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病院史概説(20)
著者: 岩佐潔1
所属機関: 1病院管理管修所
ページ範囲:P.51 - P.59
文献購入ページに移動1)イギリスの社会保障制度
高層大規模病院が続々と建設されているのが20世紀の特長でありその代表であるアメリカにおいても此等病院相互間のある種の連携が問題とされていることは既に述べたが,これを「多元的集中的結合方式」と呼ぶならばイギリスにおいては経営主体を統一して国家事業として病院運営を行う所の「一元的散在的結合方式」が実現した。これ等2方式はその発現形態を幾分異にしてはいるけれども国家的規範において医療網の完成を実現し国民全体に必要にして十分な綜合的医療を与え得る体制を確立しようとするその意企は同一であつて社会保障制度と関連した20世紀における1つの世界史的動向と見なければならない。
イギリスに於ては社会保障制度の前駆的制度としてエリザベス女王の治世1601年に救貧法が制定され,一方にはギルドや友愛組合等の私的な相互扶助も可成り発達していた。1906年の総選挙では自由党が社会改革の計画を旗印にして大勝利を得た。この自由党と言うのはアスキスや,ロイド・ヂヨージにひきいられたもので労働者を代表する政党の最初の勝利であつた。1908年には救貧法とは本質的に異なる権利として要求し得る様な70才以上の老齢年金と学校における無料の医療サービスが始められた。1912年には同じくアスキス内閣の蔵相ロイド・ヂヨージによつて健康保険法と失業保険法が作られた。
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