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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻12号

1958年11月発行

雑誌目次

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病院・診療所の診療圏にかんする距離函数論的分析—医療機関の利用事情にかんする研究(2)

著者: 一条勝夫

ページ範囲:P.871 - P.879

 今日の医療サービスはがいして施設的定着的であり,地理的に機動性にとぼしくなつてきたため一般に医療サービスの需要充足の場が供給者である医療機関の位置にあり,需要者たる患者は病躯をわざわざその位置まで運ばねばならないという事情が常態化してきた。したがつて,医療機関の設立運営にあたつて,とくに診療圏研究が意義をもつようになつたわけである。すなわち厚生省は昭和31年3月14日,山形,和歌山,山口の3県の診療所,病院につき「診療圏調査」を実施したが,当教室においては,本資料にもとずいて医療機関利用患者の距離的分布の解析を行つた。

病院の外来患者の待時間

著者: 永沢滋 ,   高橋政祺

ページ範囲:P.881 - P.888

緒言
 我が国の病院は外来診療にかなり重点がおかれており,大勢の患者が病院の廊下や待合室に満ちあふれて順番を待つている光景を毎日みせつけられ,我々の心を痛めている。最近患者サービスの面から,この待時間を短縮させたいという気運が多数の病院で見られ,石原1),吉武2)の研究もあり,そして機構の中央化による合理的運営によつて対策をこうじているのであるが,病院に於ける待時間の本質が判らなければその対策は空転するばかりで何の効果も得られない。
 我々はこの問題について実態調査を行つた結果待時間の特性を知ることが出来たのでここに報告し,同様のことを考えておられる他の病院当事者の御参考に供したい。

外科病棟の看護体制について

著者: 吉田公子

ページ範囲:P.889 - P.893

はじめに
 近代医学の著しい発展進歩にともない,外科学が近代治療の成果を大いにあげている今日,その治療看護の場である外科病棟の看護体制について考えてみる事も意義のあることでありましよう。
 終戦後,病棟管理は看護婦によつてなされることになりました。その運営にあたつては問題も多々ありますが,看護体制を確立することによつて管理の合理化,看護の充実,患者サービスの向上等,多くの利点をあげることが出来ます。

産科の看護体制について

著者: 我妻まさ

ページ範囲:P.894 - P.897

 最近の入院分娩の増加に伴い,産科に於ける看護勤務は過労になつて居るという声が一般化して居るが,東北大学医学部附属病院産婦人科に於ても予算と定員にしばられ,全くぎりぎり一杯の毎日を過している状態である。これは単に勤務者の過労という問題にのみ留まるものではない。私達の力には限りがあるので,すべての看護を遂行する時間が生れて来ず,どこか手の廻らぬ所の出来るのは明らかなことである。そこで私達はやむを得ず仕事を重点的に処理することとなり,こまごました看護は後廻しとなる。……所謂完全看護には程遠いものになつて来ている。これは母子保健上重大な問題で,母性保護並びに新生児看護殊に未熟児看護の重要性が声を大にして叫ばれている此の頃,関係者の一考も二考も要する問題で,何等かの解決が早急に期待されるものである。以下参考までに当科の現況を記しその打開について考えて見たい。

小児科の看護体制について

著者: 常盤恵子

ページ範囲:P.897 - P.900

 一昨年,厚生省の依頼によつて,11月26日から5日間小児病室でタイムスタデーが行なわれた。此のタイムスタデーは,病室に於いて患児に如何なる人々がどのように接するかを分析するのが目的であつた。
 此の記録を看護婦の立場から考察することにいたします。

入院患者所持品の調査

著者: 高橋政祺 ,   中村晃

ページ範囲:P.902 - P.904

緒言
 完全給食と完全看護は既にほとんどの病院が行つているが,寝具まで取り揃えている病院は少い。近代病院として患者の収容サービスを行うためにはこれをまず最初に行うべきであつて,本名1)のいう如く入院患者の荷物は旅館にとまる場合と同程度にしたい。
 しかし我が国の病院は歴史的に(吉田2),今村3))診療本位,医師本位としてなりたつてきたために収容サービスの面が等閑視され,ホテル旅館にくらべてたいへん見劣りがしているのが現実である。

医療行為伝票システム4カ年の経験

著者: 東義晴

ページ範囲:P.915 - P.920

 伝票システムについては,数年前より種々論議され,その理論的価値については,既に周知の事実であるが,問題は,他の生産工業に於ては当然すぎる程当然なこのシステムを,機構的にも,職種的にも,頗る複雑な,然も人命を対象とする特殊な医療業務の中に如何にスムーズに採り込むかと云う点である。
 現在この制度を採用している病院は相当多数に昇つているにも拘らず,入院,外来の総てに亘つて実施しているのは極く少数病院に於てでしかないのは,この制度の病院に於ける実際的運用の難かしさを示すものであろう。

研修所だより

著者: 岩佐

ページ範囲:P.940 - P.941

 9月25日から第86回短期研修会と本年度第2回長期研修科が同時に開講して研修所は急に忙しくなりました。短期は院長副院長で受講者は49名,長期は11名で医師は4名です。
 本年度第1回長期研修科も短期と同時開講をして最初の総論部分を短期研修会受講者と一緒に聴講する試みを行いましたが,今回はそれを改め共同講義は三沢講師の「病院と能率」だけにしました。

あとがき

ページ範囲:P.942 - P.942

 大分お寒くなつて来ました。北の方では既に暖房が始まつていることでしよう。然し,例年この暖房費で苦しみます。病人の室は暖くということは常識であるに不拘暖房費がとれないままで,湯たんぽや火鉢で間に会わすことをいつまでやつていろというのでしよう。
 さて,10月から新医療費になりました。いろいろ机上で議論されていましたものが,実施をされた結果どうなつたでしよう。医療費全体の増減,患者に対する影響,診療実質の変動,管理上の変化,いろいろと具体的に問題になつて来ているはずです。その姿或は更に改善案を読者からお聞きしようという意見が幹事会で出ております。10月中に読者の方へお問合わせするようになると思いますが,どうか御協力願います。その結果は2月号に掲載致す積りです。

グラフ

—精神病院見学—国立武蔵療養所紹介

ページ範囲:P.907 - P.913

設備と機能
I.グラフを見る前に,この施設のアウトラインに目を通すと
所在地東京都北多摩郡小平町小川2620西武鉄道多摩湖線萩駅前
敷地80,355坪総建坪7,094坪うら病棟3,216坪

病院長プロフイル・59

虎の門共済病院々長 大槻菊男氏

ページ範囲:P.914 - P.914

名実ともに大院長——最も意欲的な病院を作る——
 「私は仙台の田舎で育つたものだから,未だに,東北弁が抜けなくて,普通に話している積りでも医局員や,看護婦に強くひびいてね」.事実先生は座談がうまいという方ではない.演説にしても論旨明快と云う訳には行かない.諄々と誠心誠意説く方の型だから,政治力とか学会で大向うをうならすというよりは,一人一人の患者をつかまえて,親切に説得し丹念に手術する側であり,臨床医としては理想的の人である.
 大正の始め,東大を卒業,近藤外科に2年ばかりいて,当時下谷で有名だつた楽山堂病院に迎えられて,副院長をつとめ,後,塩田先生のあと,小石川分院の外科部長と,薬理学の数年を除いては実地臨床に専念された.当時の外科は,整形外科から婦人科,泌尿器科まで含んでいたので,現在の様に専門化された,狭い外科の前の最後の人であるかもわからない.

私の病院の試み

病院会計方式の考察と二,三の改善策

著者: 安田幸男

ページ範囲:P.921 - P.929

会計方式の分析
 病院会計事務と云つても普通の会計事務と特別違つて居るものでありませんが細部に亘つてはやはり病院に取つて或は更に少さくは自己の病院に取つて最も簡単で然かも確実な会計方式がある筈であります。そして其れこそ病院会計事務と云う事が出来其の方式を立案する事が我々会計管理者の任務であります。理論的に如何に優れて居ても又或る企業では理想に近い成績を上げて居る会計方式であつても其れが全部の企業に100%の合理性を以つて適用されるものではありません。まして他の産業の会計方式をそのまま病院会計に当はめる事は徒らに混乱を招き労して効少なき結果となる事は明らかであります。兎角会計担当者は理論や理想にとらわれ,会計の為の会計や統計の為の会計になり勝ちとなり,勘甚の会計管理の機能がぼやけ必要以上に事務を複雑にし為に誤記や間違を多くし却つて能率を害すると云う事が間々起るのであります。
 会計方式は普通発生主義的記録による簿記方法が用いられて居りますが,此の特徴は日々の資産増減の状態を迅速確実に把握出来る事であり,近代の企業経営に広く取り入れられて居ります。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.931 - P.939

ウイルス・センター
 日本脳炎,ポリオ,インフルエンザを始めとしてウイルス病の種類は毎日の臨床上重要な部門を占めている。ウイルス病はリケツチア症を含めて,これらの探究には国立予防研究所,各大学の基礎教室及び附属研究所の他に各種の機関が当つているわけであるが,従来の細菌学に対してウイルス病の検索には操作上の難関のために研究面における業績はあがつているが,実際上医療機関においては血清診断をいくつか実施する程度で,あとは臨床所見並びに抗生物質の効果による総合判定が行われているに過ぎない。非常に興味ある例にぶつかつた場合でも,そのウイルスを同定するという仕事は到底現在の病院では実施出来ず,ただ材料を汚染しないようにして上記の研究機関に送り届けるのが精一杯である。たとえ研究機関に送附した場合でも赤痢菌を糞便中からまたは結核菌を喀痰中から検出するようにポリオやインフルエンザウイルスを簡単に分離同定するわけには行かないのて最終決定には3カ月〜6カ月を必要とするのが現状である。爆発的流行のような疫学上の問題が生じた時などは公衆衛生上各研究所が積極的に動き出す場合もあるが,個々的の臨床事例を取り扱うということは実際上病院内である程度の処置をやろうとしなければ,やはり現行の如く特定の施設に懇請するということになろう。
 ここで病院が互に手をとり合つて特にウイルス病の検索に当るならば,誠に好都合であると考える。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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