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文献詳細

雑誌文献

病院10巻5号

1954年05月発行

文献概要

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病院史概説(3)

著者: 岩佐潔1

所属機関: 1厚生省病院管理研修所

ページ範囲:P.53 - P.57

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III.ローマ
(1)紀元前のローマと医術の蔑視
ローマの歴史は中部イタリアのチベル河畔に起つた,ささやかな一小都市国家がイタリア半島を統一し,進んで地中海世界全体をその支配下に置いた歴史であり,オリエントを含むあらゆる古代文明を統合して,これを世界に拡め且つ後世に伝えた点に最大の意義がある。従つてここではギリシア文化の継承と,キリスト教の勝利とが重大な影響をあたえているのであるが,我々はまずそれ以前のローマから考察を始めることにする。
大ローマを建設したのはギリシア人と同系のインド—ヨーロツパ民族の一派で,前1700年頃北方から中部イタリアに侵入したラテン人であつて,伝説によるとトロイ戦争の勇士の子孫であるロムルスが,前753年ローマ市を建設し王政を始めたとされているが,当時はバビロニア系のより高度の文明を持つていた北方のエトルリア人の支配を受けてローマの都市を建設した様に思われる。しかるに前6世紀ローマ人はエトルリア人の王を追つて自立し,共和政を始めたのであつてここに真のローマが誕生した。当時のローマ社会は氏族制度であつて,宗全な市民権と自己に従属する附庸民(Clientes奴隷)を所有している,少数の貴族と貧困な平民(Plebs)とからなつていた。市民の名に値するものは貴族のみであつて,彼等はギリシア人の奴隷の内から医療の心得のある者を撰んで,自分や家族や他の奴隷達の疾病の治療を行わせた。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1383

印刷版ISSN:0385-2377

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