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文献詳細

雑誌文献

生体の科学74巻6号

2023年12月発行

文献概要

特集 新組織学シリーズⅣ:骨・軟骨 Ⅲ.骨・軟骨疾患のメカニズム

骨転移および多発性骨髄腫

著者: 寺町順平1 安倍正博2

所属機関: 1岡山大学学術研究院医歯薬学域口腔機能解剖学 2徳島大学大学院医歯薬学研究部血液・内分泌代謝内科学

ページ範囲:P.565 - P.569

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 骨はがん転移の好発部位であるが,なかでも乳がん,前立腺がん,肺がんなどは骨転移をよく起こし骨病変形成する。多発性骨髄腫は骨髄内を好み増殖する形質細胞の悪性腫瘍であるが,進行と共に広範な骨破壊病変を形成する。骨転移は骨の反応から,造骨性転移,溶骨性転移,混合性転移に大きく分類される。前立腺がんは骨吸収も高まるが,結果として造骨性転移を示す。腫瘍細胞がIGF1,TGF-β,BMP4や前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)などを産生することで骨芽細胞分化を促進するほか,がん細胞自体がALP,オステオカルシン,オステオポンチン,BMP4などの骨形成関連因子を発現することで,osteomimicryと呼ばれる骨芽細胞様の形質を獲得する1)。これにより,がん細胞が骨形成を行いつつ骨組織内で同化し,免疫細胞などから逃避・増殖すると考えられている。

 乳がん・肺がんなどは溶骨性転移や混合性転移を示し,がん細胞からPTHrP・IL-6やPGE2などが産生され,これらが直接的・間接的に破骨細胞分化を促進させ,骨吸収を引き起こす。更に,骨吸収により骨基質からTGF-β,IGF1,Ca2+およびその他の成長因子が放出され,それに反応する腫瘍の増殖がいっそう促進されるという悪循環を形成する。多発性骨髄腫は破骨細胞を活性化すると同時に骨芽細胞分化を抑制し,更に骨細胞にアポトーシスを惹起し,その結果として広範な骨破壊と著明な骨喪失を起こす。

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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