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特集 新組織学シリーズⅤ:脂肪
特集「新組織学シリーズⅤ:脂肪」によせて フリーアクセス
著者: 小川佳宏1
所属機関: 1九州大学大学院医学研究院病態制御内科学(第三内科)
ページ範囲:P.542 - P.542
文献概要
見かけ上,脂肪組織の大部分を占める実質細胞は単胞性の脂肪滴を有する成熟脂肪細胞であるが,2003年に肥満の脂肪組織においてマクロファージ浸潤が報告されて以来,炎症・免疫細胞,血管内皮細胞,線維芽細胞などの間質細胞が注目されてきた。シングルセルトランスクリプトーム解析や空間トランスクリプトーム解析,あるいは最新のイメージング技術により,肥満の進展過程では脂肪細胞と様々な間質細胞の相互作用が時々刻々と変化し,脂肪細胞の肥大化に伴って炎症細胞の浸潤から細胞老化・細胞死,炎症の慢性化,そして線維化へと複雑な組織リモデリングを呈することが明らかになった。一連の経時変化は脂肪組織局所のエネルギー過剰状態に対する恒常性維持機構の破綻病態と考えられ,肥満に伴って脂肪組織は量・質ともにダイナミックに変化するのである。
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