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雑誌目次

雑誌文献

病院15巻5号

1956年11月発行

雑誌目次

座談会

専門医制度を巡つて(上)

著者: 曾田長宗 ,   岩佐潔 ,   尾村偉久 ,   栗山重信 ,   橋本寛敏 ,   岡西順二郎 ,   清水健太郎 ,   守屋博

ページ範囲:P.2 - P.8

 編集部 今日の座談会は"専門医制度をめぐつて"ということでございまして,専門医制度研究班の中間報告に対し各学会でいろいろ意見が出されておるようでございます。方向としては大体きまつておると思いますけれども,可成りいろいろの意見も出ておるように聞いておりますので,この際この間題を取上げて或る程度プツシュしてもいいのでないかと思う訳でございます。
 本日はもつと野党側の方に出て頂くつもりでありましたが,御都合のつかない方が多くて残念でございました。併しいろいろ資料が手に入りましたのでそれを議論のタネにして頂ければと存じます。では,司会を守屋先生にお願いしたいと思います。

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イギリスの病院勤務医師

著者: 高部益男

ページ範囲:P.11 - P.22

 医療に関する問題が最近において世人の関心を著しくひいている。疾病からの自由は古来人間誰でもの根本的な願望であることに変りはないが,これが医学医術の進歩をもたらす原動力となり,そしてその結果が人々に対して"あきらめ"の心理から"求める"心理へ転換の大きな力となつてきた。そして,一力において社会的経済的にその願望がいろいろの形において満足されないことも事実である。ここで,医療を社会的に組織化したならば何等かの解決方法が出てくるのではあるまいかとの考えが生れる。この数年来医療の問題がうるさくさわがれてきた一つの誘因には,健康保険制度とか医療扶助制度とか組織化せられた主として医療を求める側から見た具体的な問題の提起が数えられる。単的に云えば,組織化せられているために需給関係が数量的に明らかになり,その中でも医療経済という比較的単一化することのできる観点からの問題が明示せられることになる。即ち「赤字」に象徴せられる観方である。しかも求める側の組織化が進むにつれて,需給関係が私経済的観点から逐次公経済的観点をとらざるを得ない方向に進む。一方供給する側はそれとペースを合せる程にはその組織化が進まない状態にある。このギヤツプが問題を紛糾させる一つの原因ともなつている。

健康保険の審査査定について想う

著者: 滝野賢一

ページ範囲:P.25 - P.28

 保険医が毎月,支払基金に提出する社会保険診療報酬請求書は審査委員会に於て,その請求の適否が審査され,その決定に基き報酬の支払が行われるが,これは次の法的根拠に基くものである。
 即ち,社会保険診療報酬請求書審査委員会規定の第4条に「審査委員会は前条の審査をするときは保険医の提出する診療報酬請求書にあつては健康保険法第43条の4,第1項並びに……中略……の定むる所につき……中略……診療報酬請求の適否について審査するものとする」とある。而してこの健康保険法第43条の4,第1項は診療方針に関する条項であつて「保険医は厚生大臣の定むる所に依り懇切丁寧に被保険者,被扶養者の療養を担当すべし」とある。また,この項の厚生大臣定むる所のものとは,保険医療養担当規程をいい,保険医の従うべき診療方針として次の如く示してある。即ち同規程第4条に「診療は患者の健康保持増進に最も妥当適切であることを要し,一般に医師として診療の必要があると認められる傷病に対して行わなければならない」と規定されてある。

病院建設資金あれこれ(その一)

著者: 安岡正三

ページ範囲:P.29 - P.31

 公的医療機関の整備が医療保障確立の基盤であることは先般百も承知のことではあるが,一口に病院を建てるといつても仮に鉄筋で新築するとなれば一病床当りに換算しておよそ80万円前後はかかるといわれ,100床病院ともなればざつと8千万はかかろうということになり,そう簡単にはまいらぬ話である。
 私の市でも市民病院の一般病床を50床程増床することが2年程前から懸案となつているが,赤字財政のため資金計画がなかなか見透しつかず弱つている。さりとて市民のことを考えるとそういつまでも「折角研究中であります」式は許されなくなつた。

アメリカの血液銀行の営業と経営(上)

著者: 内藤良一

ページ範囲:P.41 - P.45

はしがき
 『群盲象を探る』という偶話があります。私は1956年6月末から8月始にかけて5週間アメリカ合衆国の血液銀行業務を見学に行つて象の尻尾を探つて来ました。手さぐりでさわつた尻尾から象全体の形は判りませんが,少くとも尻尾だけは判つたような気がします。『アメリカなんか大したことはないよ』という方もありますけれども,私は,しかし,卒直にアメリカの斯界が我々の先輩であるというのをためらいません。学ぶべきことを素直に学ばないと日本の損だと思います。私の探つた尻尾が幾分でも日本のためにお役に立てばと思い,この報告を書きます。
 只,この盲人は1938〜1939年にかけて25ヵ月間ニユーヨーク附近で勉強していたことがあるので,全くの聾唖ではなかつたことを申し添えます。

結核療養所の心理的管理

著者: 深津要

ページ範囲:P.47 - P.52

1.心理的管理の意味
 いままで管理という言葉は,結核療養所でもやはり建物とか給食とか消毒などの,いわば有形なものを対象とする場合にしか使用されていなかつた。そうして抽象的で無形な心理的なことがらについては,一向に管理というような言葉はもちろん使用されず,まして心理的管理というように一度ひらきなおつて問題を眺めてみよう,という傾向すらもなかつた。
 しかし結核療養所が一般の綜合病院とは,ある異つた一つの独特な雰囲気をもつことは,療養所への外来者がよういに気づくところである。それだのに結核療養所の心理的管理ということが真剣に論ぜられなかつたのは,一つには心理的な問題はその解答がでてしまうと,一般の場合にはそんなに奇想天外なものではなくして,誰にでも了解可能なものであるので,いつのまにか前もつて鋭い考察の眼を注こうとすることをなくし,更にはそんな事を云々するのは何か変つたものずきな者のすることだ,という程度にしか考えられなくなつてしまうわけである。

公立病院の経営実態について

著者: 福岡寿三 ,   山本猛

ページ範囲:P.53 - P.60

 医業経済の危機が叫ばれて,すでに久しいが,わけても公立病院は地方財政窮迫の余波を受けて瀕死の瀬戸際に追いつめられており,今にして適切な対策が講ぜられないならば,自滅の道を辿るか,さもなくば自衛策として不本意でも診療サービスの内容を低下させる以外に方法はないであろう。けれども,後者の道を選ぶことは,病院として良心を悪魔に売り渡すものと云うべく,最早公立病院と潜称することは許されまい。
 我々は与えられた環境に順応するだけでなく,現在公立病院の進んでいる方向・位置・速度を適確に把握しているだろうか? これを他の事業と比較してみるならば,自らの中に,無意識に自滅の諸要因を孕んで喘いでいるのではなかろうか。病院経営者は他の事業に比べて,全てが病院の特殊性と云う理由の故に,諦らめの境地に立つているのではなかろうか?

Doctors' Taperecord

著者:

ページ範囲:P.67 - P.67

相異点
 Dr.CrosbyがW.H.Oの委嘱で,来朝され,まだ日本の実状に対して知得の時間のない着陸後2—3日間の会話と講演に接した。従つて,何等遠慮する余地のない白紙の御意見と思われるので,その中から興味深い日本との相異点を記してみたい。1)アメリカの病院協会の一般的な見解として,アメリカの病院は,もう少し外来患者について大きな関心をもつべきであるという意見があること。これは我が国の一般病院のように,入院患者の2—3倍以上の外来を扱つて,色々な問題があることとは,対蹠的な感じがする。病院外来と診療所患者との区分について,日米の根本的な事情の差がある為であろう。2)アメリカの公的病院で最もよいものは,サラリー制度のフルタイムドクター制をとつているものが多くある。これは我が国の殆んど全病院が,医師の月給制によつているのに反して,アメリカの大都会の病院が,病院医師の報酬は,直接入院患者から個々に得ているのと,根本的な違いからくる傾向であろう。3)アメリカの病院経営費の内,人件費は2/3を占めて,残りの1/3がその他の費用であり,しかもこの人件費には,医師の收入を含んでいない。我国では平均して,一般病院では人件費と物件費は1/2宛であり,しかもこの人件費には,医師の給与が全て含まれている。日米間の大きな差であり,これは,その他の企業経営でも同様な差がある宙である。

あとがき

著者:

ページ範囲:P.68 - P.68

 秋もそろそろおわりで冬の足音が間近くなつた。この秋はゆつたりと秋晴れを楽しむ気分になれなかつたが,あながち天候のせいばかりでもなさそうだ。中近東の暗雲や日ソ交渉の重たい空気,又国内政局の不安等内外の情勢がわれわれの気分を重く包んでいた。兎に角あわただしい多事な秋であつた。
 処で,この間においてわが病院界は,進駐軍去つて初めての公式のゲストを迎えた。クロスビー博士は,短い期間に各所で盛んな歓迎攻めに合つて嬉しい悲鳴を上げていたようであるが,彼の赴く所,病院関係の各分野の人々の間に一種の気分的盛上りを造つたことは見落せない。わが国の病院についてどんな感じをもつたか,いずれ近いうちに彼自身の手になる日本の病院に対する印象や診断が本誌に寄せられる筈である。

グラフ

主任看護婦の1日

ページ範囲:P.33 - P.39

 主任看護婦の仕事はその病棟の運営を支配する大きな鍵であるといつても過言ではないと考えられる程重要性をもつております。その中で最も大切なことは,病棟内の凡てのことに精通し,仕事を積極的に見出し,その仕事をそれぞれ適当に配分し,円滑に行われているかどうかを指導監督するのであるが,人員不足の現状にあつては自分もその役割をはたすので,毎日の仕事が非常に複雑になつているけれども,充分計画されたスケジユールとスタツフの良い協力の下に出来るだけ患者が満足を得られるよう,又看護学生が豊富な臨床経験を持てるように行き届いた実習指導をすることもその重要な任務である。

病院長プロフイル・38

関東逓信病院長佐々貫之氏

ページ範囲:P.40 - P.40

 昭和26年3月,東京大学医学部教授の地位を停年退職せられた後において,先生は強大なエネルギーを必要とする2つの仕事をなし遂げられた。その1つは化学療法についての研究の集成であり,もう1つは関東逓信病院の創設である。このことが端的に,いかに先生の指導的医学者として,また指導的医人としての生命が若くかつ長いかを物語つている。
 先生は本年66才,岡山県津山の産。津山中学,一高を経て大正6年東京帝国大学医科大学を卒業。神経病学を志し,まず生理学の研究に着手し,大正8年独英に留学中はSherrington教授の下で研究せられた。大正12年帰朝後は東大稲田内科において内科学を専攻し,昭和2年千葉医大教授となられた。ついで昭和16年呉教授をついで東大教授となり,約10年間奉職の後,関東逓信病院長として病院経営に挺身せられることとなつた。

診療設備基準・4

放射線科の機能と設備

著者: 岡本十二郎 ,   浜田政彦

ページ範囲:P.62 - P.66

 放射線の医学的応用は益々旺んとなり,特に最近におけるレントゲン装置の発達と放射性同位元素の診断治療其他への利用によつて放射線科の領域は急激に拡大しつつある。
 所謂放射線科としての歴史は比較的新しいとは言え,元来臨床各科の診断治療と極めて密接な関係のあることは言うまでもない。而して,放射線を取扱うための災害防止も同時に考慮が払われては来たが,この点も近年特に重要視されるに到つて,防禦方面では医療法により既に決定が下され放射線科の設計,設備に関しても更めて考慮すべき点が多々あると思われる。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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