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雑誌目次

雑誌文献

病院15巻6号

1956年12月発行

雑誌目次

座談会

専門医制度をめぐつて(下)

著者: 曾田長宗 ,   岩佐潔 ,   尾林偉久 ,   栗山重信 ,   橋本寛敏 ,   岡西順二郎 ,   清水健太郎 ,   守屋博

ページ範囲:P.2 - P.10

専門科名の種類
 守屋  次に一番大きな問題ですがね,専門科名というものをどれ位にするか,ということですね。どこかの意見では現在日本医学会で認められておる学会が40いくつかありますね。これを全部専門医にしてやつたらどうだというような意見もあるのですが。大まかに外科という所に絞つて更に細かいブランチに行くというのが原案ですけれども,これについて一寸。
 栗山  滑り出しやすいようにするということです。滑り出し難いようなやり方だつたら,とても駄目だ。大体大学の講座別位のところで行つて,だんだん改善するようにする。一度きめたら何年も変えられないということは考える必要はないと思う。

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療養所の性格と機能について

著者: 大塚弘

ページ範囲:P.11 - P.19

 わが国に国,公,私立の各種療養所ができて久しい。しかし,改めて療養所とは何かの問題にいたると必ずしも定説があるわけではない。一応今の時機においてそれ等の考えをまとめて見ることは無用のことではないと思われるので,それに手をそめたのであるが,私は先ず療養所一般を考究し,次いで国立公立療養所と一般療養所との質的差異を明らかにしようと思う。
 第一に,療養所の概念を次のように定義する。「日本における療養所は,特定の疾患ある特定又は不特定多数の者に対して医療を給付し,そこを専ら療養の場とさせ,医師その他の者による療養生活の指導と訓練とを行い,併せて患者の隔離を図る施設である。但し,国又は地方公共団体によつて設置運営せられる場合には,行政庁又は営造物として,国民又は地方公共団体員(住民)全体のために,一走の要件のもとに,無差別平等の利用に供せられるのを常とする。又,医に関する学術の研究又は修習機関の性格を併有することもあるが,療養所一般の基本をなす法的性格は病院である。

アメリカの血液銀行の営業と経営(下)

著者: 内藤良一

ページ範囲:P.21 - P.27

4.サービス料と保証金
 輸血を受けるとき,患者は当然病院に対し手術料を支払うが,血液に対しては,受血者が団体或は個人で預血しているときは,サービス料のみを血液銀行に支払すればよいけれども預血のないときはサービス料の他に保証金(responsibilityfee又はreplacement fee)を預けなければならない。
 このサービス料と保証金は血液銀行各個によつてまちまちで,統制はない。その1部を例示すると第1表の通り。

X線障害予防に関する実際的研究

著者: 岩城勇

ページ範囲:P.29 - P.35

1.緒言
 エツクス線障害の恐るべきことは充分に認識されているにもかかわらず,防護対策の実際面は依然として等閑視されているのは甚だ遺憾に堪えない。この実状に鑑み医療法施行規則の一部が改正強化されるに至つたことは既に御承知の通りであるが,その根本の方針はまず器械の装備を厳重にし,利用線錘以外のエツクス線と,被写体その他から出る散乱エツクス線とを極力制限防止することに重点を置き,第2段の策としてエツクス線室の画壁を利用線錘の向う方向と然らざる方向とに分け,おのおの規定の鉛当量を持たしめて遮断防護することになつている。
 防護の手段としては勿論種々の方法が考えられるが,要は勤務状態の面からか或いは装置の改良,又はエツクス線室の施工上の点から,その被曝線量を多少でも少なくするよう心掛ける必要がある。

結核療養所管理の面より見た結核菌の検索について

著者: 森岡大三 ,   遠藤三明 ,   大屋勉

ページ範囲:P.47 - P.50

緒言
 結核患者を多数収容している療養所において如何なる場所の,如何なる物件に,どれ位の結核菌が存在しているかを知る事は療養所管理の見地より肝要の事項であるにかかわらず,従来系統的な検索が行われず,僅かに坂口1)が療養所の清潔区域,准清潔区域,不潔区域等における掃除後の汚水及び塵埃中の結核菌を検索しているに止る。私達は療養所内不潔区域と清潔区域の交流に最も関係ありと目される部屋,物件を選び,これを対象として抗酸性菌の検索を試みたのでここにその大要を報告する。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.58 - P.58

 久しくおたよりをなまけましたがこの間研修所にも色々大きな変化がありました。御承知の様に研修所長は官制上国立東京第一病院長が兼任することになつていますが,創設以来10余年に亘つて東一院長であつた坂口康蔵先生が院長の職を勇退され12月1日から栗山重信先生が院長の職に就かれましたので,従つて当研修所も第2代栗山所長の時代に入つたわけです。
 これより先11月1日付をもつて守屋博主事に代つて新任の吉田幸雄主事が発令されました。吉田主事は当研修所が創設された昭和24年当時厚生省医務局医務課の技官として当研修所の建設に当つた者の1人であり,研修所兼任所員として講義を担当していましたが,その後昭和27年山形県衛生部長に転出し一般衛生行政はもとより特に県内病院行政については令名をはせていました。この間も当研修所の部外講師として長期研修科においては病院史の講義を担当しておられましたから講義を聴かれた方もあると思います。守屋前主事は創設以来坂口所長を助けて実際上の当研修所の中心として当所の発展の為のみならず広く我が国の病院管理の向上発展に尽されたことは皆様御承知の通りであります。ただすでに主事としての在職年限も7年を越え研修所も創設期を終え第2段階に入つて来ましたので,こゝ等で後進に道を譲り研修所がまた違つた感覚で運営発展されて行くことを希望され新主事に職を譲られたわけです。

Doctors' Taperecord

著者:

ページ範囲:P.62 - P.62

Open SystemとClose System
 言葉というものはそれの使われる場合,人或いは国によつて屡々ニユアンスの違うことがあるものであるが,戦後わが国で屡々使われるようになつた病院のOpenSystemとClose Systemという言葉の概念が外国,特にアメリカにおけるこれらの言葉の概念と必ずしも一致していないということが,Dr. Crosbyの説明によつて明かにされた。即ち,われわれの用いて来たOpenSystemの概念は.昭和23年に公布された医療法(第35条)にいう所の「建物の全都又は一部,設備,器械及び器具を当該公的医療機関に勤務しない医師又は歯科医師の診療又は研究のために利用させる」ことであつた。これに対し,アメリカにおいては,病院の施設を医師に利用させる場合,何らかの規定乃至基準によつて医師を詮衡する場合がcloseであり,何らの制約もなく自由に利用させる場合がopenだというのである。以下Dr. Crosbyの説明を要約して御参考に供するとしよう。
 アメリカでは,病院医師の勤務体制が2つに大別される。その1つは月給制(日本と同じ)でこれはfull time systemと呼ばれ,大部分の国営(federal)の病院がこの式をとつているが国営外で有名なものにはMayoClinicやシカゴ大学病院がある。もう1つはpart time systemと呼ばれ,医師はその報酬を患者から直接支払われることになつている。

あとがき

著者:

ページ範囲:P.64 - P.64

 今年も押しつまつて余すところいくばくもない。誰しも年の暮には過ぎ来し方を一応は振りかえつてみたくなるものであるが,今年も思えば多事な一年であつた。昨年からもち越された新医療費体系の問題は漸く最近一旦上げた棚から下されて目下専門部会でもんでいる最中であるし,赤字財政の帰趨を賭けた健保法改正はどうしても年内には片がつきそうにない。社会保障の一環としての医療保障制度の確立ということ共に,新内閣への置土産となる運命におかれている。
 本年は本誌の発行が大変遅れて読者各位に多大の御迷惑をかけたことについては深くお詑びしなければならない。年末をめざしてのラストスパートが効を奏して本号が年内にゴールインすることを念じている。本号は座談会とグラフと診療設備基準以外は凡て寄稿である。専門医制度を廻る座談会は前号よりの続きであるが,議論がいよいよ本制度の核心にふれてきたので,ネツト裏からの御感想なり御意見をきかせて頂くことができたら幸いだと思う。内藤氏の「アメリカの血液銀行」も前号の続きであるが,具体的な計数もまじえての報告であちらの実情をよくうかがうことができる。目下わが国の血液銀行は野放しの状態にあり,正しい育成の方法が問題にされている折柄時宜に適つたものと思われる。但しこれは病院外の血液銀行であるので,院内限りのものについては診療基準が御参考になると思う。

「病院」 第15巻 総目次

ページ範囲:P. - P.

グラフ

栄養士の1日

著者: 芦沢千代

ページ範囲:P.37 - P.43

 栄養士の1日の仕事の中最も大きな部分を占めるものは,病人に適したおいしい栄養のある食餌を給与することである。この食餌は病人の栄養に適合したものであり,各病人の病状の軽重にしたがつて調えられなくてはならない。これは絶えず医師との連絡のもとに作られてゆく。朝5時からの作業は1,000人を越える病者の治療効果に,又療養上の経過に重大な関係をもつものである。職場は真剣な実践道場である。我が給食部は食養課,調理課,購入課の3課に分れて各々の仕事をする。即ち一番基本中核をなす栄養管理をはじめとして事務管理,作業管理,衛生管理,資材管理等行つている1人1人が,全力をあげ責任をもつて自動的に働いている。

病院長プロフイル・39

社会保険中央病院長八田善之進先生

ページ範囲:P.44 - P.44

 夏といわず冬といわず毎朝診療開始前に登院してねむけ眼の当直医員をあわてさせる院長というものはそう多くはあるまい。生来の几帳面さがさせることではあろうが,福井県に生れ四高を経て明治42年東大医学部卒と共に生化学教室に入られ,時の隈川教授のもとで生化学の研究に没頭された。数年間に物事の正確さということを主んずることは生化学を通じて磨きがかけられたことと思われる。後青山胤通先生のもとに臨床内科を専攻されここで又更に人としての頑健さを体得されたことと思われる。だからがつちりした心のある几帳面さである。大正6年から時の名古屋医大に教鞭をとられたが,大正8年後を現勝沼精蔵学長に譲つて宮内省侍医を拝命され時の皇太子殿下付となられ昭和12年皇太子殿下御渡欧に側近として供奉され,宮内省侍医頭を経て終戦後宮内省御用掛となられる迄20数年間常に現天皇陛下の侍医として側近にあり,陛下の健康方面に就いては勿論精神的方面に於ても蔭の力として尽された医人としての力量に就いては華々しくはないだけに日本に於て余り知られていないことではあるが,言葉少なに時々洩らされる憶出話の間から泌々感じさせられることであり,日本にとつて真に幸福なことであつたと思われる。

診療設備基準・5

血液銀行の機能と設備

著者: 鳥居有人

ページ範囲:P.53 - P.57

緒言
 最近の手術の進歩は輸血の発達に負う所が多く大手術の場合の輸血の需要量も急激に増加した。この需要に応ずる為には新鮮血より保存血の方が有利であることは論を俟たない。現在我国の大病院においては殆ど保存血を使用しているが,大部分営利血液銀行より購入している。病院自体が血液銀行を持ち,自院の需要をまかなつているのは東京附近を例にとつて見ても東京大学,東京医大及び国立東京第一病院のみである。
 自己の施設で採血,保存,供給を行う事の可否は議論のある所であるが,近年病院の諸施設が次第に中央化され,合理的に運営されている点より見て,輸血に関する事項も当然中央化すべきであると考える。

読者の声

准看護婦に途を開け

著者: 三原士郎

ページ範囲:P.59 - P.61

 病院経営は看護婦の訓練以外の何ものでもないと云つた人がある。もちろんこの言葉は文字通りでは全面的な真理とは云えない。しかし少しく病院の運営や管理に体験のある人ならば,之をただちに実感として首肯できるかと思う。事実われわれ病院管理に掌わる者の常に頭を悩ますものは看護婦の質と量との問題である,施設その他近代的総合病院としての資質が常に時代の先端をゆき,経営や運営について甚しい困難もなく,且つ自ら思うままになし得る看護婦の養成施設をもつ病院などでは,或はこのような悩みはみられないかもしれないが,われわれのような中小病院で施設や予算上の制約のため,国家が要求する程度の看護婦養成施設即ちいわゆる高等看護学院をもち得ないところでは看護婦の補充の方途は常に苦悶の種であるというも過言ではない。
 医療内容の向上を期待する施策の一環として現在の看護婦の免許に関連する新しい制度ができたことそれ自体はもとより当を得たことであると云わねばならない。これによつて高等学校卒業程度の一般教養を身につけ,昔日に比べればはるかに高度の技術内容をもつた新制度による看護婦が続々とできて来つつあることも亦喜ばしいことである。しかし問題はその量にある。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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