文献詳細
文献概要
綜説
生体膜透過性の研究の最近の進歩—(特にイオン能働輸送の研究について)
著者: 吉村寿人1
所属機関: 1京都府立医大生理学研究室
ページ範囲:P.98 - P.109
文献購入ページに移動 1.まえがき(生体膜透過性の特徴)
細胞膜の透過性の問題は随分久しい前から生理学者のトピツクであつて,細胞の示す静止電位や動作電位等も結局はイオンの細胞膜透過性に関したものである。又生体の物質代謝機構の2大要素である所の腸管からの養素の吸収と腎臓に於ける代謝産物の排泄にしても又組織細胞夫々における物質代謝機構にしても結局は細胞膜透過性の問題である。それが為に古来多数の生理学者によつて研究が行われ,或者は無生物膜の透過現象と膜電位差の関係より出発して細胞膜透過性の研究に進まんとし(Höber,Michaelis,Beutner,Teorell,Sollner,勝),或者は条件の簡単な単細胞動物や植物細胞,血球等について細胞膜透過性を研究し(Osterhout,Jacobs,Ponder,丹野等),更に生物電気現象とイオンの膜透過性との関係を追求せんとするもの(Hodgkin,Nachmansohn其他)等色々の研究が行われた。この様な多くの人々の努力の結果として生物膜の透過性は単純な物理化学的理論によつては解決出来ない問題を含み,細胞の生命現象にむすびついた不思議な特性を具えている事が判つた。それは例えば簡単な赤血球にしても細胞内のイオン組成とその外囲のイオン組成が全く違つている。即ち内部にはK+が多くてNa+が少ないに拘らず,外囲の血漿はNa+が多くてK+が少ない。
細胞膜の透過性の問題は随分久しい前から生理学者のトピツクであつて,細胞の示す静止電位や動作電位等も結局はイオンの細胞膜透過性に関したものである。又生体の物質代謝機構の2大要素である所の腸管からの養素の吸収と腎臓に於ける代謝産物の排泄にしても又組織細胞夫々における物質代謝機構にしても結局は細胞膜透過性の問題である。それが為に古来多数の生理学者によつて研究が行われ,或者は無生物膜の透過現象と膜電位差の関係より出発して細胞膜透過性の研究に進まんとし(Höber,Michaelis,Beutner,Teorell,Sollner,勝),或者は条件の簡単な単細胞動物や植物細胞,血球等について細胞膜透過性を研究し(Osterhout,Jacobs,Ponder,丹野等),更に生物電気現象とイオンの膜透過性との関係を追求せんとするもの(Hodgkin,Nachmansohn其他)等色々の研究が行われた。この様な多くの人々の努力の結果として生物膜の透過性は単純な物理化学的理論によつては解決出来ない問題を含み,細胞の生命現象にむすびついた不思議な特性を具えている事が判つた。それは例えば簡単な赤血球にしても細胞内のイオン組成とその外囲のイオン組成が全く違つている。即ち内部にはK+が多くてNa+が少ないに拘らず,外囲の血漿はNa+が多くてK+が少ない。
掲載誌情報