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雑誌目次

雑誌文献

病院12巻2号

1955年02月発行

雑誌目次

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医師の社會的位置(1)

著者: 島內武文

ページ範囲:P.2 - P.7

 頭書の題目で昨年10月厚生省医務局研究発表会に於てつたない講演をいたしましたところ,時節柄か多数の方に興味をもつていただき,また当時時間の関係で意をつくさぬところもあるので,ここに発表して皆様の遠慮のない御批判を得たいと思う。
 お医者様といえば,幼い子供でも真似をする位に一般に親しまれ,文字どおり生れてから死ぬまで厄介になるものでありながら,さて医師とは何ぞやということになると,お医者様自身でさえなかなかはつきり説明できないものである。何事も明文化することを専門にしている法律家も,「医師とは医師法上に於て医業をなすことを免許されたもの」といつている状態である。

患者と医師と看護婦の呼吸

著者: 千種峯藏

ページ範囲:P.8 - P.12

 掻ゆいところに手の届くような——,ピツタリと呼吸の合つた——,という言葉の向う側にはイスカのように喰違つた——,どうもピントの合わない——,膚合いのシツクリしない——,という言葉が並んでいる。ピチピチした健康人では,その為めに,破顔一笑したり,苦虫を噛みつぶしたりするだけですむが,病人ともなれば,いずれは精神にも変調のあるところから,秤の振れも大きく,無上に有りがたがつたり,或は,執つこい憤りを発したりするのである。
 病人というものは,治療の為めの,様々な,或は,徹底的な自由の束縛を受けるので,いやおうなしに,精神的変調の国に引込まれる。そこでは,日々の生活が,他動的に廻転されるので,病人は,只々人を頼り,人の働きかけを待つ身となつてしまうのである。その頼りにする人,働きかける人とは,とりも直さず,医師と看護婦である。この不自由な国で頼りにする人達の働きかけが,若しも,掻ゆいところに手が届くようであつたら,頼る病人の幸福はどうであろうか。その逆に,一向に呼吸が合わないとしたら,頼る病人め,期待外れの表情はどんなものか,凡そ察しがつくであろう。

小兒の入院と附添

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.13 - P.17

 入院患者の附添廃止ということが,病院管理の一つの方向として示されて来た。そしてここ数年の努力の結果として各病院における附添は減少して来ている。しかしながら附添廃止を全面的に割切つてしまつたというわけのものではないようである。ことに小兒の場合には附添者が母親という関係であるだけに,おとなとは違つた問題も提示されているし,附添廃止反対の声も少なくはない。そこで小兒の入院と附添の問題について,現在の段階ではどう考えることができるか,検討してみたいと思う。御批判,御教示を賜われば幸いである。

國立東京第一病院に於ける入院患者の診療圏構成に関する研究並びに一般病院診療圏の分析的考察

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.19 - P.24

緒言
 病院の診療圏が如何なる範囲に構成されそれが如何なる性質を有するかと言う問題は病院管理の上からも又医療政策の上からも重要な意義を持つています。それ故昭和29年度厚生科学研究費によつて「病院の診療圏に関する研究」が課題として取上げられたのでありますが,私はその一部として国立東京第一病院(以下東一と称す)の入院患者についての居住地と疾病状況の関連を調査して東一における診療圏の構成とその性格について考按を試みました。
 なお合せて一般的に診療圏構成部分の定義づけをなしそれ等の性格を分析し,更に各等級病院と各種診療圏との関連について考察を加えました。

病院給食の考え方—栄養士の立場より

著者: 権藤佳子

ページ範囲:P.25 - P.26

 病院給食は,病院給食に携つている人達だけで出来るものでは無く,医師,看護婦,栄養土,すべての部門の人々が協力して初めて病院給食が進歩し向上して行くのではないでしようか。
 毎日続けられている給食は,院長,医療部長,庶務部長指導のもとで疾病治癒に貢献する様,実施しているのです。患者は病状に応じて如何程の栄養価が必要であるか,又特別食の場合の様に蛋白,脂肪,含水炭素,塩分等,病状に応じて制限し,先生からのオーダーによつて特別治療食の献立をたてます。栄養量,予算を検討し,一応患者の嗜好をも参考といたします。この嗜好は,治療食である以上患者の嗜好をその儘活用せず嗜好に適する様に調製します。嗜好調査は献立を作成し患者の給食状況を知るのに栄養土にとつて特に必要で大切な事であります。

作業療法について—その現況と原價計算

著者: 井上正吾

ページ範囲:P.43 - P.47

作業療法の現況
1.はじめに
 今回国立精神衞生研究所より作業療法の現況調査の依頼がありましたが,その返事をかねて,平素から私達も作業療法の重要性を痛感しておりながら,色々の面で実行が不充分であつたと,思わせられますが,その実行にブレーキをかけるものは経費の裏付がないことで,この点健保で請求出来るとよいと思われ,このために当院で過去1ヵ年に行つた作業の大要と収支の決算を報告したいと思います。

病院経営上の熱管理対策

著者: 木村貞藏

ページ範囲:P.49 - P.51

 戦後病院の組織或は機構の改変が要請され著しく改められたものの中に,光,熱,水に関する諸設備或は装置の管理運営の面がある。然し現在新しい目で見た時に主要な大病院の幾つかを除いては末だこの感の深いものが大部分と言つても過言であるまい。
 病院の舞台裏装置と言われているこれ等の中で熱管理面に到つては,体温も聴診器もあてて居らない未開の分野の如き状態である。これは,電気又は水の如き完結した製品の使用でないから来る理由にも因るものであろう。

病院史概説(11)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.53 - P.56

XII.16世紀及び17世紀初頭の病院
1.宗教改革と病院
 人間中心の近代文化が南ヨーロツパのイタリアを中心とするルネツサンスの運動として輝しい華を開いて来たことは前回述べた所であるが,この同じ人間精神が北ヨーロツパでは少し遅れて宗教改革となつて発現した。これは宗教的信仰の内化と自律をもとめる運動であつたが,教会の全面的頽廃とその兇悪な圧制,法皇庁が現世的利益の増進のために精神的権威を平気で利用してきたという積弊が,その原因となつている。法王が免罪符を発行することによつて宗教課税の目的を達していたことに対して公然と反対の叫びをあげたのはルツターであつた。1517年のことである。この運動は次第に勢力を延しつつあつた各地の諸候にとつても都合よいものであつだので,ルツターの破門にも拘らずその興奪は次第に拡まり北ドイツを中心に新教徒の数は急激に増加した。
 所でルネツサンスの人間中心の明い文化を呼吸した人々は中世的な暗い修道院の生活に強く反撥した。長い間各地に陰然たる勢力を持つていた修道院はかかる時代の趨勢の前にその威力を失わざるを得なかつた。

Doctor's Taperecord

ページ範囲:P.57 - P.58

 昨年11月に臨床検査技術士の技術認定の試験が行われた。詳しい記事(試験問題集,試験委員の感想,合格者氏名)は保健タイムスの165号(1954—12—13),166号(1954—12—28)に載つている。資格試験は国がやつたがよいか,民でやつたがよいか,一利一害で色々議論のある所であるが,民間でも出来る。又その所に色々よい点があると云うことを実証した点で興味ある試みであつた。
 国でやると云うことになると,必ず試験の方法,むつかしさ等について受験者の団体的発言が強くなつて,その結果やさしいお坐なりの試験になるにちがいない。それは現にその業務に従事している人々を落すわけにゆかぬからやさしくなるのである。看護婦や,X線技師の試験を見ればよい。

結了カルテの中央保管について

著者: 中佐肇

ページ範囲:P.61 - P.62

 転帰をとった後のカルテの中央保管の理想はフアイル式の保管箱に收納し,後日の抽き出しに便利なように3〜4区分別の索引カード又は索引簿をつくつておくのが,望ましい姿であろうし,またこの目標に向つて努力を続けなければならないと思うが,経費と人員の関係から,ごく少数の病院を除いて現状では実施困難であり徒らに理想を揚げ実情に副わないことを避けてその方法を検討してみたいと思う。
 フアイル式保管箱の短所は抽き出し式になるために,一杯あけたときの空間面積は大きく対面して箱を並べた場合は,奥行の2倍の床面積が必要となる。また,普通人の身長以上に高くすると高い部分の出し入れ作業は著しく不便になる。従つてカルテの保管室は相当の広い床面積を要するであろう。保管箱の製作費もまた書架式に比べると木製に見積つても崇高となり金属製になればいうに及ばないところである。

病棟專屬医員制度

病棟專屬医員の一日

著者: 橋本寛敏 ,   滝野賢一

ページ範囲:P.27 - P.42

まえがき
 病院では看護婦は患者をあづかり,衣食住の世話をし,医師の指示に基く看護はするが,医療については,医師が随時,病室に行つて診療する制度が一般に行われている。
 医師が所を定めず自由に病室と外来診察室,其他の場所で勝手に仕事をして居るとすれば,病室の患者に何か問題が起つた時には,看護婦はその患者の受持医師を探し求めるのに苦心し,時間を浪費する。そして適時に適切な診療が行われない場合すら起り得る。患者は診療を受けるために病院に入院しているのであるから,何時でも適切な一貫した診療処置が行われ得るような体制を病院は整えるべきである。その為には看護婦が病棟の患者の一定数を受持つのと同様に,医師も病棟に配属されて一定数の患者を受持ち,常時病棟に居てその診療に專念することのできるような制度が必要である。これが病棟專属医員制度である。

読者の声

蜂窩式の總室—総室らしくない総室

著者: 矢野精太郎

ページ範囲:P.59 - P.60

 病室の大きさ,收容ベツト数及び其の他配置は診療科別の相違によつて多少事情が異なることがあつても常に考えさせられる問題である。
 先ず最初に言い古されて来た個室と総室の優劣問題であるが,患者の方からは夫々の好みがあり,又経済的負担の事情に関連して考えられるし,病院の方では建設費や,治療,看護の面から見た得失によつて決められるのが通例である。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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