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病院史概説(16)
著者: 岩佐潔1
所属機関: 1病院管理研修所
ページ範囲:P.48 - P.53
文献購入ページに移動1)18世紀病院の実情
18世紀に入つてからイギリスをはじめとする諸国で病院設立運動が起つてきたことはすでに見た所であるが,それ等は博愛主義の所産であつたにも拘らず全くひどいものであつた。それは一つには貧乏人を収客することが目的であつたためでもあり他方医学が実践的成果を生んでいないためでもあつた。
18世紀から19世紀前半にかけて外科医は一般的な多くの手術を実行出来るだけの解剖学上の知識を知り得たのでその結果これ以前の如何なる時代よりも沢山の手術を行うことが出来た。所で中世及び古代の外科医は傷を清潔に保つことを研究してこの目的のために酒であつたけれどもそれを使用することを知つていたのであるが,この時代の外科医は化膿を当然のこととし寧ろ望ましいこととさえ考えていた。それで病室に於ては傷口からは膿が流れだしその臭をけすために使用する香料とその臭気がまざり合つて何んとも耐え難い状況であつた。看護人達は嗅煙草を使用することによつてその状態をやつと耐えしのんでいた。外科衣は数週間も洗濯されずベツトの敷布は何人もの患者にそのまま使用された。病室には苦痛,出血,感染,腐敗がみちみちていた。外科手術の死亡率は90%を上廻り時に100%にも及んだ。
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