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雑誌目次

雑誌文献

病院15巻4号

1956年10月発行

雑誌目次

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綜合手術室の機構および施設に関する研究

著者: 高木忠信 ,   羽田野茂 ,   清水健太郎 ,   木本誠二 ,   柘植芳男 ,   山崎三郎 ,   吉武泰水 ,   小木曾定彰 ,   山内二郎 ,   西野治 ,   穂坂直弘 ,   内田秀雄 ,   田口正夫 ,   竹内一夫 ,   草間悟 ,   中村紀夫 ,   光宗哲夫 ,   石田正統 ,   堀原一 ,   山村秀夫 ,   川上保雄 ,   村山蓊助

ページ範囲:P.2 - P.23

I.緒言
 最近外科学の進歩に伴い,手術そのものも,手早い賑やかな手術や,又は器用さに陶酔した時代は既に過去のものとなり,科学的合理的な正確な手術が,必要にして充分な時間をかけて行われねばならぬ時代となりました。その当然の結果として,術者や患者の環境衛生学的の面よりみても,更に大学病院の手術室としての特殊性である教育研究の面に於いても大いに考えさせられる事があります。従つて,旧時代の設立にかかる手術室は到底近代医学の進歩に添えないものが多く,従来稍々もすれば等閉にふされがちであつた「手術室の機構と施設に関する問題」が重要視されねばならなくなつて来たのであります。我々は最近東大附属病院中央手術部の新設に当たり,清水・木本両外科教室,麻酔学教室及び東大工学部の建築,機械,応用物理学,各教室の全面的協力の下に手術室の試作を企て,若干の成果を得たので,ここに御報告し,各位の御批判を得たく考える次第であります。
 さて,東大病院は完成の暁には第1図に御覧になる様に病院としてCentral-Systemの形態をとる予定であります。この内,中央手術部はH型の3階全部を占め,第2図に見られる様に18の手術室を持ちます。次の第3図は現在出来上つた部分の図面であり,手術室以外の附属室は臨時に使用されています。後程お見せする映画もこれから報告するものも,この部分に於いてなされたものであります。

国立大学病院の経済能率に関する一考察

著者: 宮沢義治 ,   青木賢三

ページ範囲:P.31 - P.36

1.序説
 医療事業の経営目的をJ. E. Stone氏に従つて1)
(イ)量的サービス(a quantitative Service)できるだけ多数の患者を受け入れる。(ロ)質的サービス(a qualitative service)受け入れた患者をできるだけ多く治ゆさせる(ハ)経済的サービス(an economy service)医療に要する費用をできるだけ少くする。とするならば,その目的に対する経営成果の効率即ち,医療経営能率もまた,(イ)量的,(ロ)質的,(ハ)経済的,に分けて考えることができる。たとえば病床利用率,医員及び看護員数に対する患者数の比;患者総数に対する治ゆ患者数の比,病床回転率;患者1人平均(初診から転帰までの)診療稼働額等は,それぞれ量的,質的及び経済的能率の判定尺度として用いられるものである。
 国立大学病院は臨床医学の教育並びに研究の機関であるが,一面において医療事業の経営体である以上医療経営能率についても無関心でいることはできない。特にその経済的能率性について一般医療施設と比較考察するのが本論の目的であるがあらかじめ次節において適当な経済的能率の判定尺度(以下経済的能率測度ということにする)を導入しておきたい。

総医療費と国民所得の関係—特に1929年より1953年に亘るアメリカ合衆国の総医療費についての分析

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.39 - P.44

緒言
 今日の医療費が若し家計から直接支払うことが要求されるならば,非常な重荷としてその家計をかきみだし時には破滅に導くことは一般に認められている。最もありふれた病気の一つである急性虫垂炎を例にとつてみても,入院して手術を受けるとなると,良好な経過をとつた場合で8,000円はかかる。即ち平均入院日数は8日で完全給食,完全看護,完全寝具の病院とすれば3,700円,手術料3,125円,これに手術前後の処置料が1,000円乃至2,000円加わる。これは病院に直接支払う医療費であり,これも社会保険点数を基準として医療費を請求する病院の場合であり,間接的な費用がこのほか可成り必要となる。若し家族員の1人に胃癌が発見された場合であればそれが早期に発見され手術が順調に出来て軽快退院したとして入院日数は普通30日で直接医療費が最低4万円となる。
 所で一般勤労者世帯現金実収入状況を見ると総理府統計局家計調査報告昭和29年10月分によれば,家計の52%は24,000円以下の収入しかない。流行値を示す20,000〜24,000円階層の家計を標準的家計と見て,これと前記医療費とを比較するならば,病人が発生した場合医療費負担が如何に荷重であるかは明白である。特に疾病が長期に亘つたりその為に家計収入が減少する様な場合の困難さは今さら申すまでもない。この様に各家計の医療費負担能力に関しては一般的に言つて非常に低いと考えざるを得ない。

医学生の見た総合病院—国立東京第一病院

著者: 東大医学部,公衆衛生学ゼミナール第4グループ ,   車田孝夫 ,   栗原博 ,   小出桂三 ,   黒岩晋太郎 ,   小林博 ,   守屋

ページ範囲:P.55 - P.62

(前記)この論文は東大医学部4年生の公衆衛生ゼミナールのレポートである。東大では公衆衛生の実習には6〜10人の班に分け,各々テーマをもつて実地に行つて色々の角度から研究してレポートを出す様になつている。
 本年度はその一班が"綜合病院と開業医の協力"と云う題を与えられて,国立東京第一病院におもむいた。勿論その前に,同教室額田助教授の一般的指導を受け,又英国の国営医療中の病院の立場についての雑誌の渉読とデイスカツシヨンのあつたあとである。

Doctors' Taperecord

著者:

ページ範囲:P.74 - P.75

病院二食給食論
 この秋の国立病院医学会の病院管理分科会に発表になつた福岡の赤星先生の,二食給食論は非常に面白い。ひよつとすると革命的な,新機軸になるのではないかと思われる。何千年も続いた三食主義に疑いをもつて勇敢に試験をやると云う事はよい事である。病院では外にもこの様な新しい観点に立つて,再検討しなければならぬものが沢山あるのではなかろうか。
 実際,身体を動かさない患者が9時と12時と4時に変りばえしない献立をおしつけられるのはたまつたものではない。それに1日100円の材料でも,これを2回に集中すれば案外高カロリー,高蛋白のものが採れるのではあるまいか。粗悪な低カロリーの食物をガサガサ入れる事は単に胃腸を無駄に動かして,空腹感をおこすのに役立つているだけであるかも知れない。

あとがき

著者:

ページ範囲:P.76 - P.76

 時は正に天高肥馬の候,秋晴れの下,野に山にレクリエーシヨンを楽しむと共に,読書の秋でもある。又各地にいろいろな学会が催される学問の秋でもある。月末にはアメリカ病院界の大御所クロスビー博土が来日して,東京を振出しに北海道,京阪,北九州を遍歴して,わが国の病院事情を視察し,各地で講演会,討論会が開かれる。なかなか賑やかなシーズンである。この賑やかなシーズンにふさわしく,本号の内容もかなり多彩に盛り上げることができたように思う。東大高木講師等による綜合手術室に関する研究は第6回日本病院学会での発表をふえんして頂いたものであるが,実に圧巻ともいうべく,来日へき頭にこれを見たクロスビー博士をしてこれだけのものはアメリカにも沢山はないと讃嘆せしめたものであるが,われわれの誇るべきは手術室そのものというよりは,ここに述べられた如きこの手術室ができ上るまでの全東大スタツフを挙げての協同作業の成果であり,それが保守の殿堂と目されていた東大において実現されたことに意義がある。中央検査棟と共にわが国の病院革命に果す役割は小さいものではない。
 その他,岩佐氏の総医療費と国民所得の問題,宮沢,青木両氏の国立大学病院の経営分析は時節柄好箇の論文として味読に値すると思われる。

グラフ

復興開院された聖路加国際病院

著者: 橋本寬敏

ページ範囲:P.25 - P.27

10月18日小雨そぼ降る日,終戦以来米軍に接収されていた旧聖路加国際病院が再び開院され,キリストの博愛精神に満ちた本院において,日本人一般も診療を受けることが出来るようになつた。
明治35年に創設された本院は,去る5月に米軍より返還されていたが,内部の整備などで10月18日に開院の運びとなつたのである。 この日の開院式には,三笠宮夫妻,アリソン米国大使夫妻並びに安井東京都知事を始め,各病院長など500名の名士が出席した。午後2時より,先ず礼拝堂において,再興感謝式があり,続いて院内参観,最後に警視庁吹奏楽隊の演奏裡に聖路加短大講堂でのレセプシヨンがあつて散会した。次は橋本寛敏聖路加国際病院長の再興感謝式での挨拶である。

病院ハウスキーパーの1日

ページ範囲:P.45 - P.52

 患者サービスを重んじる近代病院では,ハウスキーパーの責任は重い。入院患者の全生活の責任を負つている病棟婦長は,診療の介助,病気の看護の他に,患者の起居に気持よい病室,ベツド,被服を提供しなければならない。此の広範囲な仕事の一部分,即ち患者の衣生活と住生活を引き受けるのがハウスキーパーである。又患者許りでなく,病院で働く医師,看護婦,その他の従業員に働きよい場所を与え,清潔な作業衣をきせる。外来患者にもよい感じの玄関,廊下,トイレ等々とハウスキーパーの仕事は中々広範多岐である。
 それらの仕事の中で,量的に一番多いのは,衣生活では洗濯,住生活では清掃で,作業員の数も多い。ハウスキーパーは此の人達を監督し,訓練して作業の能率を上げることに努力するのであるが,作業現場を監督するだけでなく,寝具,被服を始め医療用その他のリネン類の移動を記帳して台帳にのせたり,作業記録を取つたり,又作☆☆業の各種統計,原価計算等して病院ハウスキーピングの合理化に役立せる資料を作つたりする。

病院長プロフイル・37

国立名古屋病院長伊藤吉孝博士

ページ範囲:P.28 - P.28

 日本の「おへそ」と謂われる名古屋は,今,信長,秀吉,家康三傑祭りで,全市を挙げての復興大名古屋祭の真最中,日本の医療の核心を目指しての第十一回全国立病院,療養所綜合医学会とがお祭りとは別な,診療のかたわら真摯なる医学徒の医学研究の赫々たる成果が発表され,討論されて,之れが関係医療施策に,反映取捨され得可き素地をも包含し得る,重要な研究討議の場の一つとして誠に意義あるものである。
 今回の此学会の委員長は国立病院を代表して,かつての絢爛たる名古屋のシンボル金鯱空しく潰え去り,老松影さし残り野菊の城の夢跡に,近代病院建築の粋を蒐めて,突兀堂々,天に伸び,地に延びる国立名古屋病院長伊藤吉孝博士として,今斯界の脚光を浴びて,クローズアツプされた唯一のものであると謂い得べきか。君は資性温厚,而も内剛外柔の特長ある物腰は,三重は蛤の名物で有名な桑名の産,後藤新平の創つた県立愛知医専を卒えて,郷土の名誉のために?流石に,産婦人科を専攻し,婦人をうまく取扱つて来た永年の板に付いた人に接する物腰とみられる。

診療設備基準・3

中央手術棟の機能と設備

著者: 小原辰三 ,   山下九三夫

ページ範囲:P.65 - P.73

 従来外科系診療各科の附属機関的位置にあつた手術室はこれを所謂中央化し,その機能と施設を一本にした方がより能率的経済的である。吾々はかかる中央化組織の下に運営される手術室及び附属機関が病院の規模,性格社会的使命により如何なる水準を保つべきかを考究してみた。
 なおかかる中央化の傾向に更に拍車をかけたものに麻酔の発達とそれに伴うAir conditioning(空気調節装置)の普及がある。患者の精神的不安を除き,反射,気道分泌,筋緊張を抑制し,術者をして長時間の困難な手術をも安心して行わせるにはガス麻酔を中心とする全身麻酔法が必要であり,このためには麻酔医として良く教育された者が手術場の構成メンバーの主役を要請される。また医師及び手術室勤務者はすべて快適の室内で手術を施行して初めて最良の手術効果をあげることができる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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