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雑誌目次

雑誌文献

病院13巻3号

1955年09月発行

雑誌目次

対談

我が国最初の高層病院—満鉄大連病院のこと

著者: 戶谷銀三郎 ,   守屋博

ページ範囲:P.2 - P.10

新築計劃の発足
 守屋  戦前大連で満鉄が非常に立派な病院を経営されたのですが,これは年代から申しまして大正10年頃ですか。その計画が始まつたのは。
 戸谷  私は以前に大連にいましたが,当時奉天に医学校があつて,そこの教授を一時やつておりまして大正8年に大連に戻りましてからのことです。大連病院を新築したいという考えは当時の満鉄にあつたので,それからいよいよ,その実行をせよということになつて大正10年ごろから計画しはじめました。

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Closed Systemと医師の勤務体制(1)—病院人事管理のうち

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.11 - P.13

 医師という職業は,固有の意味でのprofes-sionとして,本来自由であるべきものとされる。アメリカ医師会の倫理規定で,医師は第三者との雇傭関係に入つてはならぬとされているのはその為であろう。ところが,我が国では病院はすべてclosed systemであるから,其処に勤務する医師は,当然雇傭関係に立つものであり,これに診療所勤務の医師を加えれば,我が国の医師の大半は,何等かの形の雇傭関係の下にその業務を行つているということが出来る。若し,医師の業務が徹頭徹尾自由であるべきものとすれば,こうした我が国の医療体制は,当然医療の本質上好ましくないものと言わねばならぬ。だが,closedsystemが我々の現在直面している現実である以上,問題は,ただそれが好ましくないというだけでは済まされない。就中,closed systemに於ける医師の在り方及びその勤務体制の問題は,このsystemの中核をなす最も根本的な問題として,充分な検討が加えられなければならない。そこで本稿では,先ず,closed systemに於ける医師の存在の特質を特に医業の自由性との関連に於て考え,更に進んで,その特質に即した勤務体制の在り方について検討を行つて見たいと思う。
 医療は,これを最も単純化して考えれば,医療を施す者と医療を受ける者との間に行われる治療を目的とする医学的実践であると言える。

伝票制度の檢討と補遺

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.15 - P.22

 病院会計の合理化の手段として伝票制度が最も適したものであると考えられ,その具体的な方法については先に,守屋,染谷,三沢の3氏の研究の結果が「病院」9巻4号に発表された。これは国立東京第一病院において昭和28年より実行に移して現在に至つているが,伝票制度の体系立つたものとしてしばしば引用されているものである。
 しかしながら何事によらず考を実行に移すにあたつては,細部の実施にさらに取りきめを要したり,予期されなかつた点も現われたりするものであつて,権威ある3氏の研究になる伝票制度についても解説を要する点がみとめられるようである。そこで現実におこる問題を検討し,伝票制度を円滑に実施する上に必要と思われる点を補つてみたいと思う。

退院患者統計から見た国立温泉病院

著者: 伊藤久次

ページ範囲:P.23 - P.29

 私は1昨年"病院"誌上で,「温泉病院」とは単に温泉地にある病院ではなくて,「温泉科」或は「温泉治療科」というべき診療科名は現行医療法では認められていないが,温泉場数933,源泉数6305と称する温泉国日本では必ずや将来設定されるであろうと思われる「温泉」に関する診療科名を病院名に冠したものであつて,温泉地にあつて,温泉治療専門家が居り,温泉療法を治療の主体とした病院を呼称したいと唱え,温泉病院運営上経験した若干の問題について述べた。今日,温泉病院として認められる代表的のものを挙げると,
(登別)北大温泉研究所,国立登別病院,登別整形外科病院。(鳴子)東北大鳴子分院,国立鳴子病院。(飯坂)県立飯坂病院。(塩原)国立塩原温泉病院,公立塩原温泉病院。(草津)群馬大学草津今院。(箱根湯本)国立箱根療養所。(湯河原)湯河原整形外科病院。(熱海)国立熱海病院。(月ヶ瀬)慶応大学月ヶ瀬温泉研究所。(伊東)国立伊東温泉病院。(上山田)国立長野病院。(白浜)国立白浜温泉病院。(山中)国立山中病院。(三朝)岡山大学温泉研究所。(玉造)玉造整形外科病院。(嬉野)国立嬉野病院。(別府)九州大学温泉研究所,国立別府病院。(霧島)鹿児島大学温泉研究所。 等があるが,大学関係のものは特に研究に重点を置き,整形外科病院では整形外科手術療法を主として温泉療法,物理療法を併用し義肢装着訓練等にも温泉を効果的に利用している。

病院診療圏と入院動機に関する研究(第1報)—国立東京第一病院における診療圏と入院動機との考察

著者: 守屋博 ,   岩佐潔

ページ範囲:P.40 - P.44

緒言
 病院の入院患者が如何なる経路で入院し又如何なる動機で当該病院を撰択したかと言う問題は病院管理の上からも又医療政策の上からも重要な意義を持つています。それ故国立東京第一病院(以下東一と称す)の入院患者についてその入院経路及び動機に関する調査を行いそれが当該病院の診療圏と如何なる関聯にあるかについて考按を試みました。
 なお本研究は昭和29年度厚生科学研究費による「病院の診療圏に関する研究」の一部として行われたものです。従つて「国立東京第一病院に於ける入院患者の診療圏構成に関する研究並びに一般病院診療圏の分析的考察」註1)に関連しているものです。

外来患者の実態調査

著者: 福岡壽三 ,   山本猛

ページ範囲:P.47 - P.51

まえがき
 病院が患者のために存在するものである限り,患者の意志又は希望を医療上支障がない範囲において十分に充すことを考えることは,病院の責務であると思われる。サービスの改善とか昂揚とかいう言葉は,日常よく使われているが,これが具体的実行手段となると,盲点があまりにも多く,兎角掛声ばかりに終りがちのものである。当病院に於ては昭和26年度をピークとして外来患者数は,年々減少の一途をたどつている。この原因は何辺に存するか? これの究明と,これが改善資料とあわせて病院経営上の参考資料を得るため,昨年9月当病院で実施した外来患者実態調査の結果を発表して諸賢の御参考に供したいと思う。いくらかでもお役にたてば倖である。
 この調査は別図外来患者調査表を用いたが調査項目は主として1 患者はどんな乗物を利用して来院しているか。2 来院するまでの所要時間は,どれくらいかかるか。3 どう云う理由でこの病院を利用しているか。4 どういう経緯でこの病院を知つたか。5 各個所での待時間はどれくらいかかつているか。6 病院に対して,どう云う意見又は希望を持つているか。であつた。

ライ患者の收容(1)

著者: 森幹郎

ページ範囲:P.53 - P.58

 当所は明治42年大阪府下に他の4療養所(青森,東京,香川,熊本)と共に府県立連合療養所として開設せられ,昭和9年の風水害で全滅した後当地に移り昭和16年他の4療養所と共に厚生省に移管せられた。現在地は岡山市の東方8里,自動車にて1時間の行程にある。瀬戸内海の一小島長島の西半に位している(因に東半には同じく国立ライ療養所長島愛生園が昭和5年以来開設せられている)。收容患者は965人(昭和30年2月14日)定員は1250人で,規模は国立ライ療養所中,中程度である。筆者は名古屋大学経済学部卒業後当所に職を奉じ,患者係職員として文化教養方面を担当し,特にライ患者集団の社会心理を研究している者である。

大学病院の建設計画展望(4)—京大附属病院の卷

著者: 小林秀彌

ページ範囲:P.61 - P.64

沿革
 前号の名古屋大学附属病院の将来建設計画紹介に引続いて今回は京都大学の附属病院をとりあげたいと思います。
 京大附属病院の将来計画は前々回に紹介した東京大学と同様に約30年以前に考案された永久建築計画にもとずいて既にその過半は出来上つていて戦争のため後の建設を中断していたのであります。

病院史概説(18)

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.67 - P.73

XIX.近世ドイツの病院
1)近世病院への推移
 ドイツ史の特色はその歴史的事情に制約された後進性と地方的割拠性にある。病院の歴史もその例外でなくイギリスやフランスのそれに比して遙に遅れていた。すでに述べた様に法王イノセント3世の努力に依つて聖靈教団Ordensbrüder vom heiligen Geistがドイツ各地に拡められ1208年にはベルリン市内に聖靈病院が造られたのを始めとしてその後2〜3世紀の間ドイツ中の大小都市に同種病院Heiliggeisthospitälerが造られた。この例と成果が刺戟となつて各種教団(Spitalorden)が造つた中世期病院は非常な数に昇つているがその内のあるものはその教団Johanniter, Deutschritter, Lazaristen, Beguinen, Antoniter, Alexianer, Kalands-brüder等の名称を冠して長く存続している。一方St. Georgs教団は癩病院(Lazarette)を東ドイツの各地に造つた。その最初のものはHalberstadtの司教Ludolphusが1278年(或は1258年)に設立したものである。これらSt. Georgshospitälerはいずれも市の城壁外部にあつた。

Doctors' Taperecord

ページ範囲:P.75 - P.76

よしのずいから天をのぞく
 よしのずいも近代社会では素朴な昔と違つて簡単でない。何か特殊のレンズがはめこまれる場合があるので,笑いごとですまされないことが多い。この様な特殊レンズをある人々は,事象の類型化とか,ジヤーナリズムの魔力などと呼んで警告を発しているが,吾々の周囲にもこの様な現象は決して少くない。既にけりのついたことを今更むし返すにも及ばないけれども,例の医薬分業問題でも同じ様な感じを否定できない。随分長い時間をかけてもみにもんで来たにも拘らず,又この問題は国民生活に非常に密接な問題であつたに拘らず,国民大衆の大部分には結局何のことだか最後まで分らずじまいで片がついたのではあるまいか。元来医薬分業そのものを利害得失の面からフランクに考えると,医師がこの実現を希望して薬剤師(特に町の薬局)が義務として引うける,というのが筋だと思われるが,我が国の現実は正に逆であつた。そして結果は医師も薬局も共に多種多量の薬品を常時準備してそれだけ多くの資本をねかせておかなければならない破目になつてしまつた。これでは喜ぶのは製薬会社ばかりで,結局何のことか分らなくなつてしまつたのである。これにはいろいろわけがあつたのには違いないけれども,問題の焦点は,医師側も薬剤師側も又社会一般も,医薬分業そのものと医薬分業法案をごつちやにして論議した所にあるのではあるまいか。

文献紹介

著者: 岩佐

ページ範囲:P.79 - P.80

(B)医療制度
35)新しい医療制度 厚生省 日本医事新報No.1635明年4月1日から予定されている医薬分業に対する説明書で昭和30年8月15日付官報第8586号附録資料を更に解説したもの。
36)欧洲諸国の医療制度と事務の詳細 大村潤四郎,藤卓雄 社会保障8巻9号

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.83 - P.83

 厚生科学研究費による要望課題に対する一般公募者の採用決定がなされて各方面で色々な研究が始められたことと思いますが当研修所に対しても直轄研究として次の2題が割当られました。いずれも要望課題は「病院の機能に関する研究」でその内1つは研究課題「専門医制度に関する研究」今1つは研究課題「病院の医療能力による分類とその設備の基準に関する研究」となつています。
 専門医制度に関する研究はすでに日本医師会においても取上げられ医学教育委員会において論議が進められている一方日本医学会を通じて各分科学会にそれぞれの科の専門医制度を研究して貰つて居り,これらの研究は或程度の進展をみている様です。一方文部省にある医学視学委員会でも学位制度や大学院制度と関連して専門医の問題を取上げています。この様に既に各方面において検討が進められているのですが,更に厚生省として正式に取上げる為の基本的方針決定の参考とするために当研修所にこの間題の研究が委嘱されたわけです。しかし以上の状況からも判る様に本研究は純然たる学問的立場に立つて研究をすすめるには余りに政治的で専ら行政的な立場で政策論的に解決を迫られている点が多数にありますので研究員の構成も研究班と言うよりは寧ろ厚生省の諮問委員会の様な形になつています。即ちそのメンバーは下め通りです。

グラフ

高血圧治療センター—国立名古屋病院

ページ範囲:P.31 - P.38

 最近の医学の進歩殊に諸種抗生物質の出現は我が国の感染症就中結核死亡の激減を招来したが,一方老人病である高血圧症,癌等による死亡は寧ろ増加の傾向にある。
 この老人病対策のテストケースとして厚生省の指示により高血圧治療センターが昨年10月当院に誕生した。即ち専門外来の設置,和田副院長の発案である高血圧治療学校と名づけた病室の開設,爾来10ヵ月の現在,漸くセンターの運営は軌道にのつた感がある。

病院長プロフイル・25

堅実にして稠密なネバリ深い病理への造詣中院孝円氏(神戸医科大学附属病院長)

ページ範囲:P.39 - P.39

 先生の名前は珍しく変つた名で誰も一度きいたら忘れない。正しい読方は「なかのいん,たかまる」だが大低の人が"ちういん,こうえん"とよむらしい,正職は神戸医科大学教授及び附属病院長だが兼職が中々多い。そのうちでも兵庫県病院協会長の位置に於ては兵庫県をトツプラインにまで発展させた手腕を見逃せない。それが実に地味な行方であるが協会の事業や実績には派手に現れてくる。でも病院協会長にしても院長でも社交的な動きというより理論的に堅めた行政でコツコツ目的を発揮するといつた行方である。間違いのない所である。
 病院長就任後兵庫県病院協会長を引受けられたが職責上からの発奮というか病院管理学を特に研究され,爾来神戸医大病院は先生の経営目標を重点的に現し着々内部的改革が行われつつある。スロー・バツト・ステデーといつた行き方だから絶対に退行しない堅実振りである。しかし或程度まで改善ができたら後は少しスピードアツプされても皆さんが協力して先生の目的を思う存分達してあげたいものだ。

読者の声

事務長論ノート

著者: 岡島正義

ページ範囲:P.77 - P.77

 最近の「病院」誌5月号はそのTaperecord欄に「番頭制度」として,早晩くずれるべきものとして,現行の院長,事務長制度を採り上げている。誠に示唆に富み且つは問題の多い提示であると思う。
 病院は人気商売だと思う。その意味で,院長は臨床の大先生であるか,或は特に患者に親切,熱心な臨床医であることが望ましい(勿論他の科の医長,医員も亦この例に洩れないではあろうが)。そこでは事務長は正にカクレたるものとして,経営上後顧の憂いを無からしめるにあるであろう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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