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名醫の心—柴 豪雄博士ヘ
著者: 大野光義1
所属機関: 1時事新報社
ページ範囲:P.21 - P.23
文献購入ページに移動ほんとうに偶然な機会に先生を知り得ましたのは,それは今から十年まえの昭和十五年の十月十三日のことでした。私は新聞社の編集局の椅子にもたれて,その月の文藝春秋を拾い読みしていますと,不圖,呉健博士の随筆集“池の素描”の廣告を見たのです。霊感のようなものが催して,この出版のかげにうるわしい師弟愛を彩るニュース・ストォリーがあると思い,直ぐ文藝春秋社へ電話しますと,あれは呉内科の柴さんが,“直接編集を担当されたものですから・・・”とのことで,あの時,早速先生へお電話をしたのでした。今日も私の感銘は,先生はその際ご不在でしたが,二時間程銀ブラして社へ歸って來ますと,態々先生からのお電話があったと言うのです。世間の通例では私共のそうした仕事の場合に,社の電話番号を言い置いて返事を求めないかぎりは先ずないと申してよいのです。この時くらい未見の先生に鋭く人間味をおぼえたことはありません。
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