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社会保障の一般的概念(1)—社会保障と公的扶助
著者: 一条勝夫1
所属機関: 1東北大学
ページ範囲:P.27 - P.32
文献購入ページに移動1.社会保障の意味
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。これは日本国憲法第25条に成文化された国民の生存権である。こうした規定にまつまでもなく,人間が人間らしい生活を享受するのは,近代社会に生きるあらゆる人間の当然の権利であり,基本的な人権として成員相互が尊重し擁護しなければならぬのは勿論である。
しかし乍ら,現実の社会生活においては,人間的な生活はおろか,動物的な生存さえ脅されている人達が甚だ多い。昭和25年国勢調査によれば,独立の家庭生活ができない「非住宅」に住む者は45.5万世帯もあり,88.7万世帯が6畳未満の狭苦しい住居に住む。一方,勤労者の11%以上が月額12,000円以下(昭28.11)の零細所得者であり,昭和30年3月末には84万の完全失業者が存在ずる。こうした断片的な統計からも推測できるように,われわれの生活は,享有するにも又,擁護するにしても,あまりにもあわれな現状であつて,他人の援助はおろか,自活の資を得るさえやつとの事である。このような中にあつて,就労できない老人,不具者,寡婦,孤児などの人々が貧窮のどん底にあえぎ,絶望的な生活を送つているのは当然である。しかも現に元気で働いている者さえ,老令,病気,災害,失業等の不断の脅威になやまされているのである。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。これは日本国憲法第25条に成文化された国民の生存権である。こうした規定にまつまでもなく,人間が人間らしい生活を享受するのは,近代社会に生きるあらゆる人間の当然の権利であり,基本的な人権として成員相互が尊重し擁護しなければならぬのは勿論である。
しかし乍ら,現実の社会生活においては,人間的な生活はおろか,動物的な生存さえ脅されている人達が甚だ多い。昭和25年国勢調査によれば,独立の家庭生活ができない「非住宅」に住む者は45.5万世帯もあり,88.7万世帯が6畳未満の狭苦しい住居に住む。一方,勤労者の11%以上が月額12,000円以下(昭28.11)の零細所得者であり,昭和30年3月末には84万の完全失業者が存在ずる。こうした断片的な統計からも推測できるように,われわれの生活は,享有するにも又,擁護するにしても,あまりにもあわれな現状であつて,他人の援助はおろか,自活の資を得るさえやつとの事である。このような中にあつて,就労できない老人,不具者,寡婦,孤児などの人々が貧窮のどん底にあえぎ,絶望的な生活を送つているのは当然である。しかも現に元気で働いている者さえ,老令,病気,災害,失業等の不断の脅威になやまされているのである。
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