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雑誌目次

雑誌文献

病院14巻5号

1956年05月発行

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座談会

医療行政にのぞむ

著者: 小沢龍 ,   小西宏 ,   橋本寬敏 ,   勝俣稔 ,   小山武夫 ,   橋本寿三男 ,   神崎三益 ,   曾田長宗 ,   守屋博

ページ範囲:P.2 - P.10

 小西今日ばお忙しいところをお集まり下さいまして有難うございました。ここ2,30年の日本は非常な激動期で,政治的にも社会的にも非常に大きな変革が相ついで起りました。医学の分野でも,最近の進歩というものは非常にめざましく,医学上のいろいろな変遷が医療行政の面に大きく影響して参つております。それで戦後丁度10年を経過しました今日,過去のそういう激変期の広く言えば衛生行政,その中で特に医療行政の歩みを回顧し,それから将来の医療行政の在り方というものを論じて頂こうというのが本日の座談会の主眼でございます。
 最初に昔の医療行政はどうであつたか,戦後はそれがどう変つて来たか,それから将来はどういう心構えで行つたらいいか,というような順序でお話し頂ければと思うわけでございます。昔の医療行政を知つておられる方がだんだん少くなつて参りましたが,戦前,戦時中,それから終戦直後を通じて衛生行政の中心におられた勝俣先生に偶々御参加を願えましたので,当時のお話を伺うには甚だ好都合と考えます。

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病院の経営管理と原価計算(1)

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.13 - P.18

病院の経営管理の困難性
 病院ほど経営管理の難しいものはないとよく言われる。10年も20年も病院の経営管理に当つて来た院長先生すら殆んど皆異口同音にそう言うのだから,確かにそうなのだろう。それでは,何ういう点が病院の経営管理をそれ程難しくしているのだろうか。
 私は,その第一の原因は,病院の生み出している医療ナービスはその種類が極めて多種多様だということ,つまり,病院が稀に見る多種生産経営だという点に求められると思う。事実,同じサービス生産経営でも,それが例えばただ一種類のサービスだけを行つている理髪業というようなものであれば,仮令それがどれ程大規模の経営になつたとしても,その為にその経営管理が特に甚しく難しくなるというようなことはないであろう。其処では,経営規模の拡大は,経営管理の面に対しても,単に量的拡大を齎すに過ぎないからである。所が病院の場合は,それが全科病院の場合は特に,その多種生産性の故にはじめから相当の規模が要求せられると同時に,その規模の拡大は,経営管理の面では単なる量的拡大としてではなく,多種生産を把握することの困難さの貭的拡大としてあらわれ,而もそれは規模の拡大につれて加速度的にあらわれて来る。そうした点で,病院の経営管理の難しさは,いわば,一般の小売店に対する百貨店の経営管理の難しさという風なものとも言えよう。而も,一般に,生産は販売よりも一層複雑な過程と機構を必要とする。

諸外国の專門医制度の概要

著者: 専門醫制度研究会

ページ範囲:P.21 - P.31

まえがき
 最近専門医制度の必要が各方面で再認識されその制度設定に対する機運が次第にたかまりつつある様に思われる。それは学制の変革による新制大学院のあり方の問題やそれと関連した従来の学位制度の変更等の事態にも影響されていると思われるが,結局は医学の進歩や医療状況の進展に伴う当然の趨勢であつて国民医療の安定を確保する上から当然の成行きと考えられる。アメリカを始めとする諸外国でこの制度が次第に造られて来ているのはその証拠であり,それは世界史的な一つの動向と見ることが出来る。
 この時に当つて専門医制度研究会は厚生大臣の委嘱を受けこの問題を研究することになつた。この専門医制度研究会と言うのは仮称であつて実は坂口康蔵氏を主任研究者とする昭和30年度厚生科学研究費による「専門医制度に関する研究」の研究班のことである。この研究会においてはその仕事の第一歩として諸外国の専門医に関する制度の実情について資料を集めたので,その内主要なものについてその概要をここに公表して本問題に関心ある諸氏の論議の参考に供する次第である。

調理士の疲労

著者: 武富寿美子

ページ範囲:P.49 - P.52

 調理士の疲労は,給食管理を合理化する上の一要点となると思う。私たちの療養所は不知火海にある離島に存在し,しかも約30度の傾斜をもつ山腹に9つの病棟が点在している。そして炊事場はその山腹の1/3の高さのところにある。このような地理的,地形的の不利な条件のもとで,給食管理をどう合理化するかが,さし迫つた問題となつている。私たちは給食管理の合理化について調査研究を続けて来ているが,ここには調理士の疲労について調査した結果を報告する。

ライ患者の軽快退所(1)

著者: 森幹郞

ページ範囲:P.53 - P.58

1.初めに
 筆者は数回に亘りライ患者について書いて来た。即ち初め,在宅患者がどのようにして療養所に入所するかを述べ,次に,療養所に於る結婚生活についてふれておいた。併しその療養所についてもう少し説明せねばならないようである。
 療養所と云つてもそこは全員がベツドに寝ている病院とは凡そ性格を異にし,そこでは「療養」と云う概念とは凡そかけ離れた普通の「生活」が行われている。

Doctors' Taperecord

著者:

ページ範囲:P.61 - P.62

1.はじめに言葉あり
 言葉の使い方はむずかしいものだ。殊に専門用語になるとこの感を深うする。一歩誤れば大変な誤解を起す危険がある。
(a)医療社会事業  先ず医療社会事業は社会事業に非らずとズバリと言つておく。これを病院に於ける社会事業だと心得て居る人があつたら,それは近代病院では落第生である。だが,まだまだ医療社会事業士を患者の医療費問題の係だと考えている病院が少くはない。このケースワーカーは社会福祉事務所との交渉だけに働かされているらしい。医療社会事業士は事務員ではなく診療補助業務の一係員である筈である。患者の経済問題は医療を受けることを阻む一つの条件として派生するファクターである。但し現在の我が国では経済問題の取扱いを必要とする場合が多いのは,一つの社会条件であるから,これを排斥する意味ではない。

新潟県立中央病院長高橋敏行博士の死を悼む

著者: 小沢

ページ範囲:P.63 - P.63

 先般,厚生省が立案した新医療費体系は,医師会側から手きびしい非難をうけた。医療費体系のあるべき姿として不当極まるという理念上の反対のほか,この新医療費では病院・診療所の収入が甚しく減少する点に不満が強かつたようである。
 新聞紙上などでこの問題がやかましく論ぜられている最中,医師会の所論と全く相反する調査結果が「毎日新聞」に大きく報道されて,世間をアツと驚かした。発表した人は新潟県医師会の理事であり都道府県立病院協議会長である高橋博士であつた。「県立病院側の調査によると新医療費体系は公立病院の収入減とはならぬ」というのである。

あとがき

著者:

ページ範囲:P.64 - P.64

 山野のみどりが清々しく目に映ずる時候となつた。長い冬にとざされていた北の国では,梅,桜,桃の花が一せいに妍をきそい,四季を通じて最も色どりの豊な時季である。病院ではボツボツ患者が増し始め忙しくなる時期でもある。
 近年程医療問題が世間で騒がれたことは曽つてないことであろう。就中この半年ばかりは国会を中心に国の政治を大きくゆすぶつた。今や医療問題は医学的処理だけでは解決できない段階に到達し,社会的,政治的処理を併せて必要とするようになつて来た。医療機関の中枢的存在を占める病院が,この間にあつて如何なる役割を果して行くべきか,一つの命題である。戦後満10年を経過し,いろいろな点で一時期を画すべき今日,この山積した医療問題を抱えて今後如何なる方向へ医療行政の舵をとられるべきかということは,今後における病院の使命と不可分の関係をもつてくる筈である。5月雨煙る一夕過去及び現在を通じ医療界のベテランの方々にお集まり願つて,将来の医療行政を卜して頂いた。

グラフ

療養所の給食—国立療養所 浩風園

著者: 長井盛至

ページ範囲:P.33 - P.45

 どこの療養所でも栄養部の人達には陽が当つていな過ぎる。病棟の看護婦にはよく陽が当つていて,患者からの感謝も,所長以下の職員からの認識も十分うけいれることが出来るが,栄養部の苦辛は直接自分達の耳に入つてこないばかりか,所長以下スタツフからの関心もうすい。これでよい給食をさせようとするのは要求する方が無理だ。結核治療上最も大切な給食を担当させる栄養部にはもつとよく陽を当ててやらなければならない。これが私の給食改善へのモツトーである。
 1日96円10銭平均の材料費で,蛋白質80瓦,脂肪40瓦前後で,熱量2,300カロリーを与えることの出来る献立をつくるのであるが,バラエテイーに富み,綺麗な盛付,美味な味を出すことは調理場全員の努力によつて初めて可能となるのである。

病院長プロフイル・32

生來の病院管理者国立大阪病院長佐谷有吉博士

ページ範囲:P.46 - P.46

 第6回日本病院学会は今回始めて中央を離れて来る6月17日大阪市で開催されるが,その会長をつとめるのが国立大阪病院長の佐谷有吉博士……。
 明治44年東大卒,土肥慶藏博士の門に入つて,皮膚科泌尿器科を専攻したが,入局3年で早くも京都府立医専教授に就任,以後大阪大学教授,同病院長,同医学部長,同名誉教授と順調な経歴をたどつたので,下積の苦労を知らぬと言われる、何しろ府立医専では先生より年上の学生が,いく人もいたそうだ。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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