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文献詳細

雑誌文献

生体の科学8巻2号

1957年04月発行

文献概要

綜説

尿素の生合成

著者: 上代淑人1

所属機関: 1東大医学部生化学教室

ページ範囲:P.75 - P.82

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 1.古典的学説
 19世紀初頭までは,生物体の構成物質及至その代謝産物は,化学的に合成されず,ただ生物体によつてのみ生成されるという意味から,所謂有機物質という名称のもとに包括されていた。この思想の誤謬が最初に実験的事実によつて指摘されたのは,1828年F. Wöhlerがシアン酸アンモンの水溶液を加熱した際にこれが同分変化して尿素が生成することを発見したことに始まる。つづいてH. Kolbeによる二硫化炭素から酢酸の合成(1845)M. Berthelotによる脂肪の合成(1853)等があり,従来の有機化合物という概念が完全に改められ,当時の磧学A. Kekulé(1829〜1896)をして有機化合物という名称に代えて新たに炭素化合物の化学(Chemie der Kohlenstoffverbindungen,1863)という名称を提案せしめるに至つた経緯は化学史上有名な事実である。
 生体内で,窒素代謝の終未産物である尿素が如何なる過程によつて生ずるかという問題に関しての研究は,後述の1932年Krebs等によるオルニチン回路の提唱以前には,主として臆説の域を出ないのであるが,19世紀頃に認められている説としては次の二つがある。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1883-5503

印刷版ISSN:0370-9531

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