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雑誌目次

雑誌文献

生体の科学75巻1号

2024年02月発行

雑誌目次

特集 脳と個性

特集「脳と個性」によせて

著者: 大隅典子

ページ範囲:P.2 - P.2

 “個性”とは何だろう? どのようにして生まれるのだろう? そのような問いを持ったのがいつごろからだったのかよく思い出せない。しかし,少なくとも自閉スペクトラム症(ASD)などの神経発達症のメカニズムを研究対象にしたいと考えた2000年代後半には,たびたび自分の脳の中に浮かんでは消える命題であった。例えば,ASDの特性を持つ方は多様な症状を合併するが,それは一人ひとり異なっている。動物モデルを用いてメカニズムを理解したいと願う基礎科学者にとって,これはやっかいな問題だ。近代科学では,なるべく“ばらつき”を排除し再現性の高いデータを得て,普遍的な原理を解明するのが王道である。しかし,天邪鬼な筆者は“ばらつき”にも意味があると思っていた。

 より真剣に考えるきっかけとなったのは,2016年から開始した「多様な『個性』を創発する脳システムの統合的理解(『個性』創発脳)」という文部科学省科学研究費新学術領域の立ち上げであった。人文系,生物系,理工系の研究者が集まった学際的な研究グループによって,“個性学”を打ち立てることを目指した5年だった。その成果については,『個性学入門 個性創発の科学』という書籍を朝倉書店より上梓することによって領域全体として一つの結実となったが,筆者らの研究室の実りとしては,2022年の論文が到達点と言える(本特集の「脳の発生・発達と“個性”」参照)。

Ⅰ.“個性”を理解する企て

“個性”とは何か—その定義の試み

著者: 原塑

ページ範囲:P.3 - P.7

 “個性”は,日常,様々な場面で目にする言葉であるが,それが何を意味しているのかを明確に理解することは難しい。そこで本稿では,まず個性の辞書的定義を確認する。その後,“個性”という語が印象的に用いられている美容広告において,それがどのような意味で使用されているかを考察する。そこで明らかになるのが,個性が,本当の自分を各人が探求し,それを外から見えるように表現したもののことだということである。本稿の後半,個性がリベラリズムにおいて重視されてきた概念であることを確認し,最後に,その現代的意義を明らかにする。

心理学からみた“個性”

著者: 若林明雄

ページ範囲:P.8 - P.12

Ⅰ.“個性”とは何か

 “個性”という用語は,現時点では科学の世界では専門用語としては使用されていない。一般的には,個性は有無(“個性がある,没個性”)や程度(“個性的”)を表す用語として使用されているが,これは“独自性(uniqueness)”という意味で,個の全体性を意味するindividualityとしての個性とはニュアンスが異なる。“個性”を“個人(ヒト以外の場合は個体)差”と同義語のように使用している場合もみられるが,個性という場合には個(人)としての独自性が強調されるのに対し,個人差という場合には他者(他個体)との比較(差異)を前提とするという違いがあるため,同義語のように使用することは誤解や混乱を招くため避けるべきであろう。現在の実証科学的心理学では,本稿で説明するように“個人差”は研究の大きなテーマであるが,“個性”は対象としていない。しかし,心理学が科学として成立する過程では,個の独自性としての“個性”を研究の対象としていた歴史があり,その過程を通じて現在の個人差研究が成立したことも事実である。“個人差=個性”ではないが,個人差を通して個性を理解することは可能であると考えられる。

障害と“個性”

著者: 熊谷晋一郎

ページ範囲:P.13 - P.17

 筆者は,生まれつき脳性まひ*1という障害を持っている。筆者が生まれた1970年代,脳性まひは,早期発見してすみやかに濃厚なリハビリ訓練を行えば,高い確率で改善する障害であるとみなされていた1)。筆者自身も物心つく前から,1回1時間半の訓練を1日4-5回行うのが日課であった。訓練は子ども心に,非常に痛く,つらいものであった。

 その後,1980年代になると,訓練の長期的な効果について多くの研究報告がなされ,当初考えられていたような効果は存在しないことが次々と明らかになっていった2)。また,それと同時期,世界的に障害者の人権問題に関する意識が高まり,世界各地で同時多発的に勃興しつつあった障害者運動が互いに連携をし始め,大きな勢力となりつつあった。

社会性の発達と“個性”

著者: 明和政子

ページ範囲:P.18 - P.23

 胎児期から身体を環境(他者,社会,文化)と複雑に相互作用させながら,ヒトの脳と心はシステムとして連続的に変化する。更に,個の生体システムを構成する要素は,環境の影響(エネルギー,物質,情報など)を受けながら自発的なリズム(振動子)を生成し,相互作用のしくみそのものを変えていく。この動的プロセスを理解することは,多様な脳と心の働き(個性)が創発する機序を理解することにつながる。

 更に重要となるのは,脳の発達には環境の影響を特に受けやすい限定的な“感受性期(sensitive period)”が存在することである。感受性期には,脳-心のシステム(構造・機能)が環境との相互作用によって変容しやすいが,生後早期はとりわけその影響が大きい時期と言える。ヒトは極めて社会的な生物として進化してきた点を考慮すると,生後早期に受ける社会的経験,特に,特定の個体(養育個体)との相互作用は,ヒト特有の脳と心の創発・発達に大きな影響を与えるはずである。

脳の発達と“個性”

著者: 保前文高

ページ範囲:P.24 - P.29

 ヒトの大脳が形成される過程において,ニューロンの新生と遊走が盛んに行われたのち,視床から皮質への投射が到達するその時期に,皮質表面では脳溝の形成という大きな変化が生じ始める1-3)。例えば外側表面では,中心溝がまさに中央部分の亀裂として最初につくられる4-6)。その後,上側頭溝,上前頭溝,中心前溝などの一次脳溝と呼ばれる溝が順に形成される。脳溝形成の機序を解明することは脳の発達を明らかにするうえで極めて重要なテーマであり,tension-based theory,radial expansion,differential tangential expansionなどの仮説が提唱されて,盛んに研究が進められている7,8)

 胎児の脳のなめらかな表面に脳溝が生じてくるというダイナミックな変化の結果として,脳溝の位置や形,深さに個人差が生じることはヒトの大脳の特筆すべき特徴である9,10)。脳の形成と共に現れるこの個人ごとの“紋”は,脳の個性と考えられる。生後1か月の時点で磁気共鳴画像法(MRI)を用いて計測した脳の構造画像から脳溝や脳回の幾何学的特徴を取り出し,1歳,2歳それぞれの時点のデータと縦断的に比較すると,血縁がない他者はもちろんのこと,遺伝子と養育環境を共有した一卵性双生児の間であっても個別に同定できるほどに,個人に固有の特徴となる11)。生後1年の間にも細かい二次脳溝や三次脳溝が形成されると共に急速に灰白質の表面積が広くなるが,2歳以降は思春期までにわずかに増加する傾向にある12)。それに対して,灰白質の厚み(皮質厚)は胎児期から生後に増して,領域に依存するものの1歳から2歳のころに最も厚くなる13)。その後,言語機能に関連するシルビウス溝周辺領域では思春期前半まで厚みが増す一方で14),その他の多くの領域の厚みは減少する15,16)。増加して減少する経時的な皮質厚の変化は,脳溝の形成と共に個人を特徴づける発達過程である。

Ⅱ.“個性”の系統的理解

ゲノムからみた“個性”

著者: 郷康広

ページ範囲:P.30 - P.35

 ヒト遺伝学の中心的な課題は,表現型の個性や多様性の遺伝的基盤を理解することにある。近年のゲノム配列の読み取り技術の進歩により,遺伝性疾患のみならず生活習慣病などを含む様々な疾患の要因となるゲノム・遺伝子の変異が明らかになっている。しかし,われわれが普段から目にする“普通”な表現型のばらつき,つまり“ありふれた個性”の遺伝的基盤に関する研究や理解は疾患のそれに比べて遅れている。本稿では,疾患だけでなく,日常にみられる様々な“ありふれた個性”を生み出すゲノム・遺伝的基盤に関しても概観してみたい。

“個性”の進化

著者: 佐藤大気 ,   河田雅圭

ページ範囲:P.36 - P.39

 われわれは一般に,ものの考え方や嗜好性,行動傾向といった,精神的な形質における個体間変異を指して個性という。個性の存在は大変身近でありながら,その実,その遺伝学的基盤や進化については,わかっていないことが多い。本稿では,個性の遺伝的基盤やその進化に関する研究の歴史から近年の大規模なゲノム解析の結果を踏まえて,個性の進化的背景を概観する。

種差と“個性”

著者: 飽田寛人 ,   今村拓也

ページ範囲:P.40 - P.44

 Homo sapiens(ラテン語で“賢い人間”)という学名が示すとおり,高度な知能はヒトという種(以後Homo sapiensを指す)のアイデンティティであり,大きく複雑に発達した脳はその基盤である。本稿では,ヒト脳の特異性,脳進化のメカニズム,更には“個性”がどのように“進化”へと結びつくかについての最新の知見を紹介する。

動物からみた“個性”

著者: 村山美穂

ページ範囲:P.45 - P.50

 身近なイヌやネコなどの動物にも,ヒトと同様に,振る舞いの一貫した傾向において個体差,すなわち“個性”がみられる。“個性”の種を超えた共通性や差違を知ることで,われわれヒト自身の行動や社会の背景を理解することができ,野生動物も含めた動物とヒトのより良い共存にも役立つことが期待される。筆者らは遺伝子という種間で共通の手段を使って,種を超えた比較を行っている。

Ⅲ.“個性”の実験的理解

ニューロンの段階的発達と“個性”—AUTS2遺伝子の研究から

著者: 星野幹雄

ページ範囲:P.51 - P.56

Ⅰ.脳というブラックボックスと個性

 多くの人は,“個性”なるものが脳に宿っていると考えているだろう。脳はある種のブラックボックスであり,様々な内的・外的インプットを受容すると,それに応じて多様な行動を表出(アウトプット)する。違う人ならば,同じインプットを受けても異なる行動を表出するだろうし,また同一人物であっても違う行動をとることもある。ただ,それぞれの個々人によって,そのブラックボックスの“インプットからアウトプットに至る何らかの傾向”のようなものが存在することを,われわれは日々感じている。そしてその“傾向”を感じるとき,われわれはそこにその人の“個性”を感じとる。そのため,“個性”を理解するためには,その傾向を生み出す脳(ブラックボックス)のしくみ,つまり行動を表出させるより上位の脳内原理を理解しなくてはならない。

 脳というブラックボックスは極めて複雑かつ精緻に構成されており,それが高度な精神神経活動を可能にしている。その最小単位はニューロンであり,ヒトの脳神経系全体で約1,000-2,000億個,大脳皮質だけでも200億個も存在する。また,ニューロンは,興奮性ニューロンと抑制性ニューロンに大まかに分類されるが,それらもそれぞれの配置,形態や電気生理学的特性などによって,より細かい種類へと分類される。こうした様々な種類のニューロンの一つひとつが,樹状突起と軸索を複雑に伸ばし,複数のニューロンとシナプスを介して結合し,複雑精緻な神経ネットワークを構成する。例えば,ロケットはあらかじめ決められた膨大な種類と数の部品を,厳密な設計図に基づいて組み上げることによってつくりだされる。しかし,脳はゲノムに書き込まれた基本原理に従いはするが,ある程度,自律的・自己組織化的につくりあげられる(一部,環境要因の介入もある)。そのため,脳という構造体は,すべての内部構造が把握されているロケットとは対照的に,中がどうなっているかわからないブラックボックスなのである。それを理解するために,これまでに多くの脳神経科学者たちが,その構造(解剖学)や機能(生理学)を研究してきた。

エピゲノムと“個性”

著者: 渡邉紗羽 ,   中嶋秀行 ,   中島欽一

ページ範囲:P.57 - P.62

 ヒトの個性はどのようにして決まるのだろうか。われわれヒトを含む生物は,遺伝子情報に基づいてその生命体を構成・維持している。しかし,ヒトの個性を決めるのは単に遺伝子情報だけではない。がん家系に生まれた人でも,お酒やたばこを控えるなど周囲の環境を改善することでがんにならずに済む人もいる。近年,われわれの体を構成する細胞には,DNAの配列変化を伴わずに,遺伝子発現の強弱あるいはオン/オフを制御するしくみが存在しており,その制御は環境要因によって動的に変化することが科学的に明らかになってきた。この制御を“エピジェネティクス”と呼び,遺伝子配列情報だけでは理解できない事象を理解するために非常に重要である。本稿ではエピジェネティクスの概要と,それが生み出すと考えられる個性について紹介する。

脳の発生・発達と“個性”

著者: 稲田仁 ,   大隅典子

ページ範囲:P.63 - P.68

 脳の発生・発達は,一定の幅はあるものの,通常の発生過程においては厳密に規定されている1-4)。遺伝的な疾患やウイルス感染などによって生じる障害を除き5,6),大脳,小脳,脳幹といった脳の基本的なマクロな構造はヒトでもマウスでも共通しており,運動野や視覚野,体性感覚野といった機能的な区分についても,種が同じであれば異なる個体においても相対的な位置関係にほとんど差はない7)。マクロな脳構造のみならず,全脳的または局所的な神経回路レベルにおいても基本的な共通パターンがあり,細胞の構成,神経伝達物質の種類や働き,遺伝子発現においてもヒトとマウスで共通している点も多い8-13)。その一方で,各個体の脳の機能的特徴,特に行動的な表現型に注目すると,遺伝的に多様なヒトではもちろんのこと,遺伝的背景が均一な実験用マウスにおいてさえも,発生・発達過程および発達後にも多様な個体差(個性)が観察される14-19)。本稿では,ヒトやモデル動物において脳の発生・発達の過程で観察される個体差(個性)について紹介し,続いて,筆者らの研究グループが最近報告したマウス新生仔における音声コミュニケーション発達の個体差について解説する。

動物の鳴き声の“個性”

著者: 菅野康太

ページ範囲:P.69 - P.73

 本稿では,筆者が専門としているマウスの音声コミュニケーションにみられる個体差について論じていく。その際,動物の鳴き声の研究で有名な鳥類との比較をすることで,動物の鳴き声の個体差形成機構を概観していく。そもそも鳴き声は,動物種ごとに多様である。例えば霊長類では,天敵の種類に応じてベルベットモンキーが警戒音声を使い分けていることを報告した有名な研究があり,音声を高度に用いているように感じられる。しかし,そのような霊長類においても,ヒト以外では発声学習が明確には確認できず,情動依存的に音声が発せられていると考えられている1)。つまり,神経支配による随意的な発声操作は,動物種全体を眺めれば,非常に難しい行動なのである。一方,鳴禽類は,この発声学習を行う鳥類として非常に有名である。学習がなされる発声としては,雄の求愛発声がたいへん有名なわけだが,マウスの超音波発声にも求愛発声に類するものが知られている。個性という観点からの生物学的研究は,いまだ非常に少ないと言わざるを得ないが,求愛もしくは雌雄間のかけひき・パートナー選択を進化的視点から考えれば,個性・個体差というものが,生物学にとって本質的問題であると言わざるを得ないことがわかる(後述する)。そこで本稿では,動物の鳴き声のなかでも,この求愛発声の個体差について解説する。

 本論に入る前に,マウスの超音波発声についての簡単な説明をここでしておきたい。マウスの超音波発声としては主に2種類が有名で2),1つは仔マウスが母や巣から隔離された際に発するストレスコール(図D),そしてもう1つが,成体雄が雌に発する求愛発声である(図A)。齧歯類の超音波発声はultrasonic vocalizations,略してUSVsと呼ばれ,マウス以外にもラットや他の齧歯類で広くみられる3,4)。単一の周波数ピークを持つトーン状の音声シグナルで,マウスでは50kHzから80kHz程度の間に主音がみられる。

学習時の“個性”

著者: 久我奈穂子 ,   佐々木拓哉

ページ範囲:P.74 - P.78

 われわれは脳を対象とした研究者として,大学での講義や一般講演の場において,様々な質問を受けることがある。そのなかで最も多い疑問の一つが,「自分の学習や記憶の能力は,他者となぜ違うのか?」である。現代社会を生きるわれわれの誰もが,こうした“学習の個性(個体差)”について疑問を持ち,そのメカニズムや意義を知りたいと思っているはずである。つまり学習の個性という課題は,研究者の単なる興味を超えて,万人が知りたいテーマであると言える。では,この社会からの疑問に,現代の神経科学が正確な解答を得られているかと言えば,現実はほど遠いと言わざるを得ない。脳の学習や記憶を対象とした研究者は,常にこの課題を承知しているはずだが,生命科学の基本原則に従うと,研究結果はできるだけ画一的でばらつきが少ないほうが望ましく,学習の個性を扱うという試みそのものが脳研究の俎上に載りにくいという問題があった。

 そのようななかで,平成28年度から科研費・新学術領域研究において“「個性」創発脳”領域が発足し,筆者らも本領域に参画する機会を得たことは,筆者らが学習の個性に関する新たな知見を深める重要な好機となった。本稿では,筆者らの齧歯動物を用いた研究を中心に紹介しつつ,それらの知見を基に,ヒトにおける学習の個性についても考察を試みる。

“個性”の数理学的捉え方

著者: 松田孟留 ,   駒木文保

ページ範囲:P.79 - P.83

 近年の実験技術の進歩により,大規模で多様な脳神経データが得られるようになってきている。こうしたデータから個性を捉えるためには,データの確率的な生成過程を適切に記述した統計モデルの構築(統計モデリング)が重要である。本稿では,統計モデルを用いたデータ解析によって個性を捉える例を紹介する。

実験講座

組織内の小分子を可視化するFixEL

著者: 美野丈晴 ,   野中洋 ,   浜地格

ページ範囲:P.84 - P.89

 外因性に投与された小分子の組織内分布を解析する技術は,機能性小分子の活用に不可欠である。しかし,単離組織中に小分子を担持することの困難さから,その分布を高分解能に捉えることは困難であった。最近,筆者らは古くから用いられるホルムアルデヒドによる組織固定の化学を見直すことで,小分子の組織内分布を固定し可視化するための新たな方法論“FixEL”を開発した1,2)。本稿ではFixELの詳細と,今後の展望について述べる。

グリオキサール固定法—免疫組織化学染色における問題解決へのアプローチ

著者: 今野幸太郎

ページ範囲:P.90 - P.96

 ホルムアルデヒドは世界的なスタンダード固定液として組織学や組織化学の研究に長年使用されてきたが,固定組織への抗体の浸透やアクセスを制限し,十分な染色性が得られない状態が多々生じることが問題であった。本稿ではジアルデヒドであるグリオキサールを主成分とした固定液の染色性に及ぼす改善効果1)について紹介する。

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目次

ページ範囲:P.1 - P.1

次号予告

ページ範囲:P.83 - P.83

財団だより

ページ範囲:P.96 - P.96

書評

著者: 弦本敏行

ページ範囲:P.97 - P.97

あとがき

著者: 岡本仁

ページ範囲:P.98 - P.98

 神経科学者はこれまで,動物の個体ごとのバラツキができるだけ起こらない現象を対象として研究し,脳の普遍的メカニズムの解明に努力してきました。近年その成果を基に,ヒトを対象として,その「こころ」の解明に取り組むことが可能となってきました。一方,ヒトのこころは千差万別で,普遍的なこころをイメージすることが困難なことは明らかです。脳の普遍的メカニズムにどのような変様が加わり,それぞれの個性が生まれるのかという問題は,ヒトのこころを解明するうえで乗り越えなければならない大変重要な課題だと言えます。このような観点から,今回この課題に真正面から取り組む新学術領域を代表された大隅典子先生にゲストエディターをお願いし,脳がどのようにして個性を獲得するのかという課題について,脳科学,遺伝学,社会学,心理学などの見地から多面的にアプローチする特集号を企画していただくことができました。今野先生,美野先生には実験講座として,組織学的研究に携わった者であれば誰でも早速試してみたいと思える,これまでの組織固定法の様々な問題を克服する新しい組織化学的手法の開発に関して解説をお願いできました。

 素晴らしい特集に仕上げてくださった,諸先生方に深く感謝いたします。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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