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雑誌目次

雑誌文献

病院12巻4号

1955年04月発行

雑誌目次

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空から見た病院

著者: 増田 ,   滝川

ページ範囲:P.2 - P.3

 日頃みなれた病院も角度をかえて眺めるとまた特別な興味が出るものである。東大,慶応,国立東一,厚生年金となじみ深い各病院を空からみた所を紹介する。環境,構造上のさまざまな問題がよみとれはしないだろうか。

病院と医学研究活動

著者: 守屋博

ページ範囲:P.4 - P.8

医師と研究意欲
 現代医学の発達の歴史をかえり見ると,ある時代には必ずしも科学的と云えないで,むしろ主観的,哲学的,或はまじない的と云わざるを得なかつた時代があつた。これが壮麗な近代医学の科学的組織を作り上げるまでには多数の先人医師のたゆまぬ努力を必要としたのであつた。多数の不明,不治の病気が一つずつその病理を明らかにし,しかも近代科学的手法をもつて,治癒される様になりつつあるのである。この様な進歩は過去何千年継続され,しかもこの100年間に加速度的に進歩したのであるが,しかもなお未知,未治の分野は前面に無限に拡つているのである。この仕事は凡ての医師に課せられた義務であり,魅力である。無論これらの仕事は,臨床医家のみで遂行出来るものではない。研究のみに挺身出来る基礎医学者も,その又,外層をなす科学者,工学者も協力せねばならぬのだが,医学窮極の目的が診断治療にあるならば,病人自身に接し得る臨床医家がその中核にならねば,近代科学の手法と云う事は出来ぬのである。
 一方臨床医の立場から見ても,医学が完全に完成されたものであれば,日常の作業は単に機械的に行えばよい。極端に云えば,計算器のボタンを押す如くそこに一定の答を出し得るのであるが,実際の臨床はその様なものではない。個々の症例によつてあらゆる変化があり,あらゆる推測を必要とするのである。

医師の社会的位置(2)

著者: 島內武文

ページ範囲:P.11 - P.17

社会構造の力学
社会の機能構造には,自由性と有機性なる静的な性質と,下部構造と上部構造という動的な性質とがみられることは前述した。ここではその具体的表現としての支配群と専門群(兩者を合して上部構造)及び母体(下部構造)の間の相互関係を眺めてみようと思う。(附図参照)

国立病院における患者傷病の統計的観察

著者: 高木圭二郎

ページ範囲:P.21 - P.28

1.まえがき
 病院が,適正な医療を行うためには,その組織機構,あるいは,物的,人的,その他いろいろの条件があろう。
 病院を訪れる患者の傷病の種類,頻度,または,個々の傷病の性,年齢,転帰,平均在院日数,更には,職業,診療費の支払方法等を知ることも,この条件の重要な一つの部分であると考えられる。

ブラジルの病院事情—第1部 全般的事情

著者: 後藤正良 ,   今村栄一

ページ範囲:P.31 - P.35

 ブラジルとわが国との関係は最近再び親密の度を加えて来た。そのブラジルの病院事情を明らかにすることは,単なる国情紹介と違つた意味があるばかりでなく,ブラジルの新しい病院管理は北米を範として,ここ数年めざましい進展をみせているので,わが国の状況と比較して興味あるものと思う。
しかし,ポルトガル語を主とするブラジルの事情は旅行者には詳しく把握しきれないものがある。今回幸いにも,ブラジルにおいて医学教育を受け,外科医としてサンパウロ大学病院に勤務されている二世の後藤氏が来朝された。同氏から数回にわたり病院事情をききまたブラジルの病院の文献の解読もして頂いたので,それをもととしてブラジルの病院事情を紹介しようと思う。(今村)

病院史概説(13)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.63 - P.70

XIV.近世イギリスの病院
1)宗教改革以後の病院
 1534年ヘンリー8世(Henry VIII)がカトリツク教を禁圧してイングランド国教会を創設した。この結果王はローマ法王から離れて教会の莫大な財産をその手中に収め,イギリスに於る王権は益々その力を増す結果となつた。しかしこの宗教改革の結果イギリス全土に拡まつていた修道院附属病院が閉鎖されイギリスにおける病院は壊滅に瀕した。僅にロンドン市民の熱望に依てSt. Bartholo-mew's病院及St. Thomas's病院が王立病院として復興された。そのほか更に子供の為のChrists病院と王宮を改造したBtidewell病院が出来たことは既に述べた。しかしこの最後のBridewell病院は名前は病院であるが本来は懲治所であつて病院ではなかつた。このほか医師会と藥剤師会が開いている公衆診療所(Publie dispensary)があつて市民の無料診察をしていた。この医師会は1528年ヘンリー8世の侍医Thomas Linacreの主唱によつてRoyal College of Physiciansとして結成きれたものである。それより先1506年にはエデンバラ(Edinburgh)でRoyal Collegef Surgednsが結成された。

Doctors' Taperecord

ページ範囲:P.73 - P.74

年寄制度
 角力取の社会に年寄制度と云うものがある。仲々よく出来た制度で,流石は長年の伝統の結果だと思われる。しかし近年時々出羽の海親方事件とか其の他新聞の問題になつている点はやはり,古い制度が近代社会にシツクリしないものがある為であるまいか。
 元来,年寄制度とは一種の長老制度である。長年現役の力士だつたものが適当の年になつた時に,一種の株を買えば一生楽に喰わしてもらえる,と云う制度らしい。角力の社会程実力が物を云う社会はない,どんな,天下無敵の横綱でも,二,三場所黒星がつづけばその位置に止つている事が出来ぬ。この様な社会には必ず,何か養老制度がないと,安心して角力を取つているわけには行かぬ。一般にこの様な制度のない小売業者では,一定の年齢迄に,資本をためてあとは資本で喰う事が出来た。大会社の職員や役人は適当な時に天下り重役になつて,それまでの顔で結構食つて行く事が出来た。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.77 - P.77

 第12期研修科1ヵ月のコースは2月24日その全講義を終えて解散しました。慣例に従つて終る前に感想録の提出をもとめましたが,その内から1〜2意見をひろつてみましよう。
 外部講師の内にはそれぞれ専門の知識は豊富であるのに病院の実情に精通していない為に,せつかくの講義が充分利用し得るものになつていないと言う不満がいくらか有りました。これは病院が甚だ複雑なもので特殊性を持つている為でもありますが,病院内部に色々な専門家が居ない為でもあり,我々研修所としても病院を十分に知つた事務や建築や色彩や経理の専門家を養成することに努力はしているのですが,なかなか十分の成果を挙げられないで困つている点です。しかし東大の吉武助教授の如きは自ら病院内の色々な調査もやりまた実際の病院建築にも関係されていて実に細部に亘るまで病院内部を知りつくし,その講義も申し分ありません。従つて時間をかけて行けば各方面で次第に同じような専門家が出て来るだろうと期待しているわけです。一方また病院内部で事務や経理の実務を担当して人々の側からもそれ等を広い地盤で専門的に勉強する方が出て来ることを望むものです。次には講義科目ば総花式であることをやめて重点的にし,常識的概論的なところをはぶいて実質的具体的なものを増加して欲しいと言う意見がありました。御尤もなことでして成可くそうした方向に変えてゆきたいと思います。

グラフ

日本赤十字社輸血研究所

ページ範囲:P.37 - P.61

 日本赤十字社東京血液銀行が,中央に於けるテストケースとして発足したのは,昭和27年4月であつた。ここに於ける研究と経験とを基として,遂次赤十字地方血液銀行の開設を計り,その指導教育と諸資材の供給という広汎な任務のため,昭和29年4月日本赤十字社輸血研究所と改称し,組織を,(1)管理部(2)血液銀行部,(3)資材部,(4)研究部の4部に分けた。この組織の拡充強化に伴つて舎屋の新築計画を立て,完成をまつて30年1月ここに移転した。
 この建物は郵政当局の配意によつて,全国民の協力による温い心の結晶であるお年玉つき郵便葉書寄附金の中より赤十字に対する配分金によつて出来たもので,器具機械の大部分はアメリカ赤十字の寄贈したものである。

病院長プロフイル・20

原爆に屈せず蜂谷道彦氏(広島逓信病院長)

ページ範囲:P.62 - P.62

 「私は遇を厚くされればされるほど情なくなつた,自責の念にかりたてられた。責任を感じて立つても坐つてもいたたまらなくなつた。心ばかりあせつてどうすることもできない。怪我をしていなかつたら,脚の疵がなかつたら,私はそんなことばかり考えだした。脚の疵を恨んだ。私は行つてみたい,起きて世話がしたい,誰一人怪我をしていない者はない,怪我人ばかりだ。皆,それを押して働いているのだ。」これは,かつて蜂谷先生が逓信医学誌上に公表された原爆体験記(20.8.7の日記)の一節である。
 あれから10年,蜂谷先生の兵隊服は背広にかわつたが,先生のお顔の創痕はそのままである。そして,先生が院長に就任された当時の病院は,わずかに500坪,30床,それも原爆によつて全市廃墟の真唯中にぽつんと残された半壊の建物を本拠に,重傷の床から雄々しく起ち上つた先生を支柱に,関係者の不撓不屈,粒々辛苦が実つて,今では1,400坪,100床と市内でも指折りの病院に再興したが,院長室は相も変らずお粗末である。昨年から漸く全館暖房が完成して,「患者はよろこぶ,火事の心配がなくなる。燃料費がたすかる。有難いですよ。」と,まるで自分のことのようにご満悦である。しかし,先生だつて人間,立派な院長室におさまつて悪い気持がする筈はない。ところが先生は,暖房を院長室より後廻しには,どうしてもできない,真底からそう思い,そしてそのとおり実行されたのである。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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