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雑誌目次

雑誌文献

病院11巻5号

1954年11月発行

雑誌目次

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新醫療費体系について

著者: 厚生省医務局医務課

ページ範囲:P.2 - P.8

 新医療費体系の意図するところは,医療に対して適正なる報酬を支払う方式を確立することであつて,医師,歯科医師,薬剤師の技術に対しては,その専門的技術に対するものとして適正なる報酬を支払うとともに,物に対しては物に対するものとしての対価を支払う原則をとるものである。これは現在の医療報酬の体系において,ややもすれば技術に対して支払わるべきものが,雑然として物の対価のうちに含め,支払われる傾があつたのに比較し,大きな相違である。
 今回新医療費体系構想にあたり,前述の根本原則の外,これによる国民の総医療費負担の増加を来さぬことを前提とし,更に医師,歯科医師の所得にも原則として変動を来さぬよう配慮した。これら原則に従い本新医療費体系策定にあたつて,理想的な技術料の算定は将来の問題とし,現状において国民の負担に変動を与えずに,可能なものを第一歩とし,且つ又医薬分業の実施に必要なものを取りあげることとした。国民医療費の現状をみるに,その総医療費は年々増額しつつある。即ち昭和27年には約1,550億と推定されるものが,28年度においては約2,090億と推算され,約36%の増を示している。次に病院診療所における実態調査による診療の行為群別の收入と経費と比較して見ると,医師,歯科医師に対する報酬は薬治料,注射料,補綴料等が主な收入源となり,その反面その本系の業務である診療料的部門においては甚しい不足を示めしている事実を認めることが出来る。

我が国病院管理の現段階

著者: 小西宏

ページ範囲:P.9 - P.11

 今年5月ジユネーヴで開催された第7回WHO総会に於て,我が国は西太平洋地域代表として常任理事国に選出された。これはWHO加盟以来,我が国としては無論初めてのことで,フイリツピンを始め他のアジアの加盟国の熟烈な推輓が大いにモノを云つたということである。
 話は別になるが,この夏台湾の某省立病院長がアメリカから帰国の途次,日本の病院管理の現状を知りたい,と云つて病院管理研修所を訪れた。約半日に亘つて我が国の実情を話したり東一を案内したりしたのであるが,別れ際にこんな話があつた。自分はアメリカで1年間病院管理学を学んで来たが,アメリカと中国とでは風俗習慣を始め経済事情も大いに異る,従つて米国の病院管理をそのまま自国にとり入れることは適当でない。そこへ行くと日本で行われている病院管理ならば安心して真似ができそうに思う。台湾でも今後病院管理を推進させたいが,遙々アメリカ迄学びに行くのでは経費がかかつてやり切れない。若し,当研修所へ留学生を送つたら引うけて貰えるだろうか,というのである。勿論欣んで,と答えたものの内心忸怩たるものがない訳ではなかつた。この話は今の所これまでのことであるが,さきのWHOのこととも併せて考えて,吾々の背後にはアジアという後進地域が控えているということをもう一度想起せねばならぬと悟つた。

我が国の病院に於ける医療社会事業の現況(2)—実態調査の結果報告

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.13 - P.18

Case Worker
 前記81の病院に於ける専任case workerの数の合計は109人であるが,このうち女性は73人男性は36人であつて,その比率は丁度女性2に対して男性1の割合である。尤も,厚生省所管病院の場合には,逆に,男性19人女性13人で男性の方が多くなつているが,これは官立病院の職員構成上の特色を或る程度反映しているものと思われ,こうした分を除いて見ると,女性の占める割合は更に増大して,実にcase workerの4分の3以上が女性ということになるのである。(第2図)欧米諸国に於てはcase workerはその殆んどが女性ということになつているようであるが,我が国の実情も大体これに合致していることが知られる。
 case workerの学歴,受講歴及び経験年数は第5表に見られる通りである。我が国に於ては,case Workerの身分制はまだ確立されてはいないので,当然,医療case workerの養成機関及びその教科課程の定まつたものもない。わづかに社会福祉事業法の指定する社会福祉主事養成機関にその代行養成機関を求め得るのであるが,そうした養成を受けた者は,ここには12名(約1割)を数え得るに過ぎない。

WHOに参加して

著者: 與謝野光

ページ範囲:P.19 - P.22

 第7回WHOが5月4日からジユネーブで開かれ,厚生省から小沢統計調査部長が主席全権として,斎田広報連絡課長と共に出席されましたが,私もたまたまイギリスの国際衛生大会に行つておりましたので,代表団の一員として総会に列席いたした訳であります。
 御承知の通りWHOというのは,国際的な機関で国際連合の有力なる下部組織として,国際的な恒久な衛生に関する諸問題の改善に寄与する有力団体として生まれ,今年は7年目に当ります。申上げる迄もなく,国際的な真の平和というものは,各国の衛生保健状態の改善なくして得られない,健康な地域がある反面,不健康な地域があるならば,秩序が保たれる筈はない,そういつた秩序のアンバランスが地球上にある限り争闘は絶えない,真の平和はないというので国際連合が出来たということでありますが,これから生まれた子供がWHOである訳であります。従つてこの会は全く国際的な協力によつて,地球上にある凡ゆる国が協力して,この人類の真の平和の基礎の一つである健康の問題或は衛生の問題を改善合理化して参るという協力団体でございまして,加盟しておる国は非常に多く,82ヵ国に上つております。

物と金の管理—眼でみる病院の設備とはたらき(9)

著者: 橋本寛敏 ,   落合勝一郎 ,   滝野賢一

ページ範囲:P.23 - P.36

1.建物の管理
 病院の建物とそれに附設された機械は常にその保全に留意して管理されなければならないが,更に医学の進歩,病院の発展に伴う改修,拡充等の処理を必要とする。新らしい医療が絶えず活溌に行われると,建物も機械も創設の時のままでは,その要求を満足させることができなくなつてくる。これを適時,適切に改めることも病院管理上大切なことである。しかし,この種の要求は屡々建築設計上からみて,非常に無理な要求であつたり,また狭い見解に基く計画であつたりすることがあるから,管理者はよくその要求の目的を見極めてから処理する必要がある。そうしないと,工事途中で模様がえになつたり,或はその目的が不徹底のために,見当はづれの,不便なものができ上つたりすることになる。機械装置についても同様である。
 工事の実施に当つても,こまかいことや,狭い場所の利用,古い資材の活用等,仲々,工夫と苦心を要する場合が多いので,よくその事情を心得えたものが取扱わないと上手に処理できないことになる。その為にこの仕事をする専任のものが病院にも居た方が便利である。日常,病院では窓や戸の不工合,電気,水道,排水の故障等,早速修理しなければ病院の機能を著しく低下させるような事故がよく起るし,棚つりとか,日よけ,扇風器,ストーブの取付け,取はづし等々,こまかい仕事が絶えまなくあるものである。この管理を円滑に行うためにも,専任の人が居るのがよい。

病院史概説(9)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.39 - P.42

VIII.初期イタリアの病院
1)フランク王国分裂前後のイタリアの病院
 西ヨーロツパを統一したフランク王国もチヤールス大帝の死後870年3分されて東西フランク及びイタリアの3部となり,これが今日のドイツ,フランス,イタリアの起源となつたのであるが,この内イタリアは統一国家としての成立は一番おくれるのであるが,ローマ帝国の伝統をつぐ地であり,中央部には法王の座ローマを持ち又早くから自治都市の発達が見られて文化的には他にさきがけていた。従つてローマを始め各地にすぐれた病院が創られている。
 ローマ法王領が作られてから(755年)最初の病院は800年法王レオ3世(Leo III795—816)がローマに創つたOspedale di San Pietoである。1090年にはソロルがシエニナ(Sienna)にOsp-edale di Santa Maria della Scalaと言う病院を創つた。彼は修道士でこの病院と同時に病人の世話を目的とする信徒結社を組織し棄兒を収容して結婚出来る年齢まで世話をする棄兒養育院を附属していた。こんな関係でこの病院は看護においてすぐれており特に14世紀になつてこの病院で看護に当つていたカテリナ・ベニンカサ(1347-1381)は図々しい病人に対しても限りない親切をつくすことをモツトーとした。

病院給食発展へのあゆみ—國立病院における給食向上への施策

著者: 三宅実

ページ範囲:P.43 - P.47

病院給食発展への経過
 戦争前においても病院では患者に対し,給食が行われていた。しかしそれは食餌療法を中心としたもので,慶応には食養研究所,国立栄養研究所には栄養療法病院と云う専門の施設が開設された時代もあつた。
 しかし戦争ぼつ発と共に食糧事情は惡化し,その上種々の障害を生んで,カロリーは明らかに不足をつげ,質的に考えて見る等と云う余裕は更になく,唯量のみの確保に狂奔するだけであつた。そこで個々の患者は寝具と食糧とを携行して,病院に入院し附添婦をともなつて,病院で自炊生活を行うと云う状態で,この場合正規の配給量のみに依存せねばならぬ病院においては,年に40%の患者が死亡すると云う惨事まであつた。

Dr. Shimanouchi's Recordtape

著者: 島内武文

ページ範囲:P.55 - P.57

頭のある生物
 生物でミミズの様にはつきりした頭のないものから,人間の様に頭ができてきたという事実は,考えてみるとなかなか面白い。
 脊椎動物に於て大脳の大部分を切りとつても生物は可なりの生活現象をつづけて,一般的の栄養循環等や低級の神経機能はおかされない。脳は複雑な連想記憶比較選択想像等の作用のための部分と考えられ,全般の統制と対外的経験的機能の集中とみられる。眼耳鼻舌等重要な対外情報機関もここに集中している。即ち脊椎動物ではその体部に生体の維持に関する機能があるに対して,頭方には主として統制的対外活動的の機能と,独立的精神的機能とが集中している。殊に鳥類に於ては,その運動様式からして空間的指南力の規準としての頭都の機能を発達させるために,長い頸部を以て頭部を支えて,体部の運動の影響のなるべく少い様になつてきた。気づかぬ人もあるが鳥類は体部の方向姿勢に関係なく,その頭部を正しく保つ習性があり,地上を歩行する際にも通常体部が進行する間頭部は旧位置に止まり,体部が止つた時に頭部を別に前方にうごかすのであり,鳥類独得の歩き方を示している。

研修所だより

ページ範囲:P.59 - P.59

 暑い8月の間は講習会の予定がありませんでしたので研修所は閑散でした。もつとも所員の方は休んでいたわけではなくそれぞれ仕事がありました。すでに明30年度の予算編成も始まつているのでその面での仕事もありましたし,又本年度の研究計画も具体的になつて来たのでそれを進めてゆく仕事もありました。守屋主事は石炭炭鉱協会及び佐賀県立好生館病院のまねきで8月26日から講師の三沢氏と相たずさえて九州へ講義に出かけました。
 9月に入つてからは次の如く引続き7回講習会を開催します。

病院管理文献紹介(7)—病院管理研修所編

ページ範囲:P.60 - P.60

(B)医療制度
2)アメリカ医学をとり入れるために   臨床と研究31巻5号 黒田吉男
 アメリカでは全体として物が豊である上に医師会の力で医者人口の増加を制限している。医師は専門医として開業することを目的としそれが病院における修練となり病院活動及び医師の全活動の原動力となつている。この点日本で学位制度が活動のテコになつているのと一見似ているが遙に合理的合目的的である。病院の能率化,中央化も合理主義,科学的管理法の所産として十分にすすんでいるが,上述の医療制度全般とうまく合致し釣合つている。従つて日本でアメリカの制度を真似すると言う時には色々問題があり部分的に真似をすると却つて不利益になる場合もある。

病院長プロフイル・17

大学病院長のホープ滝本庄藏氏(札幌医科大学附属病院長)

ページ範囲:P.37 - P.37

 今を時めく同氏は串本節で名高い和歌山県本牟婁郡大島村の出身,従つて十八番のおはこはお国自慢の串本節である。四高を経て大正9年東大卒業,稲田内科に入る。北大中川内科助教授,釧路市立病院長,札幌市協会病院長を経て,昭和20年道立女子医学専門学校教授並に附属病院長となり,昭和25年北海道立札幌医科大学の発足と共に教授並に附属病院長となり現在に到つている。その上看護学校長及び保健婦学園長を兼ね,大野学長の右腕としてなくてはならぬ存在。尚,ロータリアンとしても活躍している。
 病院経営の責任者として多忙な傍ら,循環器系の疾患や胃癌に特に興味をもち後進の指導に当つている。尚,稲田内科に於ける業績は血清蛋白質に関する研究であつた。

資料3

癌,高血圧診療センターについて

著者: 厚生省国立病院課

ページ範囲:P.52 - P.54

 我が国に於ても最高の死亡率を示し,又病気の診療面から見て難病である癌高血圧の診断,療養指導,治療に関して,該当患者又はその疑いを抱くもの,更に健康な時期から出来るだけ気安く,且能率的に診察の機会を提供してこの種疾病治療の重要ポイントである早期診断の促進を計り且確実且徹底した治療の継続を能率的に行う目的で,29年度に国立病院に癌診療センター2箇所,高血圧診療センター3箇所を設置することとなり,愈々10月から業務開始の運びに到つたのであるが将来この種企てが,国内各方面に要望されてくることが想像されるので,この際今年度の設置要網と,又設置各病院の運営計画を掲載して,読者の参考に供する次第である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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