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特集 酵素と生物 綜説
ウイルス増殖とたんぱく合成
著者: 野島徳吉1
所属機関: 1東京大学伝染病研究所
ページ範囲:P.207 - P.212
文献購入ページに移動私たちがウイルス感染をみようとする場合には,たとえば,タバコモザイクウイルスに例をとると,タバコの葉を人為的に傷つけ,ウイルスをそこえ接触させて感染させる。あるいは,バクテリオフアージに例をとると,感受性細菌培養液に,フアージを混じ,感染を成立させる。さらにまた,動物性ウイルスでは,ウイルスを感受性動物の体内へ,場合によつては直接,感受性臓器へ注入し,感染を成立させる。あるいはまた,組織培養した動物細胞懸濁液に,ちようどフアージの場合と同じように,ウイルスを混じて,感染を成立させることもできる。
このようなウイルス感染細胞を眼前にみると,私たちは,いろいろの問題につきあたる。特定のウイルスは特定の細胞にだけ感染するめぐりあわせをなぜもつのか。感染したウイルスは,細胞のなかでどのような過程を経て,子孫をつくり出していくのだろうか。そして,感染された細胞は,正常細胞とどのようなちがいをもつのだろうか。その他等々。これらの疑問に答える材料を,現在ほんの少ししか,私たちはもちあわせていない。第一の疑問についていえば,大腸菌に特異的に感染するT系フアージはオタマジヤクシ状をしているが,感染するさい,その尾部が,菌体表面に存在するリポー多糖体をふくむたんぱくと結合することはわかつている。
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