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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻4号

1958年04月発行

雑誌目次

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入院患者カードと入院予約カード

著者: 今村栄一

ページ範囲:P.245 - P.249

 先に入院業務について論述した際に(病院14巻1号),「入院患者カード」の利用にも言及した。単に入院患者の氏名カードではなく,入院申込書や身元引受書など多目的の使用を考える方が便利であろうと,その内容事項を列記した。その後実際の様式について問合わせがあるので,若干の考察とともにその例示を試みようと思う。

病院給食管理覚え書—本稿は福井県主催病院給食講習会講義の概要である

著者: 原素行

ページ範囲:P.250 - P.260

 病院の業務が漸次分化分業をされて,夫々の専門職種が,これを担当するようになつて,著しく科学性を発揮し得る体系が出来たのは,学問の実際化に由るものである。然しながら,病院業務の目標は,1人1人の患者に集中される筈である以上,専門分化された夫々の分業部分が独立部門という名目で独走することは許さるべきことではない。即ち「分業」と「綜合」との二つの相が組み合わされて,はじめて病院の目的が達成されるのである。この組み合せ方が各部門のチームウオークの進め方である。近代の科学は,このように高度に分化して,その内容を高め,またそれが有機体のように綜合統制されて,実用効果を表わしている。筆者は,口癖のようにこのようなことを云い,これを病院管理の要諦と心得て,その組織化に力を入れた。
 病院給食業務も亦,この範疇を脱することは許され得ないが,更に病院給食が諸種の科学を識り込まれて,はじめて完全なる成立を見るものであるから,医師たる病院管理者の関心が,ここに集り易いのは当然なことであろう。本稿は,病院給食業務を重要なる診療補助業務としての立場を主眼として,その体系を整えるためのまとめの記述とした。敢て新規の提案や新機軸を出す意図はない。只現在未完成交響楽として好評ある病院給食を,科学の基盤にのせて,更に揺ぎなきものとするために,いくらかの盲点に触れて,その改善についての進言をするつもりである。

結核療養所の過去と將来

著者: 御園生圭輔

ページ範囲:P.275 - P.281

1.療養所の過去と現在
 明治23年(1890)に鶴崎平三郎氏により,我が国最初の療養所が須磨の浦に設立されてから早くも70年の年月が経過した。
 この間において,結核症の治療法に進歩がみられただけでなく,結核対策に対する考え方も,医療のあり方についての考え方も逐次変化していつた。このため療養所そのものの在り方も除々に変化せざるをえないようになつてきている。

円形病棟の得失—使用した病院の立場から—附円形看護婦宿舎

著者: 林秀雄

ページ範囲:P.283 - P.290

まえがき
 私共の八尾市立病院が武蔵野日赤病院の伝染病棟に次いで,同じく円形の伝染病棟を建築している頃,設計者坂本鹿名夫氏の「円形病院の得失」という論文が本誌15巻1号に発表された。半年おいて昨年の1月本誌16巻1号に伊藤誠氏他の「円形病院の得失について」という論文が掲載された。両者の論文を拝読して見ると,率直に申して,坂本氏は"得"の方を,伊藤氏等は"失"の方を強調されたのではないかという気もするし,ある処では同一の条件を一方は得とし,他方は失としている感がある。
 処で,当院の伝染病棟が業務を開始したのは昨年3月1日だが,時あたかも八尾市内に集団赤痢が発生しつつあり,3月21日には178名(内真性赤痢26名,保菌者152名)に達した。かかる非常事態だつたので,関係当局と打合せた上,その半数以上を定員を超えて円形病棟に収容することになつた。一番収容数の多かつた3月21日の状況は赤痢患者25名,同保菌者72名,ジフテリヤ7名,猩紅熱3名,流行性脳脊髄膜炎1名の計108名であつた。残りの保菌者は旧伝染病院に収容した。業務開始と同時にこの仕末になつたので,人員の不足,施設に対する不慣れ等から相当な混乱を来したが,一方では円形病棟の誠に貴重な使用経験を得たわけである。

第59回AMERICAN HOSPITAL ASSOCIATION年次大会に出席して

著者: 沼正三

ページ範囲:P.293 - P.298

いきさつ
 昨年の春兵庫県立尼崎病院においていよいよ待望の癌治療センターを設立する案が兵庫県当局と話し合いがつき,また,尼崎市においてもその重要性を認め充分の寄附をする申出があり,私はかねてからアイソトープ,コバルト60による癌治療施設に対しアメリカの新知識を得ることに関心をもつていた。そこで米国の癌治療センターを見学し本病院の新設に当り資料を求めるため渡米を計画していたが,たまたま米国病院協会が59回年次大会をアトランチツク市で開催するので日本代表として始めての出席をすることを決めた。
 私は来日されたことのある米国病院協会理事長Edwin L. Crosby博士に非公式な問合せをした。それは日本からの代表として出席できるものか,また出席した際どのような手続が必要か,申込書その他に就いて,例えばアトランチツク市のホテルの宿泊予約等であつた。これに対しAHA大会担当委員長とCrosby博士から丁寧な返信に接し文献を数多送つていただいた。そこで日本病院協会橋本寛敏会長や日本公立病院連盟会長一見赳夫会長等と相談の結果各理事会の承認を得て両団体の正式代表として始めてAHAの年次大会に出席することになつた次第である。私は橋本会長一見会長から正式代表としての公文書をいただきこの名誉ある代表になり数限りなき代表としての歓待をアトランチツク市で受けたことに対し両会長に心から感謝する次第である。

研修所だより

著者: 石原

ページ範囲:P.319 - P.319

 さくらの花だよりもそろそろ聞かれはじめた此の頃,研修所では,終る年度,来る年度の收束と準備とが静かに続けられております。おそらく,全国各病院も皆そうでしよう。但し,静かにというよりは一層の多忙のうちに--。御苦労,お察し致します。
 研修会は3月4日の長期研修会の終講をもつて,全スケジユールを終つたのですが,厚生省医事課主催の総婦長講習会が,3月10日から20日まで,10日間の会期で開かれました。国立,日赤等の全国的系統をもつた病院を除き,主として,看護学院を持つている病院を対象としたという話ですが,参加者は約50名,参加に洩れた希望者も大分あつたようで,総婦長に対するこの種の講習会の必要性と,それへの病院側の要望の大きいことを知りました。それで,研修所でも現在総婦長コースを1回持つておりますが,これではどうにもならないという厚生省金子参事官の強い希望もありますので,昭和33年度は,更に1回を増加することにしました。総婦長制度も今ではすつかり根を張つた感じですが,それだけに,総婦長の管理者としての素質と能力とが問題となつて来ることは当然で,その点必ずしも満足すべきものとは考えられない現状では,今後このコースの重要性は一層大きくなるものと考えております。

あとがき

ページ範囲:P.320 - P.320

 今年は暖冬異変といわれましたが,春になつて却つて寒さが続きおかしなことです。然し,本誌がお手許にとどく頃は,待望の新緑の好季節となるでしよう。
 偖,病院の春はいつくるのでしよう。健保報酬の引上げは,遂に4月が駄目,10月の実質引上げがどうなるかも今のところ,医界の情勢やら国会解散で確実な見通しが立ちません。昨年ベース・アツプをした病院は,軒並に赤字,そうでないところも従業員の待遇改善の見通したたず,争議の起きたところさえ出て来た状況で,今年こそ早急に引上げが解決されないと重大なことになります。

グラフ

病歴管理

ページ範囲:P.261 - P.271

 診療記録は医師によつて書かれた患者に関する記録である.その内容は診断,治療,経過その他を含む病人の歴史である.臨床医学が進歩すればする程,医療内容は複雑多岐を極めるからそれを細大洩らさず,正確に記録しなければ,今日の診療を把握できない.地域社会の住民は病気に罹つて同一病院に再三入院することがある.
 その際過去の病歴が既往症の状況を正確に詳細に告げることができる.従つて診療記録の厳密な整理と中央保管とが必要である.国法は,医師にその記載を命じ,病院にその保管の責任を負わせているが,科学は更に高度に診療記録の完備を要求している.

病院長プロフイル・54

国立広島療養所長藤井実氏

ページ範囲:P.272 - P.272

 国立広島療養所長藤非実博士と云えば中国,四国地方に於ける結核の一大権威であるばかりでなく,国立療養所関係に於いて,又結核病学会に於いて重きをなしている一人と云つて差し支えあるまい.
 先生は昭和14年国立広島療養所の開設に当つて新進気鋭の所長として赴任せられた.そして遂に今日迄一貫して結核の道を歩んで来られ,既に20年に近い年月が流れた.これは激しい情熱家である証拠とも云える.

通信

コロンビア大学の病院管理のコースについて

著者: 岩佐潔

ページ範囲:P.299 - P.300

 台風が本土を襲いつつあつた9月8日曾田公衆衛生院次長,守屋先生をはじめ病院管理研修所の皆様の見送りを受けて羽田空航を出発しました。途中飛行機の都合でハワイのワイキキの浜とサンフランシスコにそれぞれ一泊して9月9日夜ワシントン空航に着きました。12日にワシントンからニューヨークに移り16日には,コロンビア大学の公衆衛生管理医学学校(The school of Pub-lic Health and Administrative medicine)に登録を済ませました。2学期間即ち来年1月末までの約4カ月間の授業料が450ドル,その他諸施設使用料24ドル,学生健康保険25ドル日本円に換算して自分の財布から払うとしたらちよつと大変な額です。同じコロンビア大学の一部にティーチヤーズ・カレヂと云うのがありますが此所の看護教育の授業料が同じ期間で約250ドル(勿論とる単位数によつて違つてくるわけですが)ですから,グラジュエートのコースは幾分高い様です。
 18日には愈々開校式で医学部長Rappleye教授,本校主事Trusdell教授はじめ各教授が話をしました。

私の病院の試み

実施し易い病院資金管理の一方法

著者: 安田幸男

ページ範囲:P.301 - P.305

資金管理の必要性
 資金管理という言葉もその必要性も今更に新しく述べるまでもなく収益や費用の管理と共に一般企業においては積局的に実施されているのであります。然るに病院経理の管理に当つては従来ともすると収入と費用の管理のみが重視され経営循環の基本である資金の管理が軽視され勝でありました。経営成績向上の為には収入と費用が第一に着眼されるのは当然でありますがその収入も費用も結局に於いて資金の運用であり資金管理の必要性は些も変らないのであります。例えば損益計算は赤字であつても事業は或る期間は運転出来ますが資金の収支が赤字であれば一刻もその儘でも済まされません。殊に最近のように金融逼迫の時代には一層その重要性を増して来ましたし経営成績向上には資金運用法の如何も一役買つていることを考える時資金管理に対しては一層関心を持つ必要を感じます。一般企業に於いてはその重要性を痛感しながらも戦後経済条件が不安定であつた為,経営基礎が固まらず資金管理を効果的に企業に取り入れるのに非常に困難を伴つていましたが最近漸く一般化されるに到りました。然し病院経理に於いては他の企業に比し収支が割合安定しており本質的にも資金の大部分を固定させている地味で変動率の少ない事業であるに拘らず未だ資金管理に対する充分な関心がないのは理解に苦しむ所であります。

固定欄

診療,他

著者:

ページ範囲:P.307 - P.317

小児診療センター
 小児診療センターのあり方は,必ずしも他の診療センターと同一とは言えない。診療センターそのものが一つの試みであるから,未熟な部分が残されているためもあるが。
 癌センターといえば癌を扱うごとくに,小児診療センターは小児を扱うものであるという表現においては,類似している。しかし癌は同種の疾患であるに対し,「小児」は単一ではない。ここに小児診療センターに対する疑義が生じるのではなかろうか。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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