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特集 脳と個性 Ⅰ.“個性”を理解する企て
心理学からみた“個性”
著者: 若林明雄1
所属機関: 1千葉大学
ページ範囲:P.8 - P.12
文献購入ページに移動Ⅰ.“個性”とは何か
“個性”という用語は,現時点では科学の世界では専門用語としては使用されていない。一般的には,個性は有無(“個性がある,没個性”)や程度(“個性的”)を表す用語として使用されているが,これは“独自性(uniqueness)”という意味で,個の全体性を意味するindividualityとしての個性とはニュアンスが異なる。“個性”を“個人(ヒト以外の場合は個体)差”と同義語のように使用している場合もみられるが,個性という場合には個(人)としての独自性が強調されるのに対し,個人差という場合には他者(他個体)との比較(差異)を前提とするという違いがあるため,同義語のように使用することは誤解や混乱を招くため避けるべきであろう。現在の実証科学的心理学では,本稿で説明するように“個人差”は研究の大きなテーマであるが,“個性”は対象としていない。しかし,心理学が科学として成立する過程では,個の独自性としての“個性”を研究の対象としていた歴史があり,その過程を通じて現在の個人差研究が成立したことも事実である。“個人差=個性”ではないが,個人差を通して個性を理解することは可能であると考えられる。
“個性”という用語は,現時点では科学の世界では専門用語としては使用されていない。一般的には,個性は有無(“個性がある,没個性”)や程度(“個性的”)を表す用語として使用されているが,これは“独自性(uniqueness)”という意味で,個の全体性を意味するindividualityとしての個性とはニュアンスが異なる。“個性”を“個人(ヒト以外の場合は個体)差”と同義語のように使用している場合もみられるが,個性という場合には個(人)としての独自性が強調されるのに対し,個人差という場合には他者(他個体)との比較(差異)を前提とするという違いがあるため,同義語のように使用することは誤解や混乱を招くため避けるべきであろう。現在の実証科学的心理学では,本稿で説明するように“個人差”は研究の大きなテーマであるが,“個性”は対象としていない。しかし,心理学が科学として成立する過程では,個の独自性としての“個性”を研究の対象としていた歴史があり,その過程を通じて現在の個人差研究が成立したことも事実である。“個人差=個性”ではないが,個人差を通して個性を理解することは可能であると考えられる。
参考文献
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