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雑誌目次

雑誌文献

病院15巻1号

1956年07月発行

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座談会

病院と厨房

著者: 秋元時一郎 ,   伊藤一郎 ,   三ッ沢義治 ,   尾村偉久 ,   馬場鋭之助 ,   小西宏 ,   宮川哲子 ,   橋本寿三男 ,   熊野秀德 ,   守屋博

ページ範囲:P.2 - P.10

 小西 日本の病院も最近は建物の点でも,設備の点でも非常に水準が上つて参りましたが,世はオートメーシヨン時代に入りつつある訳ですから今後益々仕事の能率を上げる為に良い設備或は便利な器械というものの活用を考えて行かなければならぬと思います。病院の給食は単に食べ物を与えれば良いというものじやないので,治療の非常に重要な部門を占める大切な機能として,特に関心が向つて来ております。そこでこの病院の厨房の合理化能率化ということが大事な問題になつてくるのですが,本日お集まりのメーカーの方々は一流の会社の方々と承つており,皆様方の間でも常日頃研究を熱心に進めていらつしやるというように伺つておりますので,今日はその御苦心や新しい器械のお話など承り,又私共病院の経営にタツチしておる者からいろいろ希望なり意見なり申上げる。こういうようにこの座談会を進めさせて頂きたいと思います。
 そこで先ず夫々の会社でいろいろの特色もお持ちじやないかと思いますので,そういう点について最初にお話願つたらと思います。

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円形病院の得失—武藏野赤十宇病院内伝染病棟について

著者: 坂本鹿名夫

ページ範囲:P.13 - P.20

1.円形建築の創案
 円形の建物は昔から珍らしいものではない。現にエスキモーの氷の家や蒙古のパオは古来のものであり,極めて少ない材料で合理的に造られているのに感心させられる。近来コンクリート構造の発達に倶い再び建物は必ずしも四角に造る許りが定石でない事に着目され始めた。筆者は幼時よりガスタンク或は樽又は桶等の構造に特に興味を持つたし,大学の卒業計画は円形の格納庫の上に廻転飛行台を持つた高架飛行場と云つたもので建築学会誌昭和12年6月号に採録されている。戦後土地及び物資の窮乏のため益々合理的建築の要望強く,はしなくも箸者創案による円形校舎,円形病院等の案がジヤーナリズムの波に乗りはじめて世の注目を浴びる様になつた,
 而もその機会に世の通念を打破つて円形建築は却て安価に建設出来ると云う事が始めて世間の人々の知る処となつた。この事実は,専門家の間でも未だに納得の行かぬのか,現に徒らに私の形態のみを摸倣して設計した人々の間では円形必ずしも安くない等と広言して憚からぬ人さえある位である。しかし一般人士は既に円形経済説を信用する様になり建築家に対し一応は円形プランの試作を要求するという傾向さえ生じ,自由な形態に修練しない設計家を面喰わせていると云う事実を生むに到つた。

医師の指示と看護の記録

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.23 - P.28

 日常の病棟業務において,医師が指示をして看護婦が実施する事項が幾多ある。この場合に,医師が指示する方法,看護婦が指示を受領して実施する手順,これらを記録する方法等いろいろのことが問題となつている。古い病院管理の形態においては,現在ほど問題とすることではなかつた。なぜならば,看護婦は医師の診療助手的な立場にあつたので,記録は医師に必要なことだけが書かれたし,看護のための特別の記録というものは重視されていなかつたからである。医師の指示も口頭でなされ,覚え書程度に,あるいは診療上特に必要であるということだけが記録されていた。
 ところが看護業務が独立し,医師と看護婦の関係が変化してみると,医師の指示の取扱いとか看護の記録とかいうことが,さしあたつての問題となつてきた。今までのままではいろいろと不都合の点が目についてきたのである。この問題は医師と看護婦という特殊な関係にある二つの職種を結びつけるものだけに,それぞれの言い分もあつて,容易には割り切れない。しかし医師と看護婦のチームワークいかんが患者の療養に直ちに影響するのであつてみれば,いつまでも放置しておくわけにもいかない。

新看護体制開始まで

著者: 最上修二 ,   遠山有能

ページ範囲:P.31 - P.36

はじめに
 我国の病院療養所に於ける入院患者の所謂附添婦制度については,いろいろの面から考慮しなければならない点がある。特に終戦後は,或る病院療養所で,再三好ましくない問題を惹起し,その度毎に種々社会的に論議の的となつて,その都度この附添婦制度はその場凌ぎのような姑息的改正でお茶を濁した観があつて今日に至つた。
 さて古くからアメリカ式で運営せられていた聖路加病院では,今日で云う完全看護であつたのは周知の事実であり,此処数年来国立病院やその他の大病院でも,完全看護を実施している。

病院給食に於ける献立カード並びに榮養価グラフについて

著者: 勝海博

ページ範囲:P.53 - P.58

はしがき
 患者給食は病院業務の最も重要な要素の一つであるだけに,管理者も給食関係者も常時真剣に研究を要する事項であるが,実行上には献立・調理の過程に於いて関連する事項が多岐繁雑であるだけに解決を要する問題が少なくない。
 即ち,これに充当し得る予算,従事員の数と質の問題,調理施設,材料の入手方法,衛生管理等,又技術的の面からみても給与量の算出,これを完全に摂食せしめるための季節その他に応じた材料の選定,並びに調理,味付,適温食給与,配膳方法,食器の問題,更に給食効果を判定する残量の計測,嗜好調査等挙げれば際限のない問題が存在する。

完全寝具の実施に伴う経費にいて—家政係の概況・3

著者: 橋本正二

ページ範囲:P.61 - P.66

まえがき
 完全寝具が一部の大病院に実施されてから,すでに数年を経たように思うが,一般的にはまだ充分哲蒙されていないようである。
 この制度を実施するには,病院全体が均等性をもつて,かなり内容的に充実しておらなければならないと考える。

Doctors' Taperecord

著者:

ページ範囲:P.68 - P.69

1.病院学会の功徳
この頃某病院で聞かされた話を一寸紹介する。「病院学会は病院向上の高踏的な研究の演説だけで,少しも興味を持てなかつたが,今回の大阪の大会を傍聴してはじめてこれに傾倒した。病院経理以外の事柄には勿論興味が持てなかつたが,少くとも経理の研究報告には耳を聳てねばならない。私的病院が現状のままの考え方を続けて行つたら,時代から取り残されて,自為に崩壊するだけだ」
 近代病院管理は犬にでも喰われろと白眼視された時代はそんなに遠い過去のことではなかつた筈なのに,よくも時勢が変つたものである。否大阪大会に度肝を抜かれたのであろう。病院学会の功徳は斯くも広大無辺であつたらしい。

あとがき

著者:

ページ範囲:P.70 - P.70

 社会保険で完全看護,完全給食の加算を入院料に認めたのは6年前,更に寝具設備を認めて3年になる。これらの加算は事実上入院料に格差を設けたものであるが,これがわが国の入院サービスの向上に拍車をかけたことは事実だ。併し元来こういう無形に近いサービスというものは,数字に表わしたり,物差で計つたりし難い性質のものだから実際の承認に際しては種々の困難を伴うことは想像に難くない。それで最近保険局ではこれらのサービス内容について細かい条件を並べた承認基準案なるものを作つた。これに対し施設側から早速批判の声が上つている。当局側が余り細かい条件をつけると折角伸びつつある入院サービスの腰を折る恐れがある。かと云つて承認を甘くすると真面目にやつている病院がバカらしくなる。本来は実際にサービスをうけている患者自身でなければ分からないものを客観的に判定しようという所にむずかしさがある。併し本当は患者にも判断の能力はないのだから,結局は施設側の良識にまつより手はないということになろうか。英国の病院では,病床不足に悩み乍らも看護職員の不足を理由に遊ばせている病床が決して少くないという。併し患者に配してある看護職員の数はわが国の完全看護を遙かに上廻る。若しこれがわが国だつたらこんなバカな?ことはしないであろう。両者の考え方の相違に興味がある。

グラフ

結核療養所めぐり—神奈川県立長浜療養所—群馬県立東毛療養所—茨城県立友部療養所

ページ範囲:P.39 - P.51

 近年新しい結核療養所が彼地此地に出現した。今や結核療養所も単にベツトがあるということだけでは患者は来てくれない。患者の目もこえて来て,矢張り環境のよい,快適な病室で,よい療養サービスと高い水準の医療をうけられる所を選択して訪れるようになつて来た。ここに紹介するのは,関東地方に最近できた代表約な県立結核療養所である。何れも厚生省の結核療養所で整備補助金を得ており,設立の基礎条件がよく似ているので比較検討するには都合がよい。
 あなただつたらどの療養所を選びますか。

病院長プロフイル・34

同愛記念病院長三沢敬義氏—大学病院から第一線未知数病院長へ

ページ範囲:P.52 - P.52

 本郷の公孫樹並木の下,幅二尺もあろう大きなカバンに口がしまらぬ位つめこんで,太つたお腹もワイシヤツからお臍が出ようという童顔の紳士に会つたものである。東大物療内科教授の、三沢先生であつた。大きなカバンは,文献論文が手あたり次第入つているのだそうだ。
 先生は,福島県の産,東大卒業後物療の真鍋名物教授の下に入り,先輩荒井助教授の早逝後,順調に助教授,教授,病院長のコースを通り,昨年,停年退職後たまたま駐留軍らか返還再開の同愛記念病院の院長に引張り出された。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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