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病院創立の苦心—(警察病院の思い出)
著者: 坂口康藏1
所属機関: 1国立東京第一病院
ページ範囲:P.3 - P.8
文献購入ページに移動 私が病院の経営に関係する様になつたのは,大正12年関東大震災の際,日本赤十字社で罹災者救護のために東京市内の5ヵ所に臨時バラツク病院を作るからその内の1つである浅草本願寺の境内に建てるものを東大に依頼してきたので時の医学部長入江先生の命で大学と兼任で行つたのが始まりである。当時私は稲田内科の助教授をして居り幸い火災は免かれたが,その時の赤十字の方針としてはこの病院は罹災者救済を目的とし短期間の物であるから,医員も可及的罹災者を出して貰いたい。事務員,薬局員は本社で臨時に罹災者中より志望者を雇用し,看護婦は戦時に準じて予備で帰郷して居る者に召集令状を発して,これを付るとの事であつた。私はこの命令を受けた時,この編成では統制が容易でないと考え,私の補佐役として先生の医局の坂本君を副院長としてつけて頂きたいとお願いした所,今暑中休暇で広島に帰つて居るが間もなく帰つて来るから赤十字に話して副院長にしてやろうとの承諾を受けた。その他の医員は全部焼け出された人々であつた。予想通り内部的にも多少のごたごたがあつたが,そのほうの始末は大部分坂本君に依頼し,私は主として外部との交渉に専念した。僅か半ヵ年の病院経営であつたが私にも坂本君にも良い経験となつた。病院の経営にはその全員を喜んで一致協力せしむる事が大切であり,又至難な事でもあり,当初の人選には注意せねばならぬと云う事を感じた。
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