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雑誌目次

雑誌文献

病院16巻8号

1957年08月発行

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座談会

放射線障害と病院管理

著者: 川崎幸雄 ,   小林仙次 ,   熊谷富義 ,   鈴木嘉一 ,   岩城勇 ,   井上武一郎 ,   岡本十二郎 ,   小西宏 ,   守屋博

ページ範囲:P.482 - P.492

 小西 今や世を挙げて原子力時代に進みつつある訳ですが,放射線は既に医療の面では可成り発展をして参りました。今日では何科を問わず放射線の厄介にならないというところはないのでありまして,従つて今日病院において放射線科の整備ということは,病院管理者が非常に関心を持つておる分野であります。だんだん専門のお医者さんも出て参りますので,そういう方々に放射線科の管理を十分にして頂くと同時に,各科の放射線診療についての協力者の立場でやつて頂いておる。病院で扱う放射線は,従来はレントゲンとラジウムだつたのですが,御承知のアイソトープの医学的応用が進んで参りまして今後は病院としても大いにアイソトープの活用,つまり原子力の平和的利用に一役買おうという趨勢にあります。
 そこで放射線の扱い方が今後益々問題となりますが,最近は放射線の障害を防止するということに,一般の関心が高まつてきていることは喜ばしいことです。今日はそういうことについて病院管理者に参考になることを皆様にお話願おうというわけであります。

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放射線科と専屬ベツド

著者: 守屋博

ページ範囲:P.495 - P.497

 レントゲン教授によつてX線と呼ぶ放射線が発見されたのは,今から60数年前である。X線が医学に応用されたのは,発見後間もなくであるが藤浪教授その他がX線の専門家として日本の医学にこれを移入したのは大正の始めである。本当に大学に専門講座が普及したのは,極く最近の事である。大学以外の一般病院でX線専門医を有するのは数える位いしかない。
 X線の医学への応用は,二つに大きく分けられる。一つは写真撮影として診断に用いられ,他は細胞に照射する事による治療である。この様な新しい発見による新武器は他の場合と同様,各科の主治医によつて,別々に所有され利用されたのである。事実肺の写真は結核医によつて,関節の写真は整形外科医によつて,最も深く研究された。微細な影の意味は,それぞれの臨床経験の深い専門医によつてのみ,その意味がつけられるからである。治療の面においてもまずその主導権は各科臨床医によつて開かれるのが普通である。殊に婦人科においてはこの傾向が強く,放射線科以上の設備を有し研究の全勢力を,放射線に集中すると云う教授もあらわれた。これはむしろ放射線を利用する婦人科医ではなくて,婦人科を対象とした放射線医と云うべきであろう。

放射線科運営上の設計私案

著者: 外河高秋

ページ範囲:P.499 - P.503

 放射線科医のいる病院では病院の格も上位に有り設備も良く又遂次進歩し得るが,中小病院の多くは現在各科の医師が利用している関係上,運営は主任X線技師が行つている。整備を整える為の要求をする場合,その技師の置かれている立場により通る所と通らない所とがあり,なお又管理者の理解,或いは放射線の知識の有無により,その採択に差があると云える。病院管理者の最も留意す可き点は地位に関らず善意による意見を採上げる度量を必要とすることであろう。然し乍ら予算に縛られた病院では進歩の遅れることは云う迄もない。よい運営の第一歩は設備だと考える。第二は人の質と数である。設備が揃つても人が不足すれば充分の働きは出来ない。放射線は障害を考慮し且つ又暗室内での勤務であり他と比較し得ない程疲労する業務であるから,業務も交代出来る様余祐を持たせて人員の確保をしなければならない。病院での放射線科の業務も最近増々複雑となり,間接・断層・連続撮影等の量をも増加するに及び往時の様に心落付いてじつくり診療する暇がなく能率を挙げる為スピードが要求される時代となつた。各科が利用する放射線科であるから,放射線科の完備は各科に利益をもたらす結果となるものである。
 一例を挙げると診断用500mA,間接用・携帯用・深部治療と夫々一台の装置計4台が有つても透視中は他の撮影は全て行うことが出来なく内科外科と透視を続ければ他の患者の処理は停止状態となるのである。

病院探算と人件費

著者: 石原信吾

ページ範囲:P.505 - P.512

人件費は病院採算のキイポイント
 病院の採算を問題とする場合,誰でも先ず「人件費は」と問うのが普通である。つまり,病院採算の成否の鍵が人件費にあるということは,今では,凡そ病院採算に責任を持ち,或いは少くともその問題に関心を持つ程の人には,常識となつているとも言える。そして,確かにその認識は大体に於て的外れではないと言えるようである。
 第1表は,昭和29年度の国立病院年報から,最も採算成績のよい病院と最も悪い病院とをそれぞれ5病院ずつ選んで,人件費,材料費,経費のそれぞれの対収益比率を出して見たものであるが,この表を見ても,上の認識の誤りでないことは判断出来るであろう。

一総合病院に於ける各科別收支分布に就いて

著者: 百溪定七郎

ページ範囲:P.513 - P.517

緒論
 総合病院に於て各科別の収支を把握することは管理上必要なことである。しかし或部分に技術的に手数を要するので余り大きい病院では或は却つて行うことが出来ない。本院では比較的容易にこれを行いえたので報告したい。

病院会計における簡易な経営診断法の研究

著者: 大門繁雄

ページ範囲:P.531 - P.536

 病院における事務管理が合理的であるかどうかを,判断する方法を広義に考えれば,予定計画の適否,その実行,庶務,会計,医事,用度,営繕等が適切に合理化されて居るかを検討し判断して理想の線を定める方法と思われるが,私は独立採算を強く要望せられる現況に於て,会計を主とした収支の均衡を保つような行き方を研究し,合せてその経路は我が国医療会計の標準に対し,どんな歩みを辿つて居るか等を研究し,進歩改善の資に致したいと存じ,その資料となる諸表を仕組んで見ました。勿論各病院でも本問題については,夫々の立場でお研究になり色々の諸表に依り調査研究の事と存じますが,私共病院組織は特種法人で連合会の指導下にあり,特殊の整理科目等もありますが,幾分でも参考になる点があれば幸いと存じます。
 年度の中間には若干の黒字と予定して居たが,来診患者は予定通りであつたにも不拘,反対に決算間近になつて精算して見ると赤字となる事が,判明しても逆つて事業は出来ません。これ等は計画性がないか,あつても実行が伴わなかつたか,予想した数に誤りがあつたので,実数の把握をしなかつたからであります。数は運営の一分子であるから常に実数の把握を必要とし,之れが為には日々に月々に,感でなく,推量でなく又昔の大幅帳でない記録が出来る仕組の諸表が必要で,この記録が集計,累計されていつでも現況が判明する様な組織でなければなりません。

あとがき

著者: 吉田幸雄

ページ範囲:P.550 - P.550

 今年の梅雨は異状を呈し,全国的に長雨に苦しめられたが,特に西九州地方を襲つた豪雨は,大水害を惹起しその地方の病院は大小に拘わらず御被害があつた事と思う。謹んで御見舞申上げます。
 7月10日11日に行われた日本病院学会は,全国から同志が集まり,流石の第一生命ホールも満員の盛況で,橋本協会長,神崎学会長の国際会議の報告を初め,宿題報告,シンポジウム,一般演題等,会衆に感銘を与え,第二会場における展示会懇親会共一応,成功裡に終了した事は御同慶に堪えない。明年は,福岡と定まり,改めて来年が楽みである。

グラフ

冷房の知識

著者: 宮川清

ページ範囲:P.519 - P.527

 最近各ビル,商店,映画館等では冷房を行う事が常識の様になり,一般の方々が相当の知識をお持ちなので今更冷房とは何であるかなどは不必要の事と思いますので,冷房設備の種類とその方法について御紹介致したいと思います。
 我国の病院では,全館に冷房を行つて居る所は非常に少なく,又特殊な手術室の如き室にさえも未だ全病院が行なつても居ない状態であるが,今後先ず,手術室,レントゲン室等の特殊診療室には是非冷房を行つて行くべきであると考える。故に,ここに比較的小規模の冷房装置について述べ,多少なりとも御参考に供したい。

病院長プロフイル・47

国立療養所刀根山病院長渡辺三郎先生

著者:

ページ範囲:P.528 - P.528

 国立療養所刀根山病院は大正6年日本最初の公立結核療養所として大阪市が設立したもので,昭和18年日本医療団,戦後国立へと,経営形態の変遷はあつたが,その設備陣容等あらゆる点から我が国結核療養所の本山的存在であることは自他共に認める処である。
 渡辺三郎博士はこの由緒ある療養所の四代目院長である。鳥取県の生れ,米子中学の出身,大正9年大阪医科大学(阪大の前身)を卒業,大正11年刀根山病院医員となり,昭和18年院長に就任,今日まで30有余年間その全生活を結核に打ちこんで来た偉人である。昭和26年4月推されて日本結核病学会会長となつた。

診療設備基準・8

病院建築放射線科施設基準案—医療施行規則の実例による解説

著者: 小林仙次 ,   日本病院建築協会 ,   日本病院設備協会

ページ範囲:P.539 - P.549


 昭和31年2月23日医療法施行規則改正に際して,建築部門については厚生省医務局から非公式ではあるが諮問を受けて,日本病院建築協会並びに日本病院設備協会は委員会を設けて,その原案を作製し,答申したに対して,幸い字句の訂正を除いては全面的に受入れられ発令された。
 ただ放射線関係の改正に対しては放射線学会,その他に諮問されて画期的な改正が発令されたがその内容については病院建築を計画するものにとつては難解の点もあり,実際に設計をする場合いろいろの疑問が生ずるので,これを実際に役立たせる為に日本病院建築協会と日本病院設備協会とが協力して改めて研究委員会を設けてこれを研究した。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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