範囲:P.544 - P.549

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 骨髄では,大部分の血液細胞が造血幹細胞より産生され,白血病・多発性骨髄腫などの造血器腫瘍が発生し進行することから,他の組織と異なる特別な微小環境が存在すると考えられる。造血幹細胞は,生涯にわたる自己複製能と複数の血液細胞に分化する多分化能を持つが,細胞数は,成熟血液細胞より著しく少ない。そこで,1978年,骨髄には造血幹細胞を維持する微小環境である造血幹細胞ニッチが存在すると想定されたが,その実体は不明であった1)。ニッチの語源は,壁面に設けられた小物を置くための小さな“くぼみ”のフランス語で,ある細胞のニッチとは,その細胞が接着し維持に必須の微小環境であると定義され,ニッチを提供する支持細胞は,ニッチ細胞と呼ばれる。

 造血のニッチ細胞の候補としては,1976年にWeissが電子顕微鏡を用いて観察した毛細血管の外側を取り囲む外膜細網細胞(adventitial reticular cells)2),1977年にDexterらが報告した,骨髄細胞の培養で未分化な血液細胞を3か月以上維持する培養容器の底面を覆うストローマ細胞3)が考えられたが,これらの細胞の機能や細胞種は不明であった。しかし,2000年代になり,幾つかの候補細胞が報告され,そのなかで,骨髄特異的な間葉系幹細胞であるCAR細胞4)が,造血幹細胞と造血のニッチ細胞の主体であることが明らかになった。最初に注目された骨芽細胞の造血における役割は不明である。本稿では,骨髄における造血幹細胞のニッチ細胞について,学術的な考察を加えて概説する。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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