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特集 生命現象を駆動する生体内金属動態の理解と展開 Ⅲ.金属種の置換によるタンパク質機能の新たな制御
カルコゲン元素である硫黄,セレンおよびテルルに対する代謝機構の共有と識別
著者: 小椋康光1
所属機関: 1千葉大学大学院薬学研究院
ページ範囲:P.148 - P.152
文献購入ページに移動一方,生体内で同族の硫黄に比べて,セレンはおよそ10,000分の1程度しか存在していない。また,テルルは必須元素ではないために,特段の曝露がなければ,理論的には生体内に存在していないことになる。生体に微量しか存在しない元素の生物学的作用を理解するためには,生体微量元素が生体内でどのような化学形態で存在し,機能するのか,あるいは生体成分と相互作用を発揮するのかという定性性と定量性を同時に把握することが必要である。そこで,この目的に用いられるのがスペシエーション(speciation)と呼ばれる化学形態分析である。実際のスペシエーションでは,分離の手段としてもっぱら高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography;HPLC)が用いられ,元素特異的な検出の手段として誘導結合プラズマ質量分析法(inductively coupled plasma mass spectrometry;ICP-MS)が用いられることが多い1-3)。図1にこのLC-ICP-MSの概念図を示した。筆者らの研究グループでは,このLC-ICP-MSを基盤技術として用いて,カルコゲンの代謝機構の解明を行っている。本稿では,硫黄,セレンおよびテルルに対する代謝機構において,これらが生物にどのように識別されているのか,あるいはされていないのかを紹介したい。
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