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生体の科学75巻6号

2024年12月発行

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特集 新組織学シリーズⅤ:脂肪

特集「新組織学シリーズⅤ:脂肪」によせて フリーアクセス

著者: 小川佳宏

ページ範囲:P.542 - P.542

 脂肪組織は生体の栄養状態に応じて伸縮自在の神秘的な組織だが,指でつまめる皮下脂肪は最も身近な臓器でもある。1994年のレプチンの発見を端緒として,脂肪組織が単なるエネルギー貯蔵臓器ではなく,全身の栄養状態と様々な生体機能をリンクする内分泌器官として認識されるようになった。2000年代には,内臓脂肪蓄積が様々な疾患の高リスク群であるという“メタボリックシンドローム”の概念が確立され,医療現場では特定健診・特定保健指導として社会実装された。もっぱら美容上の観点より関心が持たれていた脂肪組織が医療・医学の主役に躍り出たのである。本年はレプチン発見から30年になり,脂肪組織を取り巻く研究領域“アディポサイエンス”は,専門性を問わず多くの研究者が参入する医学・生物学研究のプラットフォームとして学際的な様相を呈している。

 見かけ上,脂肪組織の大部分を占める実質細胞は単胞性の脂肪滴を有する成熟脂肪細胞であるが,2003年に肥満の脂肪組織においてマクロファージ浸潤が報告されて以来,炎症・免疫細胞,血管内皮細胞,線維芽細胞などの間質細胞が注目されてきた。シングルセルトランスクリプトーム解析や空間トランスクリプトーム解析,あるいは最新のイメージング技術により,肥満の進展過程では脂肪細胞と様々な間質細胞の相互作用が時々刻々と変化し,脂肪細胞の肥大化に伴って炎症細胞の浸潤から細胞老化・細胞死,炎症の慢性化,そして線維化へと複雑な組織リモデリングを呈することが明らかになった。一連の経時変化は脂肪組織局所のエネルギー過剰状態に対する恒常性維持機構の破綻病態と考えられ,肥満に伴って脂肪組織は量・質ともにダイナミックに変化するのである。

Ⅰ.脂肪細胞の基礎

脂肪組織とイメージング

著者: 田所慶誠 ,   菊田順一 ,   石井優

ページ範囲:P.543 - P.547

 四半世紀前に世界保健機関(WHO)からメタボリックシンドロームの概念が提唱されて以来,肥満に伴う健康障害,すなわち生活習慣病の増加が深刻な社会問題となっている。高血圧症や糖尿病をはじめとする生活習慣病では,慢性炎症が基盤病態となっており,肥満脂肪組織ではマクロファージをはじめ免疫細胞が多数浸潤している。脂肪組織は長年の間,エネルギーの貯蔵や体温維持,外的刺激の緩和のみを担う間葉系組織と考えられていたが,肥満に伴いアディポカインの産生が亢進していることがわかり,現在では内分泌臓器として様々な分野から注目を集めている。

 筆者らは,これまでに生体イメージング技術を駆使して,生きた組織内で繰り広げられる細胞の多彩な生命活動の一部始終を可視化することに成功してきた。特に,全身の慢性炎症における脂肪組織を観察するにあたって,本技術はまさにうってつけである。本稿では,生活習慣病における脂肪組織の役割や慢性炎症との関わりについて,筆者らが行ってきた生体イメージング研究を紹介しながら解説する。

脂肪細胞の老化

著者: 吉田陽子

ページ範囲:P.548 - P.552

 2型糖尿病(T2DM)患者は全世界で増加し大きな問題となっているが,多くのT2DM患者は65歳以上の高齢者である1,2)。加齢や肥満はT2DMの主要な危険因子であり,これらは老化細胞の蓄積と関連していることが知られている。脂肪細胞の老化が糖尿病などの生活習慣病の病態を制御する機序については,筆者らを含め多くの研究で示されている。また近年,老化細胞を標的とした生活習慣病や加齢関連疾患の治療法の研究が,世界でも精力的に進められている。本稿では,加齢や肥満に伴う脂肪細胞の老化について解説し,脂肪細胞老化を標的とする新たな治療戦略の可能性について触れたい。

脂肪細胞機能のエピゲノム制御

著者: 松村欣宏 ,   伊藤亮 ,   謝詩雨 ,   高橋宙大 ,   稲垣毅 ,   米代武司 ,   酒井寿郎

ページ範囲:P.553 - P.558

 脂肪細胞はエネルギー貯蔵に関わる白色脂肪細胞,エネルギー消費に関わる褐色およびベージュ脂肪細胞に分類される。生活習慣や食習慣などの環境要因は,脂肪細胞の機能を変化させ,代謝の良し悪しを決定し得る。そのメカニズムとして着目されるのがエピゲノムである。エピゲノムは後天的ゲノム修飾とも呼ばれ,環境変化に伴い書き換えられる遺伝情報である。本稿では環境要因が細胞内シグナル伝達を介してエピゲノムを書き換え,脂肪細胞の機能を制御するしくみについて紹介する。また,エピゲノム制御機構への介入が,体質改善,糖尿病や肥満症の予防につながる可能性について紹介する。

熱産生脂肪細胞と酸化還元バランスの関係

著者: 池田賢司

ページ範囲:P.559 - P.563

 エネルギーを貯蔵する白色脂肪細胞に対し,熱産生脂肪細胞が熱産生を増加させ,全身の代謝を制御する役割を持つことがこれまでの研究で明らかにされている。ミトコンドリアの酸化的リン酸化と細胞代謝の副産物である活性酸素種(reactive oxygen species;ROS)は,細胞の生存,増殖,損傷,老化と関連する。近年,脂肪組織におけるROSレベルや酸化還元状態が,肥満や代謝性疾患と強く関連していることが明らかになっている。従来,活性酸素の過剰産生と抗酸化能の低下が酸化ストレスを引き起こし,脂肪増加の一因となる可能性があると考えられていたが,最近の研究では,適度な量の活性酸素が脂肪細胞の分化と熱産生を誘導することが示されている。本稿では,熱産生脂肪細胞と酸化還元バランスと代謝疾患の関連について最新の知見を概説する。

Ⅱ.脂肪組織の慢性炎症・線維化

脂肪組織マクロファージ

著者: 田中都 ,   菅波孝祥

ページ範囲:P.564 - P.567

 従来,脂肪組織は,余剰のエネルギーを中性脂肪として蓄積し,運動時や飢餓時にエネルギーを供給する代謝臓器と考えられてきたが,1994年のレプチンの発見以来1),ホルモンを産生・分泌する生体内で最大の内分泌臓器であるという認識に変わった。それ以降,様々なアディポカイン(脂肪組織由来ホルモン)が発見され,その機能や産生調節機構に関する研究が飛躍的に進んだ。一方,2003年12月に肥満の脂肪組織におけるマクロファージの存在が報告され2,3),脂肪組織における炎症がメタボリックシンドロームの病態基盤を形成することが着目されるようになった。本稿では,脂肪組織のマクロファージについて,特に肥満の脂肪組織炎症との関連について概説する。

コラーゲン線維調節による体脂肪量の規定機構

著者:

ページ範囲:P.568 - P.573

 体脂肪量(アディポシティ)は身体の脂肪組織の量や割合を指し,人によって大きく異なる。非常に痩せた人では5%程度から,病的肥満の場合には40%以上に達することもある。このような個人差は,様々な生理,病態,環境,遺伝的な要因・要素の組み合わせによって決定される。しかし,その調節のための統一された分子機構は解明されていなかった。本稿では,近年,筆者らの研究で明らかにした,脂肪組織のコラーゲン線維調節を介した体脂肪量規定機構について紹介する1)

Ⅲ.脂肪組織由来ホルモン

栄養状態のメッセンジャー“レプチン”—発見,生理,病態から臨床への展開へ

著者: 竹田勝志 ,   田中智洋

ページ範囲:P.574 - P.578

 レプチンは,著しい肥満を呈する自然発症肥満モデルマウス,ob/obマウスの原因遺伝子の解析により,1994年に同定されたホルモンである。レプチンは,もっぱら脂肪組織から分泌され,その作用部位は主に視床下部弓状核のレプチン受容体発現ニューロンであり,食欲抑制とエネルギー消費の亢進の結果,体重減少をもたらす。しかし,肥満症患者や食事誘発性肥満モデル動物においては,体脂肪量の増加を反映した高レプチン血症を呈する一方,これを上回る量のレプチンを投与しても,摂食抑制や体重減少が生じないことから,レプチン抵抗性を生じていると考えられてきた。本稿では,レプチン作用の機序,生理,病態ならびに臨床的意義について解説する。

アディポネクチンによる臓器保護作用

著者: 長尾博文 ,   西澤均 ,   下村伊一郎

ページ範囲:P.579 - P.582

 脂肪組織は,アディポサイトカインと呼ばれる様々な生理活性物質を産生・分泌する内分泌臓器であることが明らかになっている。肥満・内臓脂肪蓄積状態では,tumor necrosis factor-α(TNF-α)1)やplasminogen activator inhibitor-1(PAI-1)2)といった脂肪細胞由来の炎症性,血栓性生理活性物質の産生が増加し,脂肪組織の炎症,インスリン抵抗性や血栓形成へとつながる。一方で,脂肪細胞特異的分泌因子であるアディポネクチンは,抗動脈硬化作用をはじめ,インスリン感受性増強作用や抗炎症作用など,多彩な臓器保護作用を有しているが,肥満・内臓脂肪蓄積に伴い血中濃度が低下する3,4)。最近筆者らは,膜タンパク質であるT-カドヘリンがアディポネクチンと高親和性に結合し,種々の細胞でエクソソーム産生・分泌を増加させ,様々な臓器保護作用に結びついていることを明らかにした(図)。本稿では,アディポネクチンおよびその結合パートナーであるT-カドヘリンを介した作用機構について,筆者らの教室での研究も含め最新の知見を紹介する。

Ⅳ.脂肪組織の機能変容

脂肪組織インスリン抵抗性とMASLD/MASH

著者: 細岡哲也

ページ範囲:P.583 - P.588

 脂肪組織は,摂食と絶食などのエネルギー状態の変化に伴うエネルギー出納とアディポネクチンやレプチンといったアディポカインの産生調節により,脂肪組織と他臓器との臓器間相互作用を制御し,全身の代謝調節に極めて重要な役割を果たす。一方,過栄養や運動不足などが誘因となり,脂肪組織の量的・質的な変化が生じると,脂肪組織が機能不全に陥ることにより,全身のインスリン抵抗性や糖尿病などの代謝疾患が生じるが,脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease;MASLD)/脂肪性肝炎(metabolic dysfunction-associated steatohepatitis;MASH)の病態にも,このような脂肪組織の機能不全が密接に関与するものと考えられている。

 インスリンは,脂肪組織の機能制御の多くの局面で中心的な役割を担っており,脂肪組織におけるインスリン作用障害,すなわち脂肪組織におけるインスリン抵抗性は,脂肪組織の機能不全を惹起する重要な因子と考えられる。本稿では,脂肪組織におけるインスリンシグナルの鍵キナーゼPDK1と下流の転写因子FoxO1経路異常によるMASLD/MASHのメカニズムを中心に概説する。

脂肪組織のHealthy Expansion

著者: 長尾敏彦 ,   宮地康高 ,   小川佳宏

ページ範囲:P.589 - P.593

 飽食の現代において,脂肪組織は肥満やメタボリックシンドロームに関連して論じられることが多く,脂肪組織の増大は生体へネガティブな影響を与えるものとして受け取られやすい。しかしながら,元来脂肪組織は飢餓などに備えたエネルギー貯蔵庫としての役割と,ホルモン産生により全身臓器の代謝を調節する内分泌器官としての役割を担う臓器である。最近の研究により,脂肪組織の増大が必ずしも生体の代謝恒常性破綻に直結するものではないことが示されており,肥満症治療における新たな標的になり得るものとして注目されている。本稿では“脂肪組織のHealthy Expansion”と呼ばれる,代謝恒常性を維持しやすい脂肪組織の増大様式に関して最新の知見を紹介していく。

脂肪組織とグルココルチコイド—脂肪細胞グルココルチコイド受容体とHealthy Adipose Expansion

著者: 大月道夫

ページ範囲:P.594 - P.597

 ステロイドホルモンであるグルココルチコイドは,核内受容体スーパーファミリーに属するグルココルチコイド受容体(glucocorticoid receptor;GR)に結合し,遺伝子発現を制御することによって,その作用を発揮する。慢性的グルココルチコイド過剰状態であるCushing症候群は,肥満,糖脂質代謝異常,脂肪肝などを惹起する。脂肪細胞はこれらの代謝異常に関与すると考えられるが,Cushing症候群における脂肪細胞GRの病態学的意義は不明であった。本稿では,筆者らが作出した脂肪細胞特異的GR欠損マウス(AGRKOマウス)をコルチコステロン投与によるCushing症候群モデルとして解析を行った結果を中心に,脂肪細胞GRの病態学的意義を紹介したい。

Ⅴ.肥満の病態と併発疾患

肥満のエピゲノム制御

著者: 橋本貢士

ページ範囲:P.598 - P.603

 Developmental Origins of Health and Disease(DOHaD)学説とは,出生前後の様々な環境による影響が“記憶”され,成人期における肥満症,2型糖尿病などの生活習慣病の発症および進展を規定するという学説である1)。母体の低栄養が児の成長後の生活習慣病の発症リスクを高めることを明らかにしたDutch famine study(オランダ飢餓研究)をはじめとする疫学研究2,3)や様々な動物実験を用いた基礎研究4-6)がDOHaD学説の正当性を裏づけている。DOHaD学説の分子機構としてエピジェネティクス,特にDNAメチル化による長期の遺伝子発現制御が想定されている。本稿では,胎生期から乳児期における栄養環境が,どのようにDNAメチル化を介したエピゲノム記憶となり,また個々に形成されたエピゲノム記憶がどのように成人期の肥満に影響を及ぼし得るかについて,筆者らの研究知見を紹介する。

肥満と代謝性肝臓疾患

著者: 伊藤美智子 ,   菅波孝祥

ページ範囲:P.604 - P.608

 肝臓は糖脂質代謝を担う中心的臓器の一つであり,肥満人口の増加に伴ってmetabolic dysfunction-associated steatotic liver disease(MASLD)が世界的に問題となっている。本稿ではMASLDの臨床的課題とモデル動物の研究から明らかになってきた肝異所性脂肪蓄積の病態生理的意義について,最近の知見を交えて概説する。

肥満とがん

著者: 添田光太郎 ,   植木浩二郎

ページ範囲:P.609 - P.613

 令和元年の厚生労働省の「国民健康・栄養調査報告」によると,20歳以上の人の肥満者の割合は男性33.0%,女性22.3%に上る。肥満は冠動脈疾患,糖尿病,高血圧,脂質異常症,変形性関節症,睡眠障害,精神疾患など多くの慢性疾患と関連しており,固形がんや血液悪性腫瘍のリスクも上昇させる。本稿では肥満ががんリスクを上昇させるメカニズムと共に,疫学・臨床研究や治療法選択に関する取り組みについて紹介する。

肥満と腸内細菌

著者: 渡邊善之 ,   藤坂志帆

ページ範囲:P.614 - P.618

Ⅰ.肥満における腸内細菌叢

 ヒトの腸管には約1,000種類に及ぶ多種多様な腸内細菌叢が常在し,その数は約100兆個,重さにして1.5kgほどに及ぶ。腸内細菌叢は,腸内環境に適応しながら遺伝,薬剤,栄養素,運動などの生活習慣や病気など,先天的および後天的な様々な要因の相互作用を受け,個々人における固有の生態系を形成している。ヒトの腸内細菌においてはFirmicutes門,Bacteroidetes門,Actinobacteria門,Proteobacteria門の4つの門の菌が主要な位置を占めている。各々の腸内細菌は宿主であるヒトや他の腸内細菌と共生関係を築きつつ,相互に影響を及ぼし合い,様々な代謝産物を生み出す。短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids;SCFA)・胆汁酸などの腸内細菌由来代謝産物は腸管から吸収され,宿主の体内で生理作用を発揮する。その作用はヒトの健康状態にも大きな影響を及ぼしており,腸内細菌叢の恒常性の破綻は,肥満の発症や病態と関連することが明らかになっている。

 近年,解析手法の進歩,特に次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析,メタボローム解析,プロテオーム解析などのオミクス解析による腸内細菌叢の網羅的な研究が世界中で盛んに行われており,腸内細菌叢による代謝疾患への作用が次々と明らかになっている。これらの解析によると,肥満は腸内細菌叢を変化させ,腸内細菌叢は宿主の免疫と代謝に影響を与え,肥満の病因と密接に関連している。したがって,腸内細菌叢への介入は肥満の予防と治療に利用できる可能性がある。本稿では,特に肥満における腸内細菌叢の特徴や役割について概説する。

解説

細胞周期における後戻りのメカニズム フリーアクセス

著者: 小長谷有美

ページ範囲:P.619 - P.624

 細胞は主にG1期において細胞増殖シグナルを感知し,S期へと進行するかG1期にとどまるかの選択を行っている。そしてG1/S期の進行は,サイクリン依存性キナーゼ2(CDK2)-Rb-E2Fのシグナル伝達経路によって制御される。CDK2-Rb-E2Fはポジティブフィードバック回路を形成するため,Rb-E2Fはオン/オフスイッチとして働き,一度E2Fが活性化されるとS期への進行が決定すると考えられてきた。しかし,今回ライブセルイメージングなどを用いて筆者らが行った研究1)から,G1期において分子的中間状態が存在し,細胞は可逆的にG1/S期の進行を後戻りできることが明らかになった。

実験講座

descSPIM—ユーザーアフォーダブルなDIY透明化組織用小型ライトシート顕微鏡 フリーアクセス

著者: 野沢裕貴 ,   大友康平 ,   大村鷹希 ,   洲﨑悦生

ページ範囲:P.625 - P.630

 ギリシア語の接尾辞“すべて(ome)”と“学問(ics)”を組み合わせた“オミクス(omics)”は,ライフサイエンス分野において“生体分子全体の網羅的解析”を意味する造語である。そのなかでも筆者らが提案する全細胞網羅的な情報解析ワークフロー“セルオミクス”は,組織透明化,三次元組織染色,(細胞解像度の)三次元イメージング,三次元画像処理・解析など多くの要素技術により構成される1,2)。本稿では,このうち三次元イメージング技術において,筆者らが開発した高速かつ低価格・低専門性で導入可能なユーザーアフォーダブルな小型ライトシート顕微鏡「descSPIM」の位置づけとその展望について概説する。

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目次 フリーアクセス

ページ範囲:P.541 - P.541

財団だより フリーアクセス

ページ範囲:P.588 - P.588

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.618 - P.618

あとがき フリーアクセス

著者: 栗原裕基

ページ範囲:P.631 - P.631

 新組織学シリーズの特集は,2020年に当時編集委員長を務めておられた故野々村禎昭先生の「年1回ずつ生体の各組織を取り上げ,最終的には現代的な組織学の体系を構築したい」との思いから企画され,「皮膚」,「骨格筋」,「血管・リンパ管」,「骨・軟骨」を経て,今回の「脂肪」が5回目になります。脂肪は一般の人にとっても最も身近で気になる組織ですが,最近では医学生物学研究において大きなトピックスとなっている「代謝」や「臓器ネットワーク」では中心的な存在となり,関連研究が急速に進んでいます。今回ゲストエディターをお願いした小川佳宏先生は,生活習慣病の病態研究を中心とする内分泌代謝学の第一人者として,こうした世界的な潮流を牽引されておられます。本特集では小川先生の幅広いご見識から構想をお願いし,脂肪の組織学の基礎から臨床に至るまで,多くの先生方にご執筆いただくことができました。おかげさまで,この一冊で脂肪組織の構造・機能から病態にわたって,最先端の知見を広く俯瞰できる内容になりました。

 本特集号ではさらに,小長谷有美先生から,細胞周期においてG1/S期の進行を後戻りさせる機構があるという,驚くべき新知見を紹介していただきました。かつて増井禎夫先生が切り拓いた細胞周期研究が,再び我が国の研究者によって新しい展開を迎えることを予感させる成果と思います。ご執筆いただいたすべての先生方に,心より感謝申し上げます。

基本情報

生体の科学

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1883-5503

印刷版ISSN 0370-9531

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