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雑誌目次

雑誌文献

病院10巻5号

1954年05月発行

雑誌目次

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48時間制と病院

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.2 - P.3

 終戦後に行われた医療保健体制の改革は古い習慣を思い切つて打破して,飛躍的の進歩を促した点では有意義であるが,占領軍の圧追の下に企てられたので,無理なことも多く不快を感じたことも少くなかつた。女名の颱風,旋風が院長を苦しめたこともあつた。
 医療法が新に制定されて,病院の機構,設備の改善に寄与したことは確かだが,有床診療所に患者を8時間以上おいてはいかんという制限は誠に無理なものだつた。20床に満たない診療施設の多くは,個人開業医の経営するものであるから,資力にも限りがあり,診療設備も職員も不十分であつて,徹底した病院診療はできないから,『患者を暫時宿らせるに止めて,なるべく早く,診療の設備と人手の充実した病院に移せ』という趣旨なのだつたらう。

伝票制度の解説

著者: 中沢恒三良

ページ範囲:P.4 - P.16

緒言
 医療に要する費消材料の使途が明確にされ,診療報酬の請求が正当に行われることは,病院会計上重要な事柄である。医療用材料を費消する病棟治療室と,報酬請求事務の行われる場所が距つておること,診療業務に携わる人が多いこと等が原因となつて,事実上,上記の業務は実現が困難な業務の一つである。大病院になればなる程その困難性は増大する。診療業務と記録,職域間の連絡が確実に而も円滑になされることが要求されるが伝票制度はそれに応えるものといえよう。
 従来の慣例によつて行われている材料費消請求業務は,両者ともその大部分を医療従事者に依存していた。診療に材料を費消すれば記録をつける,記録にあれば請求のための集計は可能であろうということで,医療従事者がこの集計業務を分担させられ,苦しんでいた。これを伝票制度に切換えることにより,会計のための業務分担がなくなり診療行為を報告するための伝票発行の責任のみとなり,釈然とした気持で事務負担の軽減を,それだけ診療に振り向けることが出来るようになつた。近時この制度が各地で研究され,統計にも利用されることがわかり,その価値が認められて,病院管理に必要な制度と見做されるようになつて来た。当埼玉診療所に於ては伝票制度を採用してから既に1年半を経過したので,得た経験を纏めて解説として発表することとした。

米國病院内に於ける病理部門活動及び基礎部門の調査研究

著者: 竹內正

ページ範囲:P.19 - P.22

I、緒言
 第一報告に於て病院内の病理部門(主として病理組織検査部門)の活動と病理学者の責任について述べたが今回は病理学者が主催又は参加する院内院外の諸種の会合について報告する。

完全看護—眼で見る病院の設備とはたらき(3)

著者: 橋本寬敏 ,   湯本きみ ,   瀧野賢一

ページ範囲:P.23 - P.45

まえがき
 入院した患者の看護は家族や素人の附添婦にまかせないで.医学に基く科学的な看護を病院が責任を持つて完全に行わなければならない。
 完全看護とは病院の看護婦が主治医から託された入院患者の身のまわりの世話を一切引きうけ,絶えず病状,経過を観察し,医師のたてた方針に従つて手当をし,又療養についての教導をする役目を十分にはたし,患者の健康回復を促進することである。

完全看護への道程—国立小倉病院

著者: 尾村偉久

ページ範囲:P.47 - P.51

まえがき 本稿は福岡県にある国立小倉病院が約700名の入院患者と,約500名の外来患者を擁し,戦時の木造仮設的な,散在病棟から出来上つている最も不能率な配置にある病院を,全職員の苦心と,患者並に関係者の協力によつて,一挙に宗全看護の態勢を確立した苦心談である。恐らく我国の相当数の病院は,本病院と五十歩,百歩の粗末な,能率悪く出来ているものが多いが,それらの病院の,完全看護実施計画について参考となれば,小倉病院の苦心に対して,何よりの名誉であると思う。

病院史概説(3)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.53 - P.57

III.ローマ
(1)紀元前のローマと医術の蔑視
ローマの歴史は中部イタリアのチベル河畔に起つた,ささやかな一小都市国家がイタリア半島を統一し,進んで地中海世界全体をその支配下に置いた歴史であり,オリエントを含むあらゆる古代文明を統合して,これを世界に拡め且つ後世に伝えた点に最大の意義がある。従つてここではギリシア文化の継承と,キリスト教の勝利とが重大な影響をあたえているのであるが,我々はまずそれ以前のローマから考察を始めることにする。
大ローマを建設したのはギリシア人と同系のインド—ヨーロツパ民族の一派で,前1700年頃北方から中部イタリアに侵入したラテン人であつて,伝説によるとトロイ戦争の勇士の子孫であるロムルスが,前753年ローマ市を建設し王政を始めたとされているが,当時はバビロニア系のより高度の文明を持つていた北方のエトルリア人の支配を受けてローマの都市を建設した様に思われる。しかるに前6世紀ローマ人はエトルリア人の王を追つて自立し,共和政を始めたのであつてここに真のローマが誕生した。当時のローマ社会は氏族制度であつて,宗全な市民権と自己に従属する附庸民(Clientes奴隷)を所有している,少数の貴族と貧困な平民(Plebs)とからなつていた。市民の名に値するものは貴族のみであつて,彼等はギリシア人の奴隷の内から医療の心得のある者を撰んで,自分や家族や他の奴隷達の疾病の治療を行わせた。

Dr. Hara's Recordtape

著者: 原素行

ページ範囲:P.59 - P.61

(12)「病院の特色」という事から派生する問題
 世上の常識から云えば,病院にも夫々特色があつてもいい筈である。この場合にはA+αという公式が成立する。そして,この特色とは高度の医療設備を意味し,Aは基準の線に達した病院という事で,病院格付の4項目共にA級でなければいけない筈である。然しここで私が心配することはA+αでは(A−β)+αという病院であつたら,どうなるということである。我が国では「病院というものは……」ということが案外にも無関心に看過されて,只々+αという事の方がその特色としてヤンヤと歓迎されていた傾向があつたらしい。否今尚ほ世間ではそのようである。勿論患者の幸福の為めに高度の医療設備は非常に重要であるからαを非難するのではないA−βでも何等差支えがないという世間の考え方に私は疑問を持つのである。
 日本の病院史の足跡を辿ると,病院が診療所的性格を帯びて誕生した為めに(A−β)は当然な事であつて,+αの方に重心が掛つていたことは無理もないと云えよう。そして,之れが日本華かなりし戦前までの話であつたが,今日のような貧乏な日本ではいや応なしに考えさせられる問題となるのではあるまいか。

病院長プロフイル・12

病院経營合理化運動の選手高橋敏行氏(新潟県立中央病院長)

著者: 小沢龍

ページ範囲:P.46 - P.46

 病院経営面で最近特に売出した人々のなかで高橋敏行博士はその名を逸することは出来ない1人であろう。経営の合理化に対する氏の熱情は新潟県立10数病院の指導的立場から進展して,他府県立の病院に及び始めたからである。
 昭和5年1月京都大学の辻内科に学んでいた博士は聘せられて新潟県高田市にある財団法人高田病院内科医長となり,半歳にして副院長に就任,昭和10年以降院長として今日に及んでいる。

病院設備の研究

床材としてのカバリウムについて

著者: 岩橋好一

ページ範囲:P.61 - P.63

1.床材について
 床材は非常にむづかしい建築材料に属します。室内装飾と同時に歩行に堪え得る強靱性をも保たねばなりません。又床材に使用される原料もいろいろであり,原料の性質により床材が特徴づけられるからであります。
 床材としては,先づリノリウムを始とし,ゴムを原料としたゴムタイル,ラバリウム,ビニールを主体としたビニール系床材,更にアスタイル,リグノイド,フローリング等実に多種多様にわたつて居ります。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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