文献詳細
特集 高速分子動画:動的構造からタンパク質分子制御へ
Ⅱ.計算によるアプローチ
文献概要
酵素は生体内で特定の反応を促進させるため,反応に最も適した活性中心構造をとっている。そのため,基本的に機能と構造は1対1に対応しており,酵素構造は一意に定まっているとされている。実際,1890年にFischerによって提唱された“鍵と鍵穴モデル”は多くの酵素系で成り立っていることが示されてきており,酵素の構造解析が極めて重要である理由になっている。“鍵と鍵穴モデル”は1958年にKoshlandにより“誘導適合モデル”として微修正されるが,そのモデルでも基質結合に関わるタンパク質の構造変化が許容されただけであり,依然として活性中心の構造変化は極めてわずかであることが示されてきている。しかしながら,本稿で取り扱う銅含有アミン酸化酵素は,酵素触媒サイクル中に,活性中心の主要反応部位であるトパキノン補酵素(topaquinone;TPQ)が大きくコンホメーションを変化させる。この摩訶不思議な現象は,不活性種として解釈されたり,構造変化の意味が不明であったりと,これまでに多くの議論がなされてきたが,未解決問題となっていた。
量子化学計算は酵素の複雑な化学反応過程を,分子・電子状態レベルで精密に検証し,酵素反応に対し極めて有益な示唆を与えてくれる。特に反応を特徴づける遷移状態や反応経路の検証には量子化学計算手法での解明が不可欠となっている。
量子化学計算は酵素の複雑な化学反応過程を,分子・電子状態レベルで精密に検証し,酵素反応に対し極めて有益な示唆を与えてくれる。特に反応を特徴づける遷移状態や反応経路の検証には量子化学計算手法での解明が不可欠となっている。
参考文献
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掲載誌情報