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文献詳細

雑誌文献

生体の科学75巻6号

2024年12月発行

特集 新組織学シリーズⅤ:脂肪

Ⅴ.肥満の病態と併発疾患

肥満と腸内細菌

著者: 渡邊善之1 藤坂志帆1

所属機関: 1富山大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科

ページ範囲:P.614 - P.618

文献概要

Ⅰ.肥満における腸内細菌叢

 ヒトの腸管には約1,000種類に及ぶ多種多様な腸内細菌叢が常在し,その数は約100兆個,重さにして1.5kgほどに及ぶ。腸内細菌叢は,腸内環境に適応しながら遺伝,薬剤,栄養素,運動などの生活習慣や病気など,先天的および後天的な様々な要因の相互作用を受け,個々人における固有の生態系を形成している。ヒトの腸内細菌においてはFirmicutes門,Bacteroidetes門,Actinobacteria門,Proteobacteria門の4つの門の菌が主要な位置を占めている。各々の腸内細菌は宿主であるヒトや他の腸内細菌と共生関係を築きつつ,相互に影響を及ぼし合い,様々な代謝産物を生み出す。短鎖脂肪酸(short-chain fatty acids;SCFA)・胆汁酸などの腸内細菌由来代謝産物は腸管から吸収され,宿主の体内で生理作用を発揮する。その作用はヒトの健康状態にも大きな影響を及ぼしており,腸内細菌叢の恒常性の破綻は,肥満の発症や病態と関連することが明らかになっている。

 近年,解析手法の進歩,特に次世代シークエンサーを用いたメタゲノム解析,メタボローム解析,プロテオーム解析などのオミクス解析による腸内細菌叢の網羅的な研究が世界中で盛んに行われており,腸内細菌叢による代謝疾患への作用が次々と明らかになっている。これらの解析によると,肥満は腸内細菌叢を変化させ,腸内細菌叢は宿主の免疫と代謝に影響を与え,肥満の病因と密接に関連している。したがって,腸内細菌叢への介入は肥満の予防と治療に利用できる可能性がある。本稿では,特に肥満における腸内細菌叢の特徴や役割について概説する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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