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雑誌目次

雑誌文献

病院17巻6号

1958年05月発行

雑誌目次

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イギリスとドイツの病院

著者: 吉武泰水

ページ範囲:P.405 - P.412

 昨秋,多くの方々の御支援によつて,かねて熱望していたジユネーヴ第一回国際病院建築ゼミナールに出席がかない,2カ月を欧洲で過して18の病院を見た。数から云えば決して少いとはいえないが,その間に学校その他の建築も見たいという欲張つた旅行だつたので,病院見学に充分の時間もとれず又見方も散漫で,いわゆる見聞記を書くことは甚しい偏見や浅見が飛出しそうでとても気が進まない。幸い,本誌の座談会とグラフで不充分乍ら紹介をしたので,ここでは確かな手持ち資料のあるものの中から2,3を選んでやや詳しく報告させて頂くことにした。

ヨーロツパの病院建築について

著者: 小川健比子

ページ範囲:P.415 - P.428

1.スエーデン
1)ストツクホルムには,The Central Ho-spital Planning Bureauがあつて,ここで全国行政区24州の病院建築に関する認可,指導及び基準プランの作成等,研究方面に迄,優れた活動を展開しているがかかる行政機関を,この統一も少く発展しつつあるわが国病院建築界にも,是非とも必要な気がしてならない。
2)スエーデンに,病院建築を専門とする事務所が独立したのは,僅か数年以前のことに過ぎないが,今や例えば,その代表的事務所のBirch Lindgren氏の様な優れた建築家が,スエーデンの病院発達に,大きな貢献をしている点に,注目したい。

ヨーロツパの病院の建築設備

著者: 桜井省吾

ページ範囲:P.431 - P.439

1.概説
 本稿で述べようとするヨーロツパの病院は主として,スイス,英,仏,独,スウエーデンおよびベルギーなどの北欧におけるものについてである。一般に最近の建築は,外観をできるだけ簡素にして,屋内の仕上げを入念に行う傾向にあるが,病院建築もその例に漏れない。ことに(1)音(ノイズおよびサウンドの問題),(2)色調および(3)感触という3つの条件を満足せしめて,使いよい,しかも建設費の低廉を計ることに留意しているようだ。同時に,建築設備を完備して,病院の運営を円滑に,かつ経常費の節減を工夫して,最良で経済的な病院を造ることに大きい関心が払われている。
 音の問題は,窓ガラスを二重張りとし,壁ならびに天井には吸音材料を取付け,廊下にゴム・タイル,階段に部厚なスポンヂ・ラバーを貼るなどして解決を計つている。色調は,各室毎にあるいは廊下などに行い,かつ室の色彩に適合する色合の器物を配するなど種々と工夫している。欧州の建築物の色彩は,一般にニユートラルのものが多いと云われているが,最近は原色の強い色も屡々用いられている。これは,アメリカ建築の影響の一つとみるべきであろうか。

第1回国際病院建築ゼミナールに出席して

著者: 西嶋徳太郎

ページ範囲:P.451 - P.457

 昨秋9月9日より10日間,掲題のゼミナールがジユネーブの州立病院の講堂を会場として開催された。此のゼミナールは,W.H.O.(World Hos-pital Organization)が後援し,I.H.F.(Int-ernational Hospital Federation)とI.U.A. (International Union of Architects)が協同主催して行われたもので,病院建築と云う一つのテーマの下に,世界の各国から集つた人達は総勢93名であつた。即ち此のゼミナールを指導し司会する6名のdirectorsと,医学部門から選抜された6名のExperts,建築学併びに病院関係技術部門のExperts 9名,そして世界の27カ国から之に参加したParticipantsが72名であつた。
 戦後各種の国際的会合が行われ,顕著な成果を挙げているが,此の病院建築のゼミナールも其1つのcaseであつて,其処には人種国藉を異にする利害関係は勿論,何等の政治的色彩もなく,人間の幸福を目標として日夜研鑽する人達の集いであつた。此の人達の概要を御紹介申し上げよう。

研修所だより

著者: 石原

ページ範囲:P.475 - P.475

 研修所の屋上から見ると,あちこちに美しい彩りを見せてひるがえつていた鯉のぼりも何時の間にか姿をひそめて,いまは木々の深い緑がそれに代つています。
 そうした暦と季節の進行にともなつて,研修所の第10年目の研修計画も歩みをはじめて,既に,4月18日から25日までの病院開設者を対象とする本年度第1回の研修会も終り,やがて5月29日からの事務長対象の第2回研修会がはじまろうとしています。

あとがき

ページ範囲:P.476 - P.476

 愈々初夏の候となりました。物総て活気を呈しています。病院内の患者も今一番すごしよい静かな病院生活を暮している事でしよう。福岡の病院学会は大盛会で,沢山の收獲があつたと確信します。会場といい,演題の内容といい,集会者の意欲といい,実に九州の学会は,画期的な成功でした。三宅会長,田代先生,赤星先生方の周到な御計画と御努力に対し,万腔の敬意と感謝を捧げます。この学会については例により8月号を学会特集号として御紹介致しますからお楽しみにして頂きます。

グラフ

ヨーロッパ病院建築

著者: 吉武泰水 ,   小川健比子

ページ範囲:P.441 - P.447

病院長プロフイル・55

九大附属病院長 三宅博氏

ページ範囲:P.448 - P.448

 日本病院学会が開催せられて早くも今年で第8回目に当る。今年始めて海を渡つて九州で開催せられるのであるが先生に学会長を引き受けて貰つた。最近先生は実に30年振りとも云うべき日本外科学会の福岡開催の学会長として無事勤められ見事な成果を収められた事は私共の記憶にまだ新しい事である。九大第一外科主任教授であり,その徳望と手腕を買われて附属病院長に推され,県病院協会のためにも多忙な日課をさいて会長として病院管理の問題に就いて熱心に豊富な経験により御指導頂いている。図書に埋つた教授室に先生を訪れる誰でもが,まつ正直な,いんぎんその侭の物腰の柔かな態度の先生には一驚することである。医学部の教授でも特に九大の外科と云えば,いかめしいと云う観念が通例であつたが,先生は温和,且つ話す度にほんとうに誠心誠意の人であるとの感が深まつて来る方である。医局員の数が多過ぎて名前も覚えられませんよと云う入局者の殺到した為の先生の嬉しい悲鳴も又宜なる哉である。医局員の数は九大随一。
 先生は徳島県の出身,佐高を経て九大医学部昭和2年卒業。第一外科の講師,助教授を経て昭和9年文部省から選ばれて外科学研究の為2年間のドイツ留学をされたが,朴訥な人柄だけにいろいろ野人振りを発揮されて面白いエピソードもある様である。昭和16年長崎医大教授,更に岡山医大教授に転ぜられ,この間教授として真しな研究的態度,高まいな人格で各地で三宅外科の名声を博された。

座談会

ヨーロツパの病院建築

著者: 守屋博 ,   小川健比子 ,   桜井省吾 ,   吉田幸雄 ,   吉武泰水

ページ範囲:P.459 - P.474

 吉田 どうも,お忙しいところを有難うございます。
 従来,日本でも,病院建築の問題は,先生方は勿論のこと,われわれも一緒になつて日本の病院建築を少しでもよくしていこうという努力が続けられてきたわけでありますが,従来,われわれが印象づけられているのは,主としてアメリカの病院であります。ヨーロツパの病院については比較的知識が少なかつたのでありますが,きよう,お集まりの先生方が,昨年,ヨーロツパをお廻りになりましたので,非常にいい機会でもございますし,また,従来「病院」の雑誌で病院建築に関する座談会を1回も取り上げでおりません。従つて,病院建築全般では,いろいろ問題があるので,できれば,総括的な病院建築という問題を取り上げる機会も将来は作らなければならないと思いますが,今回は「ヨーロツパの病院」というようなことを中心にいたしましてお話合いして頂いて読者の参考にして頂きたいと思います。

基本情報

病院

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1383

印刷版ISSN 0385-2377

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