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文献詳細

雑誌文献

生体の科学75巻2号

2024年04月発行

文献概要

特集 生命現象を駆動する生体内金属動態の理解と展開 Ⅱ.タンパク質を機能化する生体内での金属挿入メカニズム

鉄シャペロンによる鉄結合タンパク質の細胞内活性化制御メカニズム

著者: 𥱋取いずみ1 岸文雄2

所属機関: 1京都大学大学院医学研究科細胞機能制御学 2医療法人健仁会

ページ範囲:P.127 - P.132

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 鉄は人体において最も多く存在する遷移金属であり,酸素運搬・エネルギー産生など生命活動の必須元素である。これは,鉄が容易に電子の授受を伴う酸化還元反応の活性中心として機能することに依存する。一方,鉄は酸素との強い反応性ゆえに活性酸素(reactive oxygen species;ROS)の産生源となり,細胞毒性を惹起する。特に鉄イオンとして単独で存在することは,ROS産生を惹起する最も危険な状態である。そこで,血液中では鉄キャリア分子トランスフェリン(transferrin;Tf)と結合して,細胞内では過剰鉄を低毒性のFe3+として鉄貯蔵タンパク質フェリチンに隔離することで,鉄毒性から臓器・細胞を守るしくみを持つ。しかし,細胞質内の還元状態では,鉄は毒性が高く水溶性のFe2+として存在し,鉄輸送体はFe2+のみを輸送可能である。更に,鉄依存性酵素はFe2+を補因子として要求することから,細胞質内で安全にFe2+を分配するキャリア分子の存在が必須であると,長きにわたり考えられてきた。

 2008年,“鉄シャペロン”の概念が提唱され,細胞内での新たな鉄分配機構が明らかになった。鉄シャペロン分子PCBP[poly(rC)binding protein]は,鉄輸送体との間での鉄の授受,酵素への鉄挿入など重要な役割を担い,細胞質内で安全に鉄を輸送する重要な因子として機能する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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