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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻10号

1958年09月発行

雑誌目次

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病院における労働問題について—第8回日本病院学会特別講演

著者: 菊池勇夫

ページ範囲:P.711 - P.717

 昭和21年に労働関係調整法という法律が出ました,この労調法という法律が出ましたことによつて労働関係に争議が起りました場合に,いろいろこの争議を放任しておかないで,お互の間での話合がつかないような場合に,労働委員会が間に入つて調整するということについての規定がおかれたのであります。そういう場合に病院の特別な地位が規定の中にあげられて,病院については特別の規定が出来ました。というのは病院はなにしろ人命を扱つておる所でございますから,そういうことで公の利益に関係していることは,どういう産業でも同じでございますけれども,病院について特に考慮すべきものがある,それで公益事業というものについて特殊な調整のやり方をとるということが,この労調法の中に規定されました。そういうところに病院の問題についても特別な立場が出てきたわけでございます。
 その翌年になりますというと,労働基準法という法律が定められました,これは22年であります。労働基準法というのは,労働者の労働条件を定めたものでございますが,戦前にもそれがなかつたわけではありません。工場労働者について工場法というのがありました。鉱山に働いている鉱夫については鉱業法というものに基きまして,鉱夫労役扶助規則というのがありまして,それが後に鉱夫労働扶助規則というふうに改められましたが,そういう制度がございました。又商店の従業員についても,昭和13年でしたか商店法というものが出ました。

一般市民の病院・診療所の選好態度と受診事情の分析—医療機関の利用事情に関する研究(1)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.719 - P.727

 一般社会に対して医療サービスの供給者の立場にある診療所および病院の役割は,その医学的な診療機能としてあるいは医療担当の社会的な職分として,おたがいに競争的なものであるか,あるいは補定的なものであるか,わが国の現状でははなはだあいまいな点であるが,それを需要者たる一般大衆はいかに判断し行動しているかを明らかにするため,本教室において一般仙台市民を対象として下記の実態調査を行つた。

結核療養所の規模と経営について

著者: 松尾正雄

ページ範囲:P.729 - P.738

1.緒言
 医療機関の運営とその適正規模ということがしばしば論じられるが,適正規模を考える場合に,従来から第1には主として病院管理者の立場から患者や職員を把握するのに適した大さの限界を考える見方と,第2には経営上収支のバランスのとれる大さを考える見方とがあると云えるが,医療機関としては最も重要な要件である診療機能を高める点からの見方も必要であると思う。
 第1の管理上の適当な大さの問題は,管理者の管理能力,管理組織,人間関係の適否及び関係者の主観も入つて来るので,客観的に論ずることは必しも容易でなく,人間的要素の組み合せと,組織の立て方によつて変動する可能性の大きいもめであろう。

患者ベツトの研究—(第1報)患者ベツトの実態調査

著者: 原素行

ページ範囲:P.749 - P.760

I.はじめに
1.この委員会の研究目的
 患者の入院生活に最も重要にして,しかも看護と診療とのために適当な患者ベツトの合理的規格を求めようとして,本協会は研究委員会を組織して,表題の研究を開始した。その第1段階として先ず患者ベツト設備の実態に触れる必要を感じ,ここに基礎調査を行つた。
 この研究が窮極の目的とするところは患者ベツト基準化計画であるが,その企図は患者ベツト様式,構造及び寸法の一本化ではなく,これを使用する患者の状態,病院の種別,病院所在地方の民度,また病院財政などについて充分なる考慮を払い,数種類のベツト計画案を合理的に案出しようと心掛けていることを予め表明しておきたい。ここで云う合理的計画案とは,患者生活を合理的ならしめても,これを不便不快ならしむることを許容せんとする冷かなる規格の制定を極力回避する努力を忘れていないことをも申し添えておきたい。

病院未収入金問題

著者: 落合勝一郎

ページ範囲:P.763 - P.768

 病院に於ける診療費の未収入額は,病院収入の上では大きな比率ではないが,未収入金は対策を講じないで無計画に放置すると増大する性質のもので病院経済を圧迫する。
 病院の未収入金の特長は①信用貸,②長期債権で且つコゲ付き易い。これは,何の担保も抵当もとらない貸しで,然も長期化し,コゲ付き易い点は他の社会では見られない特異なものである。患者は他の社会では与えられない位の高額の信用貸しを病院で得られる。例えば吾々は百貨店で5万円の品物を信用で買う手は仲々困難であるし,又銀行から無担保で5万門の金を借りる事も難しいが病院では,うつかりしていると忽ち5万や10万の貸しは出来て仕舞う。最近は未収入金問題の質問が多くなつているが,これは今迄放置しておいた未収入金がつもりつもつて病院経済に少しつつ影響を与え始めているものと見度い。国立の医育機関病院では未収入金の取立の為に債権管理簿や債権整理簿を整備し,取立専任者として債権管理官をおいて取立を強化し,最終的には強制執行を行つたり,訴訟手続を執行したりして,未収入金の強制回収を行つている。この様な法による取立の強化は病院の性格から考えると,大いに議論の存する所であろうが,この問題はここではふれない事にして,私の病院の未収入金の分析と,未収入金対策について記して見度い。

研修所だより

著者: 今村

ページ範囲:P.786 - P.786

研修計画
 秋風とともに後期の研修が始められます。すでに御案内のように本年からは,受講希望者は年度初めに募集いたしましたので,改めて御通知はいたしません。
1)研修会(短期):9月以降の講習は次の通りに計画されています。

あとがき

ページ範囲:P.787 - P.787

 いよいよ今月より新診療報酬の実施に入りました。病院経営を新しい観点から見出さねばならぬでしよう。新医療費体系は合理化の一歩であつて,まだまだ改善すべき点を多く含んでいると見るべきで,特に物と技術の分離は不徹底であるから,医師のとり分と病院のとり分が明になるよう更に研究を進めねばならぬものでしよう。

グラフ

虎の門病院—特にその設備を紹介する

ページ範囲:P.741 - P.747

 この頃,日本に大そう豪華な病院が建つ.然し,建物が立派でも,その設備面に問題が多いという.外国のように,建物と設備とに,半々位の資金を投ずる病院は,日本には誠に稀である.それが日本病院の特質であり,また大なる弱味である.虎の門病院は,この点で,一頭地を抜いている.

病院長プロフイル・58

山形県立山形病院長 山形病院協会理事長 棚橋三郎氏

ページ範囲:P.748 - P.748

 氏は福島県梁川で明治38年に生まれ,昭和10年北大医学部を卒業された.そして現在の病院の前身である国立山形病院の院長に就任したのは,昭和22年11月であつたから,氏の42才のときである.当時の国立病院長としては少壮であつた.
 当時は,全国何処も同じく,進駐軍の監督がきびしく,病院によつては閉鎖或は院長退職の一歩手前という厳重な勧告さえ受けた時代であつたが氏は良く近代病院の方向を把握し,明治時代の建造にかかる旧式三等陸軍病院にかかわらず,新時代の完全看護,housekeepingに努めた結果,山形病院は東北における模範病院として,東北一帯の幹部看護婦の再教育場として指定され,毎年ここに各病院から幹部看護婦は集合を命ぜられ,この病院で教育と実習を受けたものである.

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.771 - P.785

アレルギー・センター
 前こもくり返し述べた如く,診断困難な症状を以つて病院を訪れる患者が多くなつて来た現代,総合病院においては当然各科の力を総合してその診断,治療に努力する義務があるわけだが,患者の需要に応じて集約的機能を発揮し得るシステムを持つことは人的にも或いは物的にも効率的になり,又患者サービスの上にも有意義の結果をもたらすので,センター的のclinicを総合病院内に設置することも意味のあることと考える.
 センターの名称の解釈が疑問,不明のものをすべて解明するところとまで割り切らないでconvienientの存在として動かすのも実際は運営上具合が良いので,あらかじめそのつもりで御検討をお願いしたい。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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