icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

病院11巻4号

1954年10月発行

雑誌目次

--------------------

病院医局の將来のあり方—医局解体のあとしまつ

著者: 守屋博

ページ範囲:P.2 - P.6

 前号の「医局解体」で論じられた様に,病院の近代化は医局単位による診療設備の独占を,廃める事にある。あらゆる設備が,あらゆる医師によつて利用され,あらゆる医師は居乍らにして診療に必要な材料を得る様になれば,自ずから医局の形も変らざるを得ない。
 従来の病院において,教授又は医長が近代医療を行う為には,X線の撮影も,検査も,病棟看護婦の管理も,病歴整理も凡て熟練した医局員の労力に依存せざるを得なかつた。医局員を有さぬ教授,医長は考える事が出来ず,若しあつたとしても,近代医療は行われぬであろう。これが医局外助教授,講師のヒヤメシ的性格を決定しているのである。

我か国の病院に於ける医療社会事業の現況(4)—実態調査の結果報告

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.7 - P.11

 医療社会事業は,近代病院の診療機構上最も新しい部門の一つに属する。就中我が国に於ては,戦前既に若干の立派な先駆的業績の存在は認められたとしても,それが病院の診療体制上不可欠の要素として一般にその重要性が認織され,且つ強調されるようになつたのは,漸く終戦以後のことに過ぎない。所が,medical social workという言葉の訳語である医療社会事業という名称は,実際にはなかなか呼び難いらしく,はじめのうちは病院関係者でさえも,一寸すぐにはその言葉が口に出なかつたり,「社会医療事業」と逆に言つて見たり,寧ろ正確に呼べる人の方が少いという有様であつた。然しその後ようやくこの言葉も人の口に馴染むようになつて,今ではもうそれ程言い滞んだり,言い間違えたりする人はいないようである。それだけこの仕事の普遍性も高まつて来たのであろう。本誌にも医療社会事業に関する論説はしばしば掲戴され,その数も他の業務に関するものに較べて,決して少くないように見える。然しそれだけ広くしばしば取上げられるようになつたこの業務が,それでは果して今日我が国の病院に於て,実際上どの程度まで普及をなし,又質的にも量的にもどの程度の仕事が行われているかという点になると,未だ殆んど何も明かにされてはいないというのが実情である。

外科医療器械に対する知見補遺

著者: 吉田信夫

ページ範囲:P.13 - P.15

 外科医は器械を用いて医療を行うので,器械に対する常識は当然持つていなければならない。然るに大学教育は学問と技術の拾得にのみ偏重しているので,臨床教育の盲点になりやすく,我々が新設病院に赴任する際には,経済学の面で苦労して自らその道を開拓して行かねばならない現状である。近時病院管理学が大学に講座を設けられる様になり,社会人としての常識教育が大学に於いても取り上げられつつある。実地医家にとつては学問は大学より輸入するが,逆に輸出するようなテーマはこんな方面に多々ひそんでいる様に思う。我々外科医が新しく病院を設立する際,技術に先立つて,手術場の設計とか器械の整備ということが重要になつてくる。これらに全く無関心であつて,創立者の責任を,果事が出来ようか。この意味で勤務医にしても,外科医として必要と思われる医療器械に対する私見を述べて見たい。
 扨て医療器械は製造過程も簡単で,原価が低廉であるのに他の器械に比べ特に高価である。これは手工業で一般日用品に比べ,医師を相手とするので需要が低い点が考えられる。又,医師は比較的器械に関しては割に無関心であつて,業者に全て任せ切りである事が考慮すべき点であると思う。もつと器械に関心を持つて来れば業者も一段と器械の品質の向上と価格の低廉に努力するであろう。藥剤師が藥品に対する如く医師が器械に対して,日常の診療を合理化するためにももつと関心を持つことが大切なのである。

文書整理の合理化(2)—フアイリングシステム(1)

著者: 一條勝夫

ページ範囲:P.17 - P.20

用具を選定する
 フアイリングシステムに必要な用具は次のものである。
a.フオルダー   マニラ,クラフト,フアイバー等丈夫な厚紙で作られた書類はさみである。マニラ紙は薄く丈夫で優美であり,フアイバーは堅牢この上ないが,一般にはクラフト紙が安価で実用的である。見出しを書くためのミミ(タツブ)の巾には,辺の1/2・1/3・1/5といろいろあり,また全然ないのもある。これは分類のしかた,見出しの書き方で選定すればよい。懸案中の文書の持ち歩きには,フアイリングポケツトなどを用いると,スベリ落ちの心配がなく便利である。

診療補助業務—眼でみる病院の設備とはたらき(8)

著者: 橋本寛敏 ,   滝野賢一

ページ範囲:P.35 - P.41

 病院には,医師が行う診療の補助として,医師以外の病院職員が行う業務がある。これが,たとえ不完全であつても,病院医療はやれるので,忘れられがちであるが,もし管理者がこの方面に特に考慮を払つて,業務を改善すれば,病院医療は好調となり。著しい力を増す。又患者にとつては病院が親しみ易い,居心地のよい場所となる。
 診療補助業務は何々かと言えば,医師以外の病院職員が日々行う仕事はすべてそれだとも考えられるが,茲では,医師以外の職員が,医師の配下にあつて介補するのではなくて,診療を助ける意味で医師と協力はするが,自主的に,患者或はその関係者に直接に働きかける仕事を指すことにする。このような意味での診療補助業務の第一は,看護であるが,これについては既に述べた。病室看護婦以外の職員(多くは婦人)が行う補助業務について茲では述べる。

病院史概説(7)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.43 - P.46

VII.イギリスの病院の発達
1)イギリス(ブリタニア島)の歴史
 ブリタニア島は紀元前55年ケーザルがガリア総督であつた時代,海を渡つて征服して以来,ローマの支配下にあつたが,その後久しく歴史上中枢的位置をしめることはなかつた。その後大陸で民族移動が行われた5世紀の頃,北ドイツ地方からアングロ・サクソン等のゲルマン諸部族が大挙移住してこの地を征服し,いくつかの小国を建てローマ文化を駆逐した。828年に至つてブルタニア島南方にあつたウエセツクス王エグバートが統一しイングランド王国をつくつた。これが今日のイギリスの起源である。それでイギリスはゲルマン系の言語と文化を持つ国として今日まで及んでいる。この頃キリスト教もまたこの地に布教され,それと同時に大陸におけると同じ様なキリスト教による貧病者の収容施設が出来たが,詳しい記録はない。記録に残つている最古の病院はカンタベリー(Canterbury)の大僧正が900年に創設したものである。その後第二次の民族移動とも言うべきノルマンの侵入が始まつた。ノルマン人と言うのは元来スカンデイナヴイア半島やデンマーク方面に居残つたゲルマン民族の一派で本国が農業に適さない関係から航海に長じていたが9世紀頃より,移動を開始しヨーロツパの沿海諸地方の住民を襲つて掠奪を行つた。

Dr. Shimanouchi's Recordtape

著者: 島内武文

ページ範囲:P.47 - P.49

(2)我国の病院も昔は患者の宿舎から発生した
 前回に欧米の病院はHOSPITALであつて,文字通り患者の收容所に源を発しているのに対し,我国の現在の病院はむしろ患家からでなく医家(診療所)が規模を増大したものとみなされることをのべたのであるが,山崎佐博士の「日本医事法制の研究」を拝見した所,大分昔の事が記載されているので,それをここに引用させていただくことにした。
伝説では聖徳太子の創建されたものとして1)悲田院—無依の貧窮者を收容した。2)療病院—病者を收容し救護した。3)施薬院—薬剤を施与した。4)敬田院—社会教化の道場とした。等となつているが,実際病者を收容して救療したのは専ら悲田院であつて,施薬院は悲田院に附属して薬剤を施与することによつて,療病に関与することになつていた。(同書614頁)

米国に於いて医師が手術し得るものとなし得ざるもの

著者: 森島侃一郎

ページ範囲:P.53 - P.54

 人権の発達した北米合衆国では手術一つするのにもそう容易ではない。必ず本人の同意,未成年者や,精神異常者や其他必要のものは両親なり,関係者なりの同意を取つて行つている。我国でも之について既に以前から手続をして遺漏ないようしているが,民主々義の発達した今日,尚問題の種とならざるよう処置を講ずる必要があると思う。現在北米合衆国で特に手術の問題の種となつて居るもの若干を掲げて参考とする。

座談会

第四回日本病院学会総会を語る

著者: 東陽一 ,   原素行 ,   小西宏 ,   長岐佐武郞 ,   橋本寬敏 ,   金子敏輔 ,   守屋博 ,   島內武文 ,   橋本寿三男 ,   木下正一 ,   武藤多作 ,   吉田幸雄

ページ範囲:P.21 - P.34

 小西  順序としまして,最初に学会の総体的な批判から始めて頂きましよう。今日の出席者は200名以上ありましたね。
 武藤  250人位は確かにあつた。一時は,300位あつたと思う。

病院長プロフイル・16

買われる政治的手腕西村泰(愛媛県立病院長)

ページ範囲:P.42 - P.42

 病院協会副会長の西村泰氏は,どことなく大人(タイジン)と呼び度い一種の風格を具えている。恐らく若い時日本郵船に勤めて外国を周遊し,又大正15年から昭和5年迄は,同仁会北京医院副院長として大陸風に鍛えられたせいもあるためだろう。
 同氏は大正5年故柿沼東大医学部長等と共に,東大医学部を出て,林,入沢両教授に師事した。同期生及びその前後の同窓生は俊雄揃いであつたことは周知の如くである。又同氏は一高,東大を通じてボート,水泳の名選手であり,交友層は広汎に亘り,スポーツマン特有の物にこだわらない明るい性格から,誰にも親しまれて,それで大に得をしている点も多いようである。

讀者の聲

病院空地美化と清掃費節約のために

著者: 石原博

ページ範囲:P.51 - P.51

 何処の病降にも空地があり,夏季には雑草が群生し空地の美化には苦心するものである。空地が広いと草取り人夫賃も相当多額に要するので,当院では昭和27年に空地美化と清掃人夫賃の節約の為に院内空地にクロバーの播種を試みた。
 其の結果第1年の夏即ち28年の夏には草取り人夫賃は前年度と大差なかつたが第2年度以降はクロバーが繁茂し空地緑化の目的を達し,同時に草取人夫賃は10分の1位ですみそうである。而も試験動物の飼料の一部を自給することが出来たので,次にクロバーの蒔付方法を述べ参考に供したい。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up
あなたは医療従事者ですか?