icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院10巻3号

1954年03月発行

雑誌目次

--------------------

労働問題と病院について

著者: 石館文雄

ページ範囲:P.2 - P.3

 筆者に課せられた「労働問題と病院について」という標題は非常に広範でしかも多岐にわたる内容を有しているから,到底茲にそれらを論じ尽すことは出来ない。何故ならこの問題について考える人の立場や問題を観察する角度によつて違つた結論が導き出せるからである。
 例えば,この標題の下に論ずるにしても,現在我々の身辺に生起し複雑に色彩を変え乍らしかも相互に影響し合い乍ら流転しつつある労働情勢の流れの中で,病院は如何にこれに対処すべき社会的任務があるのかとか,労働問題と病院とはどんな所に接触点がありそれを通じてどのように互に他に影響を与えているかとか,将又病院に特有な労働問題は何であり,それを解決するにはどうすべきかとかその他種々の分析方法があるのであつて,それらのどれが茲に要求されているのか標題からだけでは判然としないのである。

入院患者の寝具—眼でみる病院の設備とはたらき(1)

著者: 橋本寬敏 ,   瀧野賢一

ページ範囲:P.23 - P.32

 昨今わが国には病院の改善の気運がたかまり,全国いたる所の病院の管理経営に当る人々が苦心して居る。その参考に供するために,眼で見て,すぐ解るような,具体的の解説を写真を示してやつてみる。
 従来,わが国には入院患者に対する寝具,食物の供給と看護は病院が責任をもたずに,家族にまかせる習慣が永年に亘つてあつた。しかしこれは医療を完成するには極めて重要な因子であるので,これを病院自らが責任をもつて実行しない限り,病院だとは言われない。

病院史概説(1)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.33 - P.37

I.ギリシア
(1)ギリシヤ文化のおこりと病院の始
 ギリシア人はインド・ヨーロツパ系の人種であつて,前20世紀頃より次第に南下し,ペロポネソス半島及びその附近の島々に定住したのは前10世紀頃であるといわれている。
 これより先世界最古の文明は古代オリエントに生れ,エジプト,及びメソポタミアに栄えたのであるが,これがエーゲ海を中心とする地方に受継がれ,前16〜17世紀の頃エーゲ文明として降盛を極めた。ギリシア人はその文明を打亡ぼして彼等の定住の地を得たのであつて,この先進文明の基盤の上にギリシア文化の華を咲かすことが出来た。

病院PRについて—(第1部) PRの概念及び病院とPR

著者: 今村榮一

ページ範囲:P.38 - P.41

 PRという言葉は最近しばしば耳にする。会社や商店がPR運動をするとか,官公庁では広報というPR的なことをしているとか,PRカーとかいろいろある。これを受けとる側の大衆もははつりきとしたことはわからなくともPRとは広告や宣伝の形の変つたものだろうくらいに理解するようになつて来た。ここで病院PRというものを目新しく取り上げたのは,この気運に便乗したわけではなく,PRの本態を考えると病院においてもPRの必要性が感じられたので,病院管理の一視野として「病院PR」として考察を試みようとした次第である。この中には病院の広告問題にも関聯するものもあり,なお検討を要することは多々あるのであるが,ひとまず形をととのえて問題を提示し,各方面の御教示を賜わりたいと思う。内容は1.PRの概念 2.病院とPR 3.病院の内部PR4.病院の外部PRに分けて述べようと思う。

病院事務管理(5)—事務制度

著者: 三澤仁

ページ範囲:P.43 - P.46

管理者と事務
 一番ハジメに「病院事務とは,広くいえば病院の本業に秩序と統制とを与えるシゴトであり,狭くいえばその秩序と統制とを与えるシゴトのための資料(または道具)を提供するシゴトである」と申上げた。この広い意味の事務が院長を筆頭とする管理者の行うべきシゴトであり,狭い意味の事務がいわゆる事務員の行うシゴトになるワケである。
 この資料や道具を何に使い,どう活かしていくか,これが管理者の本務であるコトはムロンだがどういう資料や道具が必要かを部下に指示し,その集め方,まとめ方を決定するのも管理者のシゴトである。部下の作つたオシキセに,ただハンコを押したり,単なる思いつきで資料を取つたりするコトは管理者の名に値するモノのやるべきことではない。

Dr. Hara's Recordtape

著者: 原素行

ページ範囲:P.47 - P.48

(6)小児看護の問題
 「この頃日本の病院では小児患者の入院に際して母親等の附添うことを拒んでいるが,それは占領当時アメリカから強制的に教え込まれたことだ。この頃アメリカでは患児に母親が附添つている。占領軍の衛生当局者の頭は既に旧式であつた。」と云うことを聞くことがある。そして「日本で嘗つて患児が母親附添の下に入院していたのは正しかつた。」と結論を出す人もある。
 子供は母親なしでは育たないという事は間違いのないことである。この原則を根拠として「この頃,アメリカでは…」と云つて母親の附添つた時代を礼讃する声も時時耳に入つて来る。この理論のうちに,日本の看護婦には小児看護が出来ないから母親に看護させた方がいいと云う事が含まれているのなら話はわかり易いと思うが。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.53 - P.54

 1月26日(火)より2月25日(木)まで1ヵ月間に亘つて昭和28年度第二期研修科が開催されました。出席名は15名で,内11名は医師,4名は事務長,医師の内2名がカトリツクのサナトリウムの団長の尼さんでした。講義はぎつしり充実していましたが全員非常に熱心でありました。病院の種類も上記サナトリウムのほか国立病院,国立療養所,県立病院,市立病院,労災病院,私立病院と多種多様でありましたが,クラスもよく纏つていました。守屋主事のサジエスチヨンもあつたのですが,開講後まもなくクラスの中から民主的に総代,副総代及び書記が選出されて色々な世話をやいたり,研修所側と講義の内容ややり方について交渉したりしました。従来講義終了まぎわに感想録の提出をもとめて後の講習の参考とすることは行つていましたが,今回の様に一週間が経過した所で受講者側からこうした意見が提出されたことは始めてでありまして,後の講義に大変参考になりました。
 従来の長期研修科の経験では講義の前半では受講者側からある種の抵抗を感ずると言うのが講師の側の感想でありましたが,今回はあまりそうしたこともなく,始めから研修所の理念に同感される向きが多い様でありました。これは来られた方々の性格にもよることと思いますが,やはり一般的に病院管理に対する認識が次第に改まつて我々の考えたり話したりしていることが世間に通用する様になつて来た為であろうと嬉しく思いました。

病院管理文献(3)—病院管理研修所編

著者: 岩佐

ページ範囲:P.54 - P.56

Hospital Abstract Service分類項目
① Administration
i) Organization and Personnel
Departmental Controls Form of Organization SafetyVolunteers

あとがき

著者: 小西

ページ範囲:P.58 - P.58

 自然は正直だ。別に規則や法律がある訳ではないのに,3月の声をきくと,まだ裸のままの庭の樹々も何とになしに春の息吹きを感じさせ,草花の芽がやわらかい土から頭をもたげる。然しこ,んなことを書いていても今年の気紛れ気象のことだから,明日は大雪,ということにもなり兼ねない自然界の御乱行振りである。まさかこれをまねた訳でもあるまいが,人間界も汚職ブームでもちきりでお,る。医業は重箱の隅をつつく様な監査をうけたり,零細な收益に対する課税に頭を痛めたりしているが,今村氏の云う様に,今日の社会で病院ほど「善意」に固つて活動が行われている所はない様な気がする。
 今次国会の二大テーマとして,警察法の改正と教員の思想調査が挙げられている。このもの自体の是非は別として,我が国の社会は何か見えない強いゴム糸でグングン旧態に引ずられつつある様な気がする。一寸油断をすると一足飛に元の杢阿彌にハネ戻り兼ねない。医界にもその兆なしとは云えない。Dr. Haraは新生児室の問題に籍口して警告を発して居られるが,今日の医界で正面を向いて途ら前進しつつあるのは病院関係者のみではなかろろか。歴史は繰返すというが,徒らに元の姿に戻つてしまうのでは芸がなさすぎる。進歩する社会というものはスパイラルを登る様なものだと云われる。岩佐氏によれば,紀元前のギリシヤのポリスは現代の社会機構と酷似し,病院も類似的性格をもつていたというが,それは同一の物ということではない。

鼎談

病院と麻酔

著者: 榊原阡 ,   山村秀夫 ,   守屋博

ページ範囲:P.4 - P.19

 守屋 今日は一つ山村さんに麻酔に関していろいろお訊きしたいんですが,従来いろいろなところでお話しなさつていられるから,今日は方面をかえて新しい麻酔方法を病院が如何に取入れるかという点を中心に一つお話を伺いたいと思います。
 現在の日本の病院では従来の古い考え方が根づよくゆきわたつている一方,戦後アメリカ的な麻酔の専門家というものを入れた,麻酔の組織というようなものを取入れようとしているんですが,なかなか経済面或は組織の面,特にドクターが慣れていないというせいもありますが色々問題がある様です。それについての利害得失については討論したことありませんね。今日は日本中の外科医の中で,一番いい麻酔を必要とする仕事をしておられるという意味で,榊原先生にきていただいて山村先生と対談して頂きたいと存じます。山村先生から先に組織についてどういう点が一番違う点であろうか,まずその点を説明していただけるといいんですが……。

病院長プロフイル・10

人格高潔至誠の人坂口康藏氏(国立東京第一病院長)

著者:

ページ範囲:P.42 - P.42

 国立東京第一病院長兼厚生省病院管理研修所長の博士は今日既に医学会の大御所であり,その意味での紹介は無用というところだ。東大名誉教授であり,かつて恩賜賞をうけ,内科,結核,内分泌,消化器病各学会の会長,会頭を歴任し,貴族院議員・学術研究会議員・厚生関係各審議会委員等として名実共に国手として活躍されている。
 つとに助教授時代警察病院の創立に際してその院長に招かれ,又赤十字病院の管理に関係し,稲田教授停年後の医局の懇望の下に教授就任,日ならずして東大附屬医院長におされ,つづいて医学部長に転じた。院長当時給食部の改善は博士の経理の才を示すものであつた。昭和21年停年後も国を東京第一病院長として,内にかつての陸軍の中央病院の一般病院転換と管理の近代化につくし,外に占領政策の矢面に立つてこれに処し,今日の多士済々たる天下の東一をつくりあげた。

讀者の声

病院経理システムの一考察—カルテ中心の請求事務を伝票中心に

著者: 加藤明史

ページ範囲:P.49 - P.50

 従来どこの病院でも保険診療の請求洩れが多少なりあつたことと思われる。又注射薬の薬局倉庫から各科へ渡つて後の行方について確認することが困難であつた。この二つの欠点を除く方法はないか考えて別図の如き方法を考案した。
 既ちカルテ中心の請求事務を伝票中心に改め,伝票記入と注射薬消費とを結びつけ ①請求の正確化 ②注射薬在庫の適性化 ③注射薬の横流れ防止の三利点を有する方法と考える。

インターンの頁

インターン問題最後の大詰へ

ページ範囲:P.52 - P.52

 医学界・教育会において論ぎの約となつていた,インターン問題も昨秋の実地修練部会の意向に基づき改善存続と決し,厚生省が総額2億にのぼる29年度予算を要求したことによつていよいよ大詰に来た感がある。同予算案は目下大蔵省における査定をまつ段階にあるが,本制度の円滑な運用のためには予算の確保が喫緊の要務であり,その結果が注目される。
 つぎに咋秋来のインターン制度に関にする諸問題を順を追うて掲げる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?