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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻2号

1958年02月発行

雑誌目次

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病院における医師と看護婦の対人関係

著者: 金子敏輔

ページ範囲:P.83 - P.94

病院と人間関係
 病院という組織経営体はその性格からして最も人間性の色彩の強い場所である。特種な目的のため勤務するもの,集つてくる患者其他の人々が交叉し人間と人間の接触は多く,つまり対人関係は密接である。しかしこの人間関係は普通の職場とは違い病院はその目的から見て最も人間性要素(Humanistic element)の含みが多い,従つて,その病院独持の人間性の現われはその中にいる病院構成人物の人間関係の集合した綜合的人間性格(Inteqrated humanistic personality)をもつものである。それはその病院特有な雰囲気や特徴を現す基礎となる,これは病院経営から見て極めて重要な問題である事はいうまでもない。
 最近生産性企業において人と人との関係がその経営組織体の中で注目されてきた。つまり対人関係の好調にあるとないとであらゆる面で傾向が生ずるので科学的にその不調を堀り下げて追求して人間関係調整を試みるのである,そのような立場から生産性組織体において対人関係(Human relation)が問題視されるのは当然である。従つて病院においても最近病院管理経営の立場から管理者が経営学的に運営するあり方として病院組織という複雑機構の中で対人関係が重要視されてきた,人間性のあり方の強い病院ではより一層の掘下た追求を要するのである。

現代病院薬局のあり方—(第2報)製剤業務実態調査研究附 薬品試験業務

著者: 高部登

ページ範囲:P.97 - P.100

1.研究目的
 製剤は病院薬局に於いては調剤と共に車の両輪の如く重要なる業務である。そして薬剤師としての面目躍如たる仕事と思う。製剤業務の実態調査により業務の適正化を図り,院内製剤の意義を確認し又その限界と方向を確立したい。次に院内約束処方の利用度を調査し約束処方改正の資料とする。

大分県立病院薬局紹介

著者: 清水龍夫

ページ範囲:P.101 - P.107

はじめに
 本院は昭和28年2月着工,工事を四期に分かち昭和33年2月完成予定の別表の如き病院である(第1表)。診療科目中精神々経科,歯科は近く増設の予定である。然して薬局は地上並びに倉庫部門を昭和29年11月に竣工,その他を昭和33年2月完成の予定である。本院の設計に当つては団野建二院長指揮の下に各科担当部長の設計に重点が置かれ,診療機構の改革を計算に入れて着手した。薬局部門は団野院長筆者並びに薬剤員今井春二の共同設計である。ただしカラーコンデイシヨニングに関しては全く院長が担当された。
 扨て本薬局の設計に当初より一つの制約があり,背面レントゲン部門の既存の建築を採り入れた為に,我々が玄関正面の位置を占めるとすればその巾,大きさが一定の制限を受けこの中に後記の如く必須部門を押し込むことであつた。従つて夫々は狭少なものとなつた感が深いが,薬局総坪数は第2表の如くで待合室,試験室を除いたものは総坪数の2.1%である。このことは昭和27年薬剤部長会において提出された基準案3%に満たないが,後述の如く待合室,試験室を使用するので,上記3%の数字は全く我々に取つては必要の最低ではないかと思われる。

イギリス病院原価計算(4)

著者: 山元昌之

ページ範囲:P.109 - P.118

(16巻11号・12号・17巻1号連載)
 病院原価計算は,特別原価調査ではなく,常規的行務として行われるものだから実践性に注意を払わねばならないものだが,イギリスでははやくからこれと財務計算及び比較計算との関連において考察を重ねてきている。
 新らしい病院会計制度の確立が,近い将来の重要な課題であるわが国にとり,イギリス病院原価計算は最適の参考資料であり,研究資料である。
 イギリスの病院原価計算制度は,1869年にBirminghamのQueen病院ではじめて作られたが,1950年に,保健大臣は,病院の完全な原価計算組織を立案するため,the King Edwar-d's Hospital Fund for Londonとthe Nu-ffield Provincial Hospitals Trustを招いて調査を行つた。両者の報告は一致した結果もあり一致しない点もあつた。しかし何れもその目的は,原価計算制度が病院に導入されうるか否か,できるとすればその組織は如何にあるべきか,を結論づけることであつた。
 大臣は両者の報告を検討して,項目別会計組織を廃し,部門別単位原価計算を採ることに賛成し,1955年に病院原価計算制度企画作業班を編成して,実際的な部門別の単位原価計算制度を企画する仕事を課した。

研修所だより

著者: 石原

ページ範囲:P.157 - P.157

 今年も皆さんから,多数の年賀状を戴きました。その1枚1枚から,宇宙世紀第2年目に入つた,今年の新しい抱負等拝見しているうちに,何時の間にか昭和33年という呼称にもなれて,又平常の歩みが坦々と始まつているようです。真の進歩は,何も常に異常から生れるものとは限らず,寧ろそうした平常の歩みのうちにこそ,徐々にはぐくまれて行くものなのかも知れません。
 研修所も,数え年で10歳を迎えました。まだ敗戦の混乱のおさまりきらない昭和24年,国立東京第一病院の片隅に,勿々のうちに誕生した当時のことを思えば,10年の歳月は矢張りそれなりの前進を与えてくれたものと言えましよう。吉田主事以下研究スタツフ6名,佐藤事務官以下事務職員6名という同勢は,これでも発足当時に較べれば,人員の大した充足と言えます。然し,「病院管理」というテーマの広さ,複雑さ,難しさから言つて,それだけの人員ではどうにもならないことは余りにも明らかでありまして,其処にわれわれの尽きない悩みもあるわけです。

あとがき

ページ範囲:P.158 - P.158

 1月号は,いろいろの理由があつたとしても発刊が大変遅れてしまい,昨秋あれだけ努力した事が,またもとの黙阿みになつた事は甚だ残念です。それに引づられて今月号も月末近くになつてしまつた事は申訳ありません。3月号で何とか取戻したいと思います。
 今月号の巻頭には,昨年の学会で非常に興味を持たれた,神戸の金子先生の「病院における医師と看護婦の対人関係」の論文を載せることが出来ました。改めて活字として読んで頂くとお解りのようにどの病院でも,いや世界中の病院で,毎日同じように繰り返され,医師と看護婦の間をイライラさせている因果の行相が如実にひしひしと感じさせられます。誰もが気がついてい乍ら,とかく厭だが仕方がないと思いながら,その儘の流れを黙認しているこの問題は,矢張り何とか片付けなければならない問題で,而もこれは常にその空気を浄化して行く努力がなされねばならぬ病院内で最も因果な関係かと思います。特に医師と看護婦は,患者の生命を与る大きな精神的苦悩を持つているのですから,それが原因の一つでもあるのでしようが,それをそれなりに第三者--院長或は病院の責任者が,暖くほごしてやる努力が続けられねばならぬでしよう。

グラフ

病院の裏口

ページ範囲:P.121 - P.127

 病院にも明暗二境地が表裏の如くつき纏う.全快患者を送り出す悦びの派手さに較べて,裏口業務は縁の下の力持ちだけに陽の当らぬ地味な仕事だ.

病院長プロフイル・52

荘病院院長 莊 寛先生

ページ範囲:P.128 - P.128

 厚生省のあるひととの間に何かのことで,荘博士の話が出たとき,"あの方は,実に紳士だなア"と心の底から,敬服して居た。そのわけはいろいろあろう。
 甚だ不躾の云い分ではあるが,あれだけ,堂々たる容貌,風姿を備えた日本人と云うものも,そうざらにあるものでない。

私の病院の試み

入院事務組織

著者: 安田幸男

ページ範囲:P.129 - P.134

 病院事務作業の内入院事務の占める割合は相当量に達します。此等の業務を系統立て簡素化する事は業務のスピード化による患者へのサービス向上と共に業務費の節約となり更に診療費徴收の確実化の為にも重要な事であります。
 従来事務の記録作業の中には記録の為の記録としか思われない作業が可なりあります。一般的に云つて記録は完全であるに越した事はありませんが完全にする為に事務量を増大し間違や不正確な記録が多くなり却つて全部を不完全にして居る事が応々あります。又例えば1,000件に1件の必要性しかない様な事項を1,000件の書類全部に記載して居る様な事がありますが,其の様な場合には其の記載を省きその1件の事項は他の系統の記録から求める方がずつと労力,時間を節約出来る事になります。更に病院事務作業の内最も犯し易い非能率な点は住所,氏名,病名,入退院年月日等の重複記入であり甚だしい場合は10数回も同一の記載をしなければならぬ様な事務組織を持つて居る所もあります。例えば第1表の入院票,入院申込書,身元引受書,入院予約カード,患者カード等に其れが見られます。

座談会

入院分娩をあぐつて(2)

著者: 原素行 ,   後藤昭代 ,   吉田幸雄 ,   鈴木隆子 ,   竹谷アサヨ ,   鈴木八重子

ページ範囲:P.137 - P.146

精神性無痛分娩
 竹谷 精神予防性の無痛分娩で感じたのは,信頼した助産婦がいると違うということです。
 鈴木(隆) 竹谷さんみたいな老練な人だつたらいいけれども,竹谷さんがいないとダメになつちやうでしよう。

固定欄

診療,他

著者: ,  

ページ範囲:P.147 - P.156

癌センター
 前回は各種診療センターのあり方について種々疑問の点を披歴し,一応総合病院内に設置するセンターの総論の如きものを述べたわけであるが,確かにこの問題には未だ論議すべき多くの課題が存在するようである。
 今回は個々のセンターについて——先ず癌センターから述べてみよう。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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