文献詳細
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文献概要
医療社会事業は,近代病院の診療機構上最も新しい部門の一つに属する。就中我が国に於ては,戦前既に若干の立派な先駆的業績の存在は認められたとしても,それが病院の診療体制上不可欠の要素として一般にその重要性が認織され,且つ強調されるようになつたのは,漸く終戦以後のことに過ぎない。所が,medical social workという言葉の訳語である医療社会事業という名称は,実際にはなかなか呼び難いらしく,はじめのうちは病院関係者でさえも,一寸すぐにはその言葉が口に出なかつたり,「社会医療事業」と逆に言つて見たり,寧ろ正確に呼べる人の方が少いという有様であつた。然しその後ようやくこの言葉も人の口に馴染むようになつて,今ではもうそれ程言い滞んだり,言い間違えたりする人はいないようである。それだけこの仕事の普遍性も高まつて来たのであろう。本誌にも医療社会事業に関する論説はしばしば掲戴され,その数も他の業務に関するものに較べて,決して少くないように見える。然しそれだけ広くしばしば取上げられるようになつたこの業務が,それでは果して今日我が国の病院に於て,実際上どの程度まで普及をなし,又質的にも量的にもどの程度の仕事が行われているかという点になると,未だ殆んど何も明かにされてはいないというのが実情である。
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