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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻11号

1958年10月発行

雑誌目次

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新しい医療費体系の発足に当つて

著者: 橋本寛敏

ページ範囲:P.793 - P.794

 去る6月30日官報号外で『健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定法』の改正(厚生第177号)が告示された。これは保険医療費の支払が世間の物価変動と不相応に少くて医療担当者を経済的に困らせるのを不十分ながら改善したというばかりでなく,従来の物と技術を混同した支払体系を合理化する第一歩を踏み出す甲表を設けたという点で保険医療歴史上劃期的の改革というべきものである。
 一言に医療保険支払方式の改正とはいうが,これに対する見方は人によつて一様でない。昭和26年以来7年の長きに亘つて支払額を固定して知らん顔をして居たのは不当である。物価はどんどん上つて来ている。被保険者の納める保険料は収入に対する比率は同じでも,物価に応じて給料がベースアツプして来ているから保険基金の自然増収がある。

病院か診療所か

著者: 加倉井駿一

ページ範囲:P.795 - P.803

The long, long wait
 1958年5月9日のNews ChronicleにTom Baistow氏のThe long, long waitと題する記事によつて英国の病院の現状の一端が紹介されていた。更に外来患者の待時間を少くする試みとしてLondonのCentral Middlesex Hospi-talの試みが述べてある。
 英国の病院では外来患者が診察を受けるまでに2〜3時間待たされることは普通であるが,これは英国の病院が50年前のスカンジナビアの状態にあり,而も毎年入院患者に対する外来患者の割合は増加し,6年間にその数は250万(11%増)にも達したことがこのような状況をもたらしたという。そしてその原因として次のようなことが掲げてある。

綜合病院における中央手術室の設計について

著者: 渡辺三喜男

ページ範囲:P.805 - P.810

いとぐち
 最近手術が著しい発展を見て,20年前或は30年前には,不可能視された大手術がどんどん行われる様になつた。殊に外科部門に於てその感が深い。開胸手術や開頭手術が日常の手術となつて来た。その原因の1つは,化学療法剤の使用によつて,重大な感染を防ぎ得る様になつたことであり他の1つは,術前術後の管理を含めた麻酔の普及と進歩であろう。一方手術件数が次第に増加して来て,従来のやり方では,従事者の疲労が著しいと言う現象も見られる。
 我々の病院で,病棟の増築と共に,手術室も新築されることになつたので,以上の様な新しい時代の要求に答え,限られた予算の範囲内で,最も能率が良いと思われる手術室を設計して見た。新しい手術室は,昭和32年3月に俊工し,現在まで丁度1カ年間使用し管理的な面でも色々な経験を得たので,設計の最初のプランから,俊工まで色々苦心した点を述べ,又1カ年間の経験から得た材料を反省し,手術室を新築される方々,或は改造される方々の御参考に資し度いと思う。

医療機関における火災の原因について

著者: 山形操六

ページ範囲:P.811 - P.815

I.まえがき
 火災の原因に関しては,従来より各機関において毎年厳重な警告が発せられ,殊に医療機関の火災は,患者収容という特殊性任務のもとに格別の考慮が要望されるわけであるが,尚相当数の発生をみているのは遺憾に堪えない。最近では山元1)が病院防火対策に関し具体策を詳細に述べ,神崎2)は全国の日赤病院内の事故例について検討を重ね平素の予防及び早期に消火し得る工夫を実施するか否かで被害も縮少出来ることを示唆している。
 根本的の防止は,わが国の耐火建築の普及状態及び防火用水道の不足等の関係上困難な点も多いであろうが,医療機関の管理当事者は常に重大な関心を払うべきことであり,その参考事項にもなればと思い,今回筆者は国家消防本部及び東京都消防庁の協力を得て資料を整理する機会を得たので,特に失火原因について検討を加えた。

給食

著者: 山田芳一 ,   小仲かほる

ページ範囲:P.816 - P.818

 給食は献立に始り残飯残菜によつてその効果が確認されるものである。栄養士の作製した献立により購買係が材料を発注し,納入された材料は検收の上,調理士(栄養士)により調理され,盛膳され,看護婦によつて配膳され,喫食後の状況は残飯調査として給食部に報告される。これは私達の病院に於ける給食の流れである。何の変哲もない日々の流れではあるが,その中に一貫した完全喫食と云う一本の筋金を通そうとしている。病院に於ける給食はそれ自体が治療であり,或いは治療に叶つたものでなければならない。病院給食の対象とするものはいずれも病人である。病人というものは病気そのものや病気から生ずる苦悩,不安等から食欲が減退したり,時としては全く食思の動かない場合すら生ずることがある。加うるに病気になると健康な時より好き嫌いが多くなるのに反し病院給食では予算や人員,設備等により給食内容は元より調理方法に至る迄制約され患者の要求を満すことが出来ない場合が多い。この様な悪条件を重ね重ねて求める和が標準給食であるという処に給食業務に携る者の人知れぬ苦労がある。(この苦しみが又面白味でもあるのではあるが。)ここに報告する当院の給食は別に目新しいものではない。しかし給食業務は何れの場合に於てもそれが完全喫食に通じているという処にこの報告の意義があると信ずるものである。

患児療育施設活動の実況紹介

著者: 原素行

ページ範囲:P.831 - P.842

I.はじめに
1.患者教育と患児教育
 一般に「患者教育」ということは患者生活の指導であつて保健指導を主とする。即ち病院業務の一であつて「病院に於ける看護業務の在り方」のうちで,比重の高いものであることは今さら説明するのも愚かなことであろう。
 これに対して「患児教育」という言葉を以て表現されている問題は,一般患者教育からはみ出した特殊の教育を意味するものと,理解して,少しく筆を進めたい。

簡易パス分包器の試作例

著者: 森岡大三 ,   篠原俊雄 ,   大崎実

ページ範囲:P.855 - P.856

 結核化学療法剤パスの出現は,結核に悩む人々にとつては将に旱天に慈雨であり,今や着々とその成果を挙げつつある事は万人の等しく是を認める所である。然もパスの需要は日々増加の一途にあり,今後更に対結核戦の有力な武器として活躍するであろう。是は誠に慶ぶ可き事ではあるが,此処に困つた事はパスの使用が増加するに連れて是を分包して患者に投与する薬局勤務者の負担が異常な増加となつて来たのである。今日午後の半日をパス分包に費して居ると言う現象は各病院,療養所の薬局の各所に見られる所である。勿論数十万円もの高価な分包器はあつても,予算的に購入も困難であり,然も薬局勤務員の増加等も簡単には望み得ない状態で,何処共謂はば悩みの種でもある。当療養所に於いては此のパス分包解決の為半歳の研究苦心を経て,最近簡易な分包器を作り上げたのであるが,簡単な構造にもかかわらず非常な好能率を挙げ得る事を確認したので此処にその大略を紹介し度いと思うものである。

甲表乙表選択状況

ページ範囲:P.864 - P.864

研修所だより

著者: 今村

ページ範囲:P.865 - P.865

 秋もたけなわとなつてきました。甲表・乙表の問題も一応落ちついて,各病院それぞれ活動を新たにしていることと思います。

あとがき

ページ範囲:P.866 - P.866

 いよいよこの10月から,健保の新診療報酬が実施に移されました。慣性で流れて来た日本の診療報酬のたて方に,新しい流れを生ずることになつて来ました。その新しい流れに合流した医療機関は,機関の数では一割にすぎません。然し,この一割の機関が新しい流れを作つたことは,今後の日本の医療に新しい段階を生ずるものでありましよう。
 この新しい流れを生み出した主流は,創立以来,医療の合理化を叫んで来た日病であります。この歴史的1958年の10月号に,橋本日病会長の巻頭言を掲げました。この会長の「新しい医療費体系の発足に当つて」から日本病院協会の態度と理念を充分おくみとり頂けると思います。

グラフ

患児の教育

ページ範囲:P.821 - P.830

 患児の教育には,凡そ3つの型がある.その一つは,看護の常道として,「患者生活の指導」であるから,当然学業の問題から離れる.幼児の場合には,特にそれが教育である.第二は,学童の「おさらい」程度の学修である.母親に代つてというところである.三番には,患児教育が教育法に準拠するもので,義務教育であり,且つ学童や生徒の社会問題でもある.

匿名座談会

甲表か乙表か

著者: ,   ,   ,   ,   ,  

ページ範囲:P.845 - P.854

 A 御承知のようにいろいろの経緯がありまして,新しい医療費の問題が一応きまつたわけであります。いよいよこれによつて,9月10日までに全国の医療機関は態度をきめなければならないわけです。病院協会は病院協会として,従来の考えを貫いて来ておるわけであります。しかし全国の病院においては甲表を採るか,乙表を採るか,非常に迷つております。従つて甲表乙表の批判を伺わして頂いて,読者の理解を深めたいということでこの座談会を開くことに致しました。ただその発表の仕方でありますが,夫々肩書をつけてやりますと,話がいろいろなさり難い点もありますし,読む方でも印象が違つてくると思いますので,甚だ失礼でございますが,覆面座談会ということで自由に新医療費についてお話し合いして頂きたい。それで司会ということなしに,自由に一つ発表して頂いた方がナマのものが或は現われていいのでないか。ただ忌憚ない御批判を頂くということで,読む方は又それを参考にされるだろうと思います。そういう意味合いでお話しして頂きたいと思います。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.857 - P.862

脳神経センター
 学問の分化はとどまるところなく,一科だけでは到底適正な処置がとれない場合が多く,総合病院の機能を充分発揮すべく各科連絡し合つて来たわけであるが,最近は種々のMedical conferenceが行われるようになつたのは喜ばしいことである。
 患者Serviceを主眼とし,さらに総合病院の機能の効率化をはかる目的で「………センター」を設置する傾向が現われている。こんなセンターがあつたらという意味で「脳神経センター」を紹介しよう。既に実施しているところも或いはあるかもしれないが,そういう施設は要項をお教え願いたい。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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