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雑誌目次

雑誌文献

病院13巻1号

1955年07月発行

雑誌目次

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國立病院における看護業務のタイム・スタデイー

著者: 国立東京第一病院 ,   国立東京第二病院 ,   国立世田谷病院 ,   国立京都病院 ,   国立岡山病院 ,   国立京都病院 ,   萩原義雄 ,   安富徹

ページ範囲:P.2 - P.13

緒言
 本報告は昭和28,29年度連続して,厚生省医務局国立病院協同研究・病院管理・看護班の行つた研究業績の一部である。本研究の目的は「国立病院の看護業務の実態を知り,それを分析し,標準的看護体系を確立すること」にある。研究員は,東京第一,東京第二,世田谷,京都,岡山の各国立病院であつて,その中,内科,外科,産科,小兒科の4病棟をえらび,病棟の看護業務に従事する全員について,しかも,被検者全部に夫々1名宛の記録者をつけ6日間の業務の全経過を追つた追跡調査である。被検者の延人員は約1,800人,その記録者と合して計3,600人が動員されたわけである。
 その集計値,集計上の用語,数値の算出法などは,紙数の関係上ここには省略する。

病院史概説(16)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.48 - P.53

XXII.18世紀及び19世紀の病院
1)18世紀病院の実情
 18世紀に入つてからイギリスをはじめとする諸国で病院設立運動が起つてきたことはすでに見た所であるが,それ等は博愛主義の所産であつたにも拘らず全くひどいものであつた。それは一つには貧乏人を収客することが目的であつたためでもあり他方医学が実践的成果を生んでいないためでもあつた。
 18世紀から19世紀前半にかけて外科医は一般的な多くの手術を実行出来るだけの解剖学上の知識を知り得たのでその結果これ以前の如何なる時代よりも沢山の手術を行うことが出来た。所で中世及び古代の外科医は傷を清潔に保つことを研究してこの目的のために酒であつたけれどもそれを使用することを知つていたのであるが,この時代の外科医は化膿を当然のこととし寧ろ望ましいこととさえ考えていた。それで病室に於ては傷口からは膿が流れだしその臭をけすために使用する香料とその臭気がまざり合つて何んとも耐え難い状況であつた。看護人達は嗅煙草を使用することによつてその状態をやつと耐えしのんでいた。外科衣は数週間も洗濯されずベツトの敷布は何人もの患者にそのまま使用された。病室には苦痛,出血,感染,腐敗がみちみちていた。外科手術の死亡率は90%を上廻り時に100%にも及んだ。

大学病院の建設計画展望(2)—東大附属病院の巻

著者: 小林秀弥

ページ範囲:P.55 - P.60

 前5月号で御紹介した北海道大学病院の将来建築計画に引続いて今月は東京大学の計画を御披露いたしましよう。
 東大附属病院の建築計画は北大と同様に文部省内に設けられた大学病院研究会で二年程前比較的早期に承認され爾来毎年工事を進め,その一部分は既に竣工して使用している所もあります。

Doctors' Taperecord

ページ範囲:P.63 - P.64

焼けない病院は誰が建てるか
 千葉県の精神病院の火災は,戸塚の養老院に次いで,最近の痛ましい惨事であつた。原因は目下調査中らしいが,漏電説,放火説いろいろ出ている。併し,原因は何であれ,あの様な大事を惹起した最大の理由は建物が燃え易い木造であつた,ということにつきると思う。さきの養老院の場合といい,今回の病院の場合といい,ジヤーナリズムを始め第三者的立場にある人達は斯様な施設は不燃建築でなければならない,と分り切つたことを述べ立てている。こういうチヤンスを利用して必要性を大いに強調して貰うことは結構であるが,そうするためにはどうしたらできるか,ということが問題にされないので三日坊主でほとぼりがさめると世間は忘れてしまつて再びそのあやまちを繰り返す,ということになるのである。結局問題は医療経済に帰する。医療費の原価のうちに,建物の原価償却分をどうみるか,ということである。今日国民医療費の相当部分を占める社会保険では鉄筋コソクリートの施設経費は算出基礎にみられていない。長い目でみれば不燃建築の方が有利だということが分つていても,資本的条件に恵まれない多くの私的病院にとつては机上の空論といわれても仕方のない現実である。公的病院の場合は所在のコンミュニテイーに属する人達のための社会的施設ということで,別の財源に求めるということも理論的には不可能でない。併し実際は必ずしもそうはいかない様だ。

文献紹介

ページ範囲:P.65 - P.66

(B)医療制度
21)現下の日本における医療態勢 臨牀と研究31巻12号 黒沢 潤三
 医師会長として54回九州医師会医学会で行つた特別講演,医師は聖職で医業で営利事業ではないとの立場で日医の在り方を説明している。分業問題については新医療費体系は信憑性のない統計によつたものであるとし,社会保険については単価引上げ,税については課税率の引下か基礎控除の引上を主張している。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.69 - P.69

 5月31日に事務長を対象とした第53回短期研修会が終了して以来しばらく間をおいて6月16日より夏期長期研修会が開講されることになつた。受講者は僅か6名であるが国立関係や自衞隊関係の集団的参加がないのでこの程度が常態と言うべきかも知れない。出席者氏名は次の通り。
1)石川県立中央病院事務長沖野氏,此の病院は医師会側の意向などあつて始めは小病院として発足したが現在250床でなお管理棟等を増築中である。事務長は最近県吏員から病院に転出したばかりであるがそれだけ病院管理について正しい知識を得ようと言う意気がある。

座談会

台湾の病院制度を語る

著者: 守屋博 ,   橋本寬敏 ,   江萬煊 ,   小西宏

ページ範囲:P.15 - P.26

大学病院改革の経緯
 守屋  台湾の病院の仕事は,戦前は日本と同じで,我々もそうなんですが,病院管理というものは余り問題にしなかつた訳です。この間先生にお話を伺いますと,非常に戦後病院管理が振興されて,殊に大学病院を立派にお作りになつておるということでありますが,こういうようにスタートした経緯ですね,それを初めにお伺いしたいのですが。
 橋本  日本が病院を改善しようと思つて努力しておるのですけれども,いろいろの難しさがあるのです。そこであなた方では実際にどういう経過を経て,そうなつて来たかということをお話願いますと,自然に解ると思いますので。

病院給食

病院管理と完全喫食

著者: 三宅実

ページ範囲:P.29 - P.33

1.完全喫食の必要性
 給食は疾病治癒の一手段である。経営と妥当の食糧材糧費の範囲内において,如何に患者の必要栄養量を満すだけの食糧構成で,最高の調理技術を発揮しても,患老が全部食べない場合は,その目的を達することは出来ない。
 完全喫食とは言葉が適切でないが,患者に給与した食事を全部食べてもらうことであり,病院給食の要訣は,この言葉につきる。患者栄養調査等で献立の栄養価を患者栄養摂取量と云つているが,本当は患者食給与量で残飯量を引いたものが,栄養摂取量である。

グラフ

麻酔科のはたらき

著者: 小篠暉

ページ範囲:P.35 - P.46

 麻酔は完全な手術が行われるためには重要な役割を演じ,手術成績や予後にも関係が深い。麻酔学が進歩して,麻酔法が複雑になつた今日,外科医が片手間に麻酔を行うのでは危くなつたので,独立した麻酔科が出来て,手術をする何れの科とも協力するようになつた。麻酔の目的は患者の術中の疼痛を除くのは勿論であるが,之よりも重要なのは,術中の患者の生命の安全を確保して,手術が最もやり易い状態を与えるところにある。これらの目的のために麻酔専門医が責任をもつて麻酔を施し,術中麻酔については手術者が何等顧慮することなく,手術に専心できるように協力することが必要であり,これが麻酔専門医の義務である。手術後麻酔から恢復する間の管理や麻酔によつて起る色々の合併症等の処置も麻酔専門医が責任をもつて行う。
 以下麻酔專門医がどのようにして麻酔を行い,手術に協力するか写真によつて説明すると次の通りである。

病院長プロフイル・23

温泉医学の開拓者髙安慎一氏(国立別府病院長)

ページ範囲:P.47 - P.47

 人生を「正しく清く明るく強く且つ温く」幸福に送つて行きたいとは誰れしも念願する所であるが,高安慎一先生は,この人生の五種競技に於いての優秀なる成績の「レコード」所有者であり,選手でもある。成程,医学界に於いては学識経験,政治力,E・T・C,有能多才の人は数多いが,ほんとうに人生を人間らしく生き「人生の幸福は何か」「人間のあり方は」かくあるべしとの「サンプル」が先生の歩いてこられた道である様に拝察している。
 先生は,明治17年6月東京に御出生,明治41年福岡医科大学卒,同43年熊本医専教授(生理学),明治45年欧洲留学,帰朝后熊本医大教授,大正13年九大に帰学,昭和元年温泉医学研究に再度欧洲留学,帰学されて九大教授兼九大別府温泉研究所長として温泉医学を開拓せられ,又昭和18年には鹿兒島医専,ついで鹿兒島医大学長として医育方面に尽大なる功績を残されていることは周知のことである。次いで昭和23年現在の国立別府病院長として着任せられ,深い御学識,御経験と温客なる御人格は,医局医員,院内職員の崇仰の的となり,患者の信頼となり,病院管理に医療面の向上に努力せられたるは申すまでもない。特に温泉治療学第一人者としての御抱負は厚生省昨29年度国立別府病院に国費3千万円の巨費を投じて天下に誇る先生の年来の宿願の殿堂たる壮大なる大温泉治療病棟を整備し,鬼に金棒を与えた。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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