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醫療機關と都市と農村と
著者: 佐藤正1
所属機関: 1日赤本社衛生部
ページ範囲:P.5 - P.7
文献購入ページに移動ところで比較的最近までの傾向であるが,衛生施設特に医療施設の発達は,近代資本主義の発展と形影相伴うの状勢にあった。もともと衛生施設の整備や充実は,生活条件の向上や生活環境の改善が必然的な要約であるから,或る学者の論じたように,それらの整備は王侯や貴族や富豪の富裕生活の影響に俟っものが非常に多かったのである。都市に於ける衛生施設の充実は,産業革命のような時代的な動きによって左右されたことも勿論であるが,それも帰するところは,都市に於ける生活条件の向上が資本主義の発展を促した大いなるモメントであったことを考えると,都市の衛生文化の隆昌は,資本主義の発達によって基礎づけられていたと考えるのが一応の定石であろう。我国に於ける医療問題が過去に於て喧しく論じたところの医療機関の分布の問題,医師の地理的分布,開業医制度の問題などは,一応も再応も,この近代質本主義に見られる社会的,経済的な要素を度外視することはゆるされぬのである。
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