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雑誌目次

雑誌文献

病院1巻2号

1949年08月発行

雑誌目次

病院の向上

著者: 東龍太郎

ページ範囲:P.1 - P.2

 私が厚生省に入って,一番最初に司令部の方から指示を受けました事は,遇然にも病院の運営に關する事柄でありました。それは某国立病院について,その地方の軍政部から総司令部公衆衛生福祉部長宛に,その國立病院の管理運営が頗る不充分である,即ち病院の内外の清掃とか整理とかいう点について,再三注意を與え,また時々勧告したのであるが,少しもそれが改善せられない。またそういうふうな指示に対して,誠意をもって改良しようというような意志さえも認めることが出來ないということでありました。即ち國立病院の管理の責任者である院長が,その職責を完うするには不適格な者がいる。従って速に有能な誠意のある適当な院長と交代せしめる必要がある,というような極めて強い勧告であったのであります。

 私も初めて医務行政の責任者という地位に立って,その就任後数日にして最初にぶつかったのが,以上のように病院の管理運営ということであったのであります。当時はまだ,國立病院の実態を見る暇もなく,従いまして國立病院,國立療養所等國立医療機關について充分の認識も理解ももっていなかったのであります。けれども,この一事にぶつかって,非常に多数の病院,療養所を抱えている私としては,これは大変な大仕事であるということを切実に感じた訳であります。その時以来,病院の管理運営ということは独り國立病院のみならず,全國の官公私立,あらゆる病院にとって重要なことで,病院を監督指導する地位にある医務局長としては一方ならぬ大仕事であるということを痛感したわけであります。

病院管理と醫療の目的

著者: 坂口康藏

ページ範囲:P.3 - P.5

 如何なる事業に於てもこれに従事するものが皆その目的を正確に且つ明瞭にしっかりと把握し協力一致全力を盡して努力する事が最も大切であって,従事者の努力が不充分であり,或は協力に欠ける処がある場合,その能率の擧がらざる事は当然で特に云ふ迄もないが,私が敢てこゝに一言致し度いのは病院管理を行ふに当ってその目標を誤らざる事である。

 何事を爲すに当ってもその目標を誤った場合渾身の努力も全く無駄骨折となるに過ぎぬのみならず,往々却て世に害毒を流す事さへもある。病院は医療を行ふ處であり,その目的が円滑に且つ最も理想的に達成せらるる爲に管理方法の研究が必要となるのである。病院の種類即個人病院と公共的病院,又後者中でも官公立病院と組合病院とではその対象とする患者や経営方法に多少の差異があるのでその管理上個々の点に就ては多少そのやり方を異にせねばならぬ処もあるが,その管理の手段に心を奪はれて病院本来の使命である医療の眞目標から逸脱した方向に舵を取る事のないよう日常絶へず心がけて居らねばならぬのである。

病院と管理(その2)

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.6 - P.10

目次

6.病院運営の目的

7.病院運営とその組織

8.科學的且つ適正な診療

9.病院開設者,病院管理者及び病院医師の法律的義務

10.病院組織上の開設者,管理者,医師の關係

[座談會]病院管理の問題

著者: 坂口康藏 ,   河野鎭雄 ,   栗山重信 ,   吉田幸雄 ,   守屋博 ,   島内武文 ,   久松榮一郎 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.11 - P.21

 久松 御挨拶申上げます。私の方で今度「病院」という雑誌を企画いたしました。日本の病院はなんと云いますか,ほんとうに欧米の病院と比較して發逹がおくれております。それにつきまして,この度アメリカが進駐してまいりましてから日本の病院についても相当に改革的な意見が出まして,病院は変ってゆくという段階に入って來たようであります。ところが病院を良くしてゆくということは肯れるのでありますが,その中味になる病院をいかに管理すべきか,病院というものがどうなくてはならないかということについてはまだ勉強してゆかなければならないと思います。その病院の管理ということに対する新しい方向に医学的経験が産出されてゆかなければ日本の病院の發達はなかなか軌道にのってゆかないのではなかろうか,それにつきまして雑誌を通じて,病院の管理の衝に当っておられる方ないし病院に勤務している方,病院に關心をもたれる一般の方に対しまして多少ともお役に立つものができれば非常に幸と考えまして,「病院」という雑誌を計画したのであります。

 それにつきまして本日はお忙しいところを諸先生においでいただきまして病院管理をめぐる座談会を催すことにしたのであります。なんと云いましても病院の管理ということが中心でありますからこの問題を取上げたのですが,今日の座談会は坂口先生に座長のお役目をお願い申し上げたいと存じます。

病院と醫療社會事業—生活保障としての醫療(その2)

著者: 千種峯藏

ページ範囲:P.22 - P.25

 我が國で,今急速に展開しようどしている医療社会事業にづいて,私はさきに,その順調な発展を期するには,そして,決して形式的な存在に堕することのない樣にする爲めには,実力あるケース・ウォーカーの養成と併行して,現在の病院当事者,わけても医師に対して,医療社会事業の必要性を,しっかりと会得して貰わなければならないと述べた。

 医療は現実に行われて居つて,個人の幸副の爲めにも,又,國民の福祉の爲めにも,大きな貢献をしていることは,何の疑も無い事実である。それにも拘らず,現在以上に医療の完途を圖らなければならないということは,如何なる理由によるのであろうか。換言すれば,現在の医療には,如何なる不完全があると言うのであろうか。

病院經理の理論(下)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.26 - P.29

B定期報告

 前記の通り,経営分析は,経営の結果を判断し以て將來の経営管理に対する指針を得んとするものであるが,現に進行中の経営に対して其の指針が必要である。この目的のために各種の中間報告が用いられる。中間報告の中には管理者から隨時に要求されるものと,定期に調製されるものとがある。この定期報告の中,財務管理上必要なものは會計定期報告である。

 會計定期報告の主なものは(1)現金比較報告書(2)豫算と實經費との比較(3)部門別豫算と實經費との比較(4)部門別消費量統計等である。このような報告は該期間の病院活動が效率的に運營されたか否かの判斷に對して健全な根據を提供するものである。勿論效率の問題は比較的なものである。前年同期に此べて經費が減少しているという事實は一般に滿足を以て受け入れられる。しかしながら部門別計算によつて示された基本數字及び單位經費が前年同期と比較された場合,仕事の分量が相當少いことが發見されるかも知れない。又其の縮減は單に物價下落によつてのみもたらされたものかも知れない。故に單に項目別に全經費を報告するのみでは不充分である。消費量の發表は最も重要である。物價下落は浪費を隱蔽することがある。故に財務に對すると同様に消費が冷嚴な統制下におかれることが必要である。

病院夢物語・ローカル・ホスピタル

著者: 久松榮一郎

ページ範囲:P.27 - P.27

 困りきつている我國の現状に於て,病院に対し虹の樣な夢を描くことは眞におこがましいことであるが,夢は又一つの進歩を促すものではないかと思つて敢て筆に汗をすることにした。

 病院の配置の問題であるが,人口10万位につき100床程のローカル・ホスピタルが欲しい。其の上級として人口100万位に300床乃至500床のセンター・ホスピタルが欲しい。

看護婦教育について

著者: 保良せき

ページ範囲:P.30 - P.32

 昭和23年保健婦助産婦看護婦法が法律203号を以つて國会を通過した事実はいまだかつて無い日本の看護職業が進歩発展の最大な機会に直面したと云へます。戰前の束縛が去り婦人を押へる手が除かれ,婦人が凡ての美質教養,そして良い,判断を以つて,自からを澄明する事が出來るやうになつたのであります。

院長室の整備

著者: 守屋博

ページ範囲:P.33 - P.35

 病院の中枢は院長にあります。従って,院長の性格は直接,病院の空気に窺れます。病院の空気は一歩玄關に入った時感じられますが,此は従業員に会つた時に,それが看護婦であろうと,掃除夫であろうと,院長を中心にして堅い團結を作つている時には必ず形になって現れている物であります。時によると院長でない人が中心になつてよくまとまつている事もありますがしかし何となくちぐはぐな感じを受けるものであります。

 近代病院はよく,高等動物にたとえられますが,此が有機的に活動するには,意志の中枢である院長が健在でなければなりません。一時代前の病院や極く小型の病院では,必ずしも中枢的の機能統制はなくともある程度の活動は出来ますが何百と云う従業員をもつて一糸乱れず活動するには何といつても中央の健全が第一條件です。

外國の病院建築設計について

著者: 吉武泰水

ページ範囲:P.36 - P.42

 外國の病院建築と云っても我々の目にふれるようなものは勿論一流或は一流に近いもので,外國でもかなり低いレベルのものもあることは勿論でしょう。しかし全般的に我國のものと比較するときも,尚そこにかなり距離があることを認めざるをえません。経済的條件や,技術的水準の低さもたしかに一因で,特に設備やメカニゼーションの問題も大きいと思いますが,もっと根本に設計に対する考え方や,設計し方のうちにより決定的な立ちおくれがあると思います。これはひとり病院のみでなく,他のあらゆる建築についても小数の例外を除いて云えることであります。

 §1は不充分ながらこの點をのべました。§2は最近外國雑誌に出ているもののうちから二三をひろつて紹介し,§3では文献をあげて簡單な説明を附し,御参考に供しました。内容の木備やあやまりについては何卒御批判,御教示をいたゞきたいと思います。

醫療従業員と勞働基準法

著者: 中村一成

ページ範囲:P.43 - P.44

 昨年の12月3日國家公務員法の改正が施行される迄,國立病院,療養所の人事管理に當つている我々が苦勞した問題のなかで,勞働基準法による勞働條件に關するものが大部分であつた。此處に現在勞働法規の適用を受けている一般の醫療施設の方々に勞働基準法の一端を述べてみたい。

 勞働法規に所謂勞働者とは,職業の種類を問わず,賃金,給料その他之に準ずる収入に依り生活するものを謂い,醫療従業員も勿論勞働法規の保護を受ける譯である。

醫療制度えの課題

著者: 中尾仁一

ページ範囲:P.45 - P.47

 医療法が吾國医療制度のあり方の基準を示すものとして新しく施行されて以来,漸く準備期間を過ぎて実施の時期に入つて來た。今後の医療制度は如何にあるべきかという課題に対しては,同法の精神を正しく理解して,実情に即して充分な檢討が加えられ,最も適切な運営をはかることが解決の根本であると考えられる。同法には病院を医療の中心として大きく採りあげ,その責務や,設備,人員等についての必要な規格が定められている。完全な医療は病院において行われるべきであつて,病院と診療所の性格がはっきり分けられ,診療所に対しては患者收容についての48時間の制限を設けている。これは今までの吾國の医療制度に対して,正に劃期的な新方向を示すものであつて,その切り換えに対しては周到な計画が樹てられ最も適節な措置が講じられなければならない。考えられることは医療機關の整備,すなわち病院の適正な配置と必要な病床の充実が第一であり,診療報酬の再檢討も必要であらう。更に一般開業医に対しては,そのあり方を正しく指導する必要があり,特に病院との結びつきについては一層の考慮がはらわれるべきである。

病院統計

著者: 厚生省医務課

ページ範囲:P.48 - P.56

都道府縣別經營別病院施設調

(昭22,9,1,現在)

病院統計について

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.57 - P.58

1)こゝに示した病院統計は昭和22年9月1日現在の状況を,厚生省醫務局が各都道府縣の衛生部醫務係を通して調査した結果であつて,現代使用し得る最も完全なものである。

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醫務局長東先生の一齣

著者:

ページ範囲:P.10 - P.10

 先生は厚生省の局長になられてから,もう3年になる。敗戰後の混亂をのりきり,拡大された厚生行政の勘どころも,すっかり掌の中にしまつてゐられる。部下の各課長逹も先生の人格と頭脳にすつかり私淑してゐる。先生の爲ならどんな苦労もいとわないと云ってゐる。スポーツマンとしての明朗性とファイトは,じめじめした医務行政をより明るくし,落ち着いた力をもつて,理想に向っで推し進めてゐる。而も何處にも敵を見出すことが出来ない。

木賃ホテル病院

著者:

ページ範囲:P.21 - P.21

 おやじの病気は一向よくならない。村の先生に容体を聞いても一向はつきりしない。むすこが一日野良を休んで,町の病院まで診察につれて行った。結果は入院しなければいけないと云われた。そこで蒲團は勿論のこと,鍋,釜,まき,炭,米,味噌,野菜など牛車につみこんで,5里の山道を運んで行った。おやじとおつかあは車の上で,むすこは車の前に立って引綱を引いて行った。

 おつかあは今日から病院で新世帯を始める。よくしたものでこの病院は,大勢で而も個々に炊事が出來るように万事都合よく出來ている。

看護婦さんの見た病院管理の改善すべき事項

ページ範囲:P.25 - P.25

 こゝに集めたのは「看護學雑誌」の爰讀者である看護婦さんたちに「病院管理について改善すべき事項」について質問して得られた主な意見である

編集後記

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.59 - P.59

 日本の病院の発展に寄與しようとして出発した本誌は,病院の運営,管理に必要な知識の提供は勿論,病院に關する各方面の声もとり上げて,社会の人と病院の人とのお互の理解を深めることも考えて編集して行くつもりです。つまりこと病院に關することは本誌を見れば何でも解つて頂けるということをモツトーとしたいと思います。創刊号を作る当時には,日本にはその方面の専門家が殆どいないから,はたして月刊でやって行けるだろうかあやぶまれました。然し,どの執筆者も特に御多忙の方ばかりであるに不拘,原稿をお願いすると喜んでお引受け下さつて,而もその内容はどなたも同様に感銘されるような病院に対する深い熱情を感じます。ということは当然必要なものであつたに不拘,今迄発刊されなかった事が不自然であつたものでせう。従って本誌の責任が重大であることを改めて痛感しております。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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