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経営体としての病院の特質
著者: 石原信吾1
所属機関: 1厚生省病院管理研修所
ページ範囲:P.7 - P.11
文献購入ページに移動 交換経済機構の中に於て,一定の計画性のもとに,一定の目的追求の営みをなしつつある夫々の自主的経済単位を経営体と呼ぶとすれば,病院は勿論一つの経営体である。この場合,これを最も広く解すれば,消費活動を主たる運営的努力の内容とする家政や財政も当然経営と称され得る。所が一般にはもつと狭く,経営の本質は価値の造出乃至生産にあるものと解され,経営と家政及び財政とは区別して考えられるのが普通である。病院は本来医療サービスの造出供給を目的として運営がなされている組織体であるから,この後の意味から言つても矢張り明かに経営体と考えられる。或は,このようなことは余りにも自明の事実であつて,殊更にことわる程のこともないと言われるかも知れない。だが,この自明のことが現実には一向に自明のこととして取扱われていない所に問題がある。即ち,我が国に於ては,官公立の病院は勿論,民間の病院でもその大多数が,消費会計である官庁会計方式をとり,官庁予算方式によつて運営されているのが実情である。我が国の病院の経営管理面での著しい後進性は,こうした事態に集中的にあらわれているわけであるが,近時ようやくこの遅れが自覚され,病院を一つの生産経営体として認識し,そのようなものとして取扱つて行こうとする動きが徐々に動きはじめているというのが現在の段階だと言えると思う。
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